巨大昆虫観察

ごむらば

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第1章 巨大昆虫観察

#4 中の人

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巨大昆虫観察の本編1話の卵から幼虫が産まれてくるシーンについて、香織が語ってくれた。
_______
私は黒い全身タイツに着替えて上からベンチコートを羽織りスタジオに入った、季節は冬。 
そのまま着ぐるみには入らずに簡単な動きの確認をする。 
そして、いよいよ緑色をしたイモムシの着ぐるみへ。 
表面は光沢があり、胴体の下の部分には拳大ほどの脚が複数付いている。 
頭部分は躰とは違い硬い材質でできている。 
頭部と躰部分の隙間から手を入れるとファスナーがあり胴体部に沿ってファスナーを開けるとイモムシの頭がもげたようにうな垂れる。 
その頭のもげた躰に足から着ぐるみに入っていく。 
中はクッションが詰まったようになっていて、柔らかく温かかった。
複数あった脚のうち4つに手足を入れる。 
入る時も出る時もなかなか苦労する、スタッフに手伝ってもらってしか着ることができないので、一度着ぐるみに入ると一人で脱ぐことはできなくなる。
そしてイモムシなので当然立ち上がることもできなくなる。
できることといえば、胴体下に付いている短すぎる脚を動かして少しずつ前に進むくらいしかできない。 
初めの卵から産まれるシーンでは、幼虫が粘液とともに出てくる。 
そのため、イモムシの頭を被る前に卵の中へ体を押し込められてから、卵内を緑色のローションで満たされる。
呼吸用のチューブ(緑色に着色したもの)を 
イモムシの頭を通して私の口へ。 
しっかり呼吸できることを確認してから、イモムシの頭を装着してもらう。
そして、卵にフタをして大きな卵にしか 
見えないようにする。
卵に事前に開けられた2つの穴、穴の一つは呼吸用のチューブを通す穴、そしてもう1つは緑色のローションを追加で卵内に注入し、かつ産まれる際に卵を内側からいかにも幼虫が卵を割って出てくる演出をするための棒を入れる穴。
着ぐるみに入り、さらに卵に閉じ込められた私には、ローションが注入されているかどうかすら分からなかった。 
卵はイモムシが入ると、ほとんど身動きが取れなくなる大きさだったので卵が割れると大量の粘液とともにすぐに外へ飛び出した。 
卵の中は少し窮屈ではあったが苦しくてたまらないということはなかった。
ただ、このシーン実はかなり時間がかかっていた、というのも卵がなかなか割れずにスタッフが監督から怒られている声がずっと聞こえていたから。
だから、卵から産まれて粘液の上でうねうねと動いてカットがかかった時、怒られていたスタッフが心配してすぐに私の元に駆け寄りすぐにイモムシの頭を外してくれた。 
幼虫イモムシの撮影は1週間ほど続いた。 
イモムシは這って動くので、腹の部分が破れてこないか心配したが着ぐるみは念のため2着用意されていた。 
子ども達との撮影が多く着ぐるみを着たまま待機していたのだが、寝てしまっていることもあった。
イモムシの頭を被ったままなので誰にも眠ってしまっていることには気付かれなかった。 
時には眠ったまま撮影に入り、子ども達がイモムシの上に乗ってきたのにビックリして目が覚め、振り落としてしまい泣かせてしまったこともあった。 
イモムシは自由に動けなく不便ではあったが中はふかふかで、今思うと他の着ぐるみと比べて快適だったように思う。 
旦那には内緒だが、予備の着ぐるみはほとんど使っておらず、急遽代役でがんばってくれた記念にと頂いて屋根裏の収納にしまってある。 
パーティなどがあれば、どれも精巧にできているので使う機会があるかも知れない思いもらったのだが、 そんな機会は全くなく、かさばるので捨てようかどうか迷っていた。
しかし、旦那が着ぐるみを着たら喜んでくれそうなので、このまま保管しておくことに決めた。 
そして、もうすぐ来る旦那の誕生日にはサプライズで 着ぐるみを着て祝ってあげようと思っている。
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