死んだらこうなった

藤村託時

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第1章

第2話 共同生活始まる

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痩せたメガネの男がやってきて、俺とギャルの会話は止まる。

「アタシはイェクジェネ、アンタたちの名前教えてよ」

イェクジェネさんが話を戻してくれたので、自己紹介をする。

「俺は木六本人(ぎろくほんと)、日本人です」
「ぼっ、僕はベータと言います……ホワイトで生まれました……」
「なんか、"ぎろくほんと"って長いからギロっちね。アタシのことはイェクでいいよ」

イェクとベータさん、2人とも出身地が聞いたことの無い地名だ。
死ぬ前の世界がそれぞれ違うのか実は宇宙人なのかは分からないが、地球での情報は全て伝わらないというわけか。
何故会話ができているのかは不思議だ、便利なこんにゃくを食べたわけでもないのに。

「っていうか、共同生活ってどんくらいここいるんだろ~、っていうか初対面の男と共同生活始まるとかちょいキツめだし!」

確かに俺も修学旅行以外で何日も同じ部屋で過ごすなんて経験したことがない。
修学旅行はクラスの友達と一緒だから気まずさはなかったが、この初対面同士で異性と生活というのは中々ハードだ。

「あっ、あのここに送り出される時に初めにえっ、映像を見るようにと言われました」
「なんそれ、聞いてねぇし」
「俺も死んだ後のこと考えろとしか言われてないな」
「それってどうやって見るわけ?さっきも突然ガイド君出てきたんだけど、謎技術じゃね?」
「えっ、映像を見る時は"マニュアルスタート"と言えば良いと……」

ベータさんがそう言った後、映像が始まった。

「死にましておめでとう!みんなで良き死生を送ろう!」

白い服を着た女の人が映像に現れ、聞きなれない言葉をかけてきた。
女の人の頭には金色の輪っか、背中にはピンク色の翼が生えている。
おそらく女神的な存在なのだろう。

「生きていれば、誰でも死ぬ時はあります!あんまり気にしちゃダメですよ!今からみんなにこれからの生活について説明していきますね!」

ようやくちゃんとした説明が聞けるのか。
七三メガネはほとんど何も教えてくれなかったからな。

「まず、あなた達はもう死んでいるのでその体は生きている時の身体ではありません。魂をこちらが用意した仮体(かたい)に入れて動かしている状態なのです。なので食事・睡眠も必要ありませんし生理現象も起きません。えっちなこともできませんよっ!」
「ご飯食べれないの?マジ?」
「寝れないのはつらいな……」

食事と睡眠は生きるための行為ではあるが、娯楽としての側面も持っている。
それができないというのはかなり精神的にきつい。

「あなた達がこれから行うことは死んだ自分たちの今後を考えることです。他の人と話し合いをすることで今後の選択が変わるかもしれません。」
「ただ話し合いをしろと言われてもなぁ……」
「っていうか別に話すことなくね?」

俺とイェクは話し合いについて消極的になっていた。
まだ死んだばっかりで気持ちが落ち着いていないというのもあり、展開についていけていない所もある。

「話し合いをしろと言われても最初は難しいと思うので、お題を定期的に出しましょう。初回のお題は”天国と地獄”についてです。しばらくしたら今度は私が直接次のお題を伝えますので、楽しみにしててくださいね!」
「いや、別に何も楽しくないっしょ……ねぇギロっち!」
「……」

正直美人な女神と会えるのは楽しみだ。
お題に関しては興味はない。
イェクみたいなギャルよりは清楚な女神様の方がタイプなのだ。

「映像終わったんだけど。これで終わりなのベータっち?」
「おっ、おそらくは……」
「とりあえず話し合いをするしかなさそうだな」
「チョーダルいんだけど……」
「まぁまずは天国と地獄について調べるか」

俺はいつものようにスマホでインターネットの知識を借りようとしたが、そこにスマホはなかった。
当たり前だ、死んでるのだからスマホは無い。インターネットもない。

……インターネットがない?

突然、自分が今置かれている状況に絶望した……

俺は死ぬまではずっとスマホを持ち生活していた。
漫画、ゲーム、動画、SNS……スマホには全てが詰まっていた。
そのスマホがないということは全てを無くしてしまったのだ。

俺はようやく死の恐ろしさがわかったのだった……
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