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第2話 幽霊騒動3
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「んー、あったあった……ここがあの子が言ってた洞窟かな?」
「うわー、ここ明らかに“出ます”って感じじゃん……。もうヤダ、帰りたい……」
「ホノカ君情けないぞー。ここのどこが怖いの?」
ボクは全く怖くないよと言ってシュリは胸を反らす。
うん、もはや君が勇者で良いんじゃないかな……?
ホノカは一人でにそう呟き、ガックリと肩を落とした。
「さてさて、ではへっぽこ勇者君、中入りましょっ!」
「うるさい! どうせへっぽこですよ!」
シュリが言うと、ホノカは半ばやけくそのように洞窟の中に入っていた。その後をシュリも追う。
しばらく中をてくてく歩いて、ふとホノカは不思議なことに気がついた。
「……あれ? モンスターいないね」
「そう言われてみるとそうだね~。外にはたくさんいたのに」
もっとたくさんいるかと思ったとシュリはつまらなそうに言う。
確かに、いると思っていた場所にモンスターが一体も現れないというのも気味が悪い。
別に出てきて欲しいわけではないのだが、変だとホノカは首を捻った。
「罠……とか?」
「それはないんじゃないかな? ほら、ここ……たったさっきまでモンスターがいたみたいな跡があるよ」
「あ、本当だ。じゃあ、何でいないのかな?」
「……ん、ここのモンスターのこと?」
ふと、背後からシュリでもホノカでもない声が響く。
振り返ってみると、妙に色のない少年がふわふわと二人を見ていた。
「で、出たぁぁ!!」
「む……失礼な。人を見て悲鳴上げないでよ」
「そうだよー、ホノカ君は礼儀がなってないなぁ」
「ゆゆ、幽霊だぁっ!」
幽霊とかそういう類のものに敏感なホノカは少年が生きている人でないことにすぐ気がついた。
シュリが興味津々といった様子で少年を見つめる。
少年はシュリの自然に気がつくと恥ずかしそうに頬を赤らめた。
「そんな見ないで、恥ずかしい」
「君、本当に幽霊なの?」
「うん、そうだよ」
その言葉を聞いたホノカは更に青ざめた顔をして後ずさった。
そんなホノカを見て、少年は少しムッとしたように言った。
「僕が怖いの?」
「べ、別に怖くなんかっ……いや、嘘です怖いです許して!」
「ホノカ君はヘタレだからなぁ」
シュリはもはや憐れむようにそう言う。
ホノカの怖がりようを見た少年はとても残念そうに溜息を吐いた。
「このお守り、落ちてたから届けようと思ってたんだけど……必要ない?」
ホノカとシュリさんは少年の持つお守りを見て、揃ってあっと声を出した。
これはきっとあの子のお守りだ。
「凄く欲しいです!」
そう言いながらもホノカの足は動かない。
(幽霊とはいえど、この子は凄く人間味あるから、怖くない、怖くない……)
そう自分に言い聞かせて震える足をなんとか抑えこみ、ホノカは少年の前に立った。
立つのが精一杯だった。
「大切そうなお守りだったから、誰か来るんじゃないかなって待ってたの」
「へぇー、律儀だねぇ」
「ううん、そんなことないよ。急に出て驚かせちゃった僕も悪いし……それに、大切なものなくしたら悲しいのはわかるから」
少年は優しい微笑みを浮かべると、ホノカにお守りを手渡した。
「ちゃんと返せて良かった」
少年の呟きにホノカは恐怖を忘れて温かい感動を覚えた。
(なんだ、良いやつじゃん)
ホノカがまじまじと少年を見ていると、その視線に気づいた少年はまた恥ずかしそうに頬を赤らめた。
(こういう幽霊なら、怖くないなぁ)
ホノカは今度は自分から少年に近づくとにっこりと笑った。
「本当にありがとう。君、名前は何て言うの?」
「ユウ。君達は?」
「おれは……」
ーーぐうぅ……。
ホノカが自己紹介をしようと口を開いた時、静かな洞窟にお腹のなる音が響く。
思わずシュリとホノカは顔を見合わせた。
盛大なお腹の音の正体は、二人共のようだ。
ユウはクスリと笑うと、また柔らかい表情を顔に浮かべて二人の方を見た。
「ご飯、作ろうか?」
「ええっ! 流石にそれは悪い……」
ーーぐうぅ……。
お腹はどうしても正直だ。言ったことをすぐに否定してくれる。
強がることを諦めたホノカは、凄く申し訳なさそうな顔をして重たい口を開いた。
「…………お願いします」
「うわー、ここ明らかに“出ます”って感じじゃん……。もうヤダ、帰りたい……」
「ホノカ君情けないぞー。ここのどこが怖いの?」
ボクは全く怖くないよと言ってシュリは胸を反らす。
うん、もはや君が勇者で良いんじゃないかな……?
ホノカは一人でにそう呟き、ガックリと肩を落とした。
「さてさて、ではへっぽこ勇者君、中入りましょっ!」
「うるさい! どうせへっぽこですよ!」
シュリが言うと、ホノカは半ばやけくそのように洞窟の中に入っていた。その後をシュリも追う。
しばらく中をてくてく歩いて、ふとホノカは不思議なことに気がついた。
「……あれ? モンスターいないね」
「そう言われてみるとそうだね~。外にはたくさんいたのに」
もっとたくさんいるかと思ったとシュリはつまらなそうに言う。
確かに、いると思っていた場所にモンスターが一体も現れないというのも気味が悪い。
別に出てきて欲しいわけではないのだが、変だとホノカは首を捻った。
「罠……とか?」
「それはないんじゃないかな? ほら、ここ……たったさっきまでモンスターがいたみたいな跡があるよ」
「あ、本当だ。じゃあ、何でいないのかな?」
「……ん、ここのモンスターのこと?」
ふと、背後からシュリでもホノカでもない声が響く。
振り返ってみると、妙に色のない少年がふわふわと二人を見ていた。
「で、出たぁぁ!!」
「む……失礼な。人を見て悲鳴上げないでよ」
「そうだよー、ホノカ君は礼儀がなってないなぁ」
「ゆゆ、幽霊だぁっ!」
幽霊とかそういう類のものに敏感なホノカは少年が生きている人でないことにすぐ気がついた。
シュリが興味津々といった様子で少年を見つめる。
少年はシュリの自然に気がつくと恥ずかしそうに頬を赤らめた。
「そんな見ないで、恥ずかしい」
「君、本当に幽霊なの?」
「うん、そうだよ」
その言葉を聞いたホノカは更に青ざめた顔をして後ずさった。
そんなホノカを見て、少年は少しムッとしたように言った。
「僕が怖いの?」
「べ、別に怖くなんかっ……いや、嘘です怖いです許して!」
「ホノカ君はヘタレだからなぁ」
シュリはもはや憐れむようにそう言う。
ホノカの怖がりようを見た少年はとても残念そうに溜息を吐いた。
「このお守り、落ちてたから届けようと思ってたんだけど……必要ない?」
ホノカとシュリさんは少年の持つお守りを見て、揃ってあっと声を出した。
これはきっとあの子のお守りだ。
「凄く欲しいです!」
そう言いながらもホノカの足は動かない。
(幽霊とはいえど、この子は凄く人間味あるから、怖くない、怖くない……)
そう自分に言い聞かせて震える足をなんとか抑えこみ、ホノカは少年の前に立った。
立つのが精一杯だった。
「大切そうなお守りだったから、誰か来るんじゃないかなって待ってたの」
「へぇー、律儀だねぇ」
「ううん、そんなことないよ。急に出て驚かせちゃった僕も悪いし……それに、大切なものなくしたら悲しいのはわかるから」
少年は優しい微笑みを浮かべると、ホノカにお守りを手渡した。
「ちゃんと返せて良かった」
少年の呟きにホノカは恐怖を忘れて温かい感動を覚えた。
(なんだ、良いやつじゃん)
ホノカがまじまじと少年を見ていると、その視線に気づいた少年はまた恥ずかしそうに頬を赤らめた。
(こういう幽霊なら、怖くないなぁ)
ホノカは今度は自分から少年に近づくとにっこりと笑った。
「本当にありがとう。君、名前は何て言うの?」
「ユウ。君達は?」
「おれは……」
ーーぐうぅ……。
ホノカが自己紹介をしようと口を開いた時、静かな洞窟にお腹のなる音が響く。
思わずシュリとホノカは顔を見合わせた。
盛大なお腹の音の正体は、二人共のようだ。
ユウはクスリと笑うと、また柔らかい表情を顔に浮かべて二人の方を見た。
「ご飯、作ろうか?」
「ええっ! 流石にそれは悪い……」
ーーぐうぅ……。
お腹はどうしても正直だ。言ったことをすぐに否定してくれる。
強がることを諦めたホノカは、凄く申し訳なさそうな顔をして重たい口を開いた。
「…………お願いします」
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