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#3 真実
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着ぐるみを着て女怪人ビークィーンを演じていた彼女は堂々として、大きく見えていたが、海を見て昔のことを思い出した彼女は俺がよく知るさっちんに戻って小さく見えた。
彼女の話ではあと少しこの辺りでロケをするので、俺が今いる小さな町で滞在することを知った。
そして彼女はスタッフに今日は戻らない事も伝えてあるということも。
俺は会社に連絡し、体調が悪くなったで早退させてもらうことになった。
彼女がいろいろ思い出し泣いていたようだったので、車での移動中ずっと音楽を流していた。
家は社宅で田舎だけあり、2DKの広さの部屋を与えてもらっている。
彼女を玄関に入れて少し待ってもらう。
仕事にかまけて部屋は散らかり放題だったので、急いで片付ける。
その間に彼女は太ももまであるブーツを脱いでおくといっていた。
部屋がある程度片付いたところで、リビング並みの広さのあるダイニングに入ってもらう。
女怪人ビークィーンはブーツを脱いでも脚は同じ黄色と黒の縞模様になっていた。
ベンチコートを脱いだビークィーンはかなり手の込んだ造形物で、今まではさっちんのことが気になってしっかりとは見ていなかった。
ビークィーンの周りを一周してマジマジと眺めてみる。
「何?ジロジロ見ないでよ」
会話だけならただの男女の会話のようだが、絵的には部屋の中に女怪人がいてそれを男が見ている。
「さっちん、触ってもいい?」
彼女は恥ずかしそうに下を向いて「うん」と答える。
複雑な模様の入った体を触ってみる。
凸凹していて硬いところと軟らかいところがある。
「凄いなぁ」思わず独り言。
「ここは?」と言いながら胸を触ってみる。
柔らかくない、アクション用にしっかりと作られている。
正面に回り顔を眺めて質問する。
「これってどこから見てるの?」
彼女は長く尖った爪で、この辺りと教えてくれた。
そこは複眼になっていて黒地に黄色の網目になっている。
「この黒いところ?」
「そう、でも外からは分からないよ」と。
今度は背後に回る。
「どうやって脱ぐの?」
「えー、恥ずかしいから脱ぎたくない」と彼女。
「暑いだろ、ファスナー下ろしたら浴室に行けばいいよ」
「うん」彼女は小さく返事をして頷いた。
彼女に説明を受けながらファスナーを探る。
背中にある大きな羽を外すと首から腰にかけて縦の線が現れた。
それは重なり合うようにマジックテープでくっついており、その奥にファスナーかある。
普段見ることのないような大きなファスナーを開けていく。
ファスナーの奥は暗くて彼女の体は見えない。
ジッとしている彼女を驚かせようと、中へと手を突っ込んだ。
しかし、彼女の体はそこには無かった。
俺は驚き後ずさりをした。
「ドカッ」音と共に体に衝撃が走る。
辺りを見回すとそこは自分の部屋であり、ソファとテーブルの間に落ちていた。
「またか」起き上がりソファへ座りなおす。
目に涙が溢れてくる。
彼女は初めての仕事で、戦闘員役から撮影の諸事情により女怪人を急遽任される事になった。
しかし、不運な事故で亡くなってしまった。
それが2年前。
彼女が嬉しそうに自撮りし、送ってきた画像が女怪人ビークィーンだった。
だから、よくこんな夢を見る。
彼女への思いがずっと断ち切れずに。
おしまい
彼女の話ではあと少しこの辺りでロケをするので、俺が今いる小さな町で滞在することを知った。
そして彼女はスタッフに今日は戻らない事も伝えてあるということも。
俺は会社に連絡し、体調が悪くなったで早退させてもらうことになった。
彼女がいろいろ思い出し泣いていたようだったので、車での移動中ずっと音楽を流していた。
家は社宅で田舎だけあり、2DKの広さの部屋を与えてもらっている。
彼女を玄関に入れて少し待ってもらう。
仕事にかまけて部屋は散らかり放題だったので、急いで片付ける。
その間に彼女は太ももまであるブーツを脱いでおくといっていた。
部屋がある程度片付いたところで、リビング並みの広さのあるダイニングに入ってもらう。
女怪人ビークィーンはブーツを脱いでも脚は同じ黄色と黒の縞模様になっていた。
ベンチコートを脱いだビークィーンはかなり手の込んだ造形物で、今まではさっちんのことが気になってしっかりとは見ていなかった。
ビークィーンの周りを一周してマジマジと眺めてみる。
「何?ジロジロ見ないでよ」
会話だけならただの男女の会話のようだが、絵的には部屋の中に女怪人がいてそれを男が見ている。
「さっちん、触ってもいい?」
彼女は恥ずかしそうに下を向いて「うん」と答える。
複雑な模様の入った体を触ってみる。
凸凹していて硬いところと軟らかいところがある。
「凄いなぁ」思わず独り言。
「ここは?」と言いながら胸を触ってみる。
柔らかくない、アクション用にしっかりと作られている。
正面に回り顔を眺めて質問する。
「これってどこから見てるの?」
彼女は長く尖った爪で、この辺りと教えてくれた。
そこは複眼になっていて黒地に黄色の網目になっている。
「この黒いところ?」
「そう、でも外からは分からないよ」と。
今度は背後に回る。
「どうやって脱ぐの?」
「えー、恥ずかしいから脱ぎたくない」と彼女。
「暑いだろ、ファスナー下ろしたら浴室に行けばいいよ」
「うん」彼女は小さく返事をして頷いた。
彼女に説明を受けながらファスナーを探る。
背中にある大きな羽を外すと首から腰にかけて縦の線が現れた。
それは重なり合うようにマジックテープでくっついており、その奥にファスナーかある。
普段見ることのないような大きなファスナーを開けていく。
ファスナーの奥は暗くて彼女の体は見えない。
ジッとしている彼女を驚かせようと、中へと手を突っ込んだ。
しかし、彼女の体はそこには無かった。
俺は驚き後ずさりをした。
「ドカッ」音と共に体に衝撃が走る。
辺りを見回すとそこは自分の部屋であり、ソファとテーブルの間に落ちていた。
「またか」起き上がりソファへ座りなおす。
目に涙が溢れてくる。
彼女は初めての仕事で、戦闘員役から撮影の諸事情により女怪人を急遽任される事になった。
しかし、不運な事故で亡くなってしまった。
それが2年前。
彼女が嬉しそうに自撮りし、送ってきた画像が女怪人ビークィーンだった。
だから、よくこんな夢を見る。
彼女への思いがずっと断ち切れずに。
おしまい
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