2 / 29
第1章 巨大昆虫観察
#2 鑑賞
しおりを挟む
香織とは長い付き合いで俺の性格をよく把握しており、嘘などついてもすぐに見抜かれてしまう。
だから、番組について質問されても下手な嘘もつけずに着ぐるみを操演した女性が気になり、彼女の顔を見てみたかったと正直に打ち明けた。
香織は「あなたって好きそうだものね、こういうのと」と言って、そのまま一緒にDVDを鑑賞する。
突然なにか聞かれるかもしれないと内心ドキドキしながら、妻の様子を警戒しつつDVDを見ていた。
見ていてつい、「この着ぐるみに女性が入るのってきつくないのかなぁ」
とあまり黙って見ているのもどうかと思い振ってみた。
すると、「暑くて大変なんじゃない」とそっけない返事。
しばらく、二人で見ていたのだが、妻は急に立ち上がり部屋を出て行ってしまった。
テレビ画面では、幼虫のイモムシが躰をくねらせながら、子ども達の後ろをついて行くシーンが映し出されていた。
次の日、妻は「どの着ぐるみが好きだったの?」と聞いてきた。
どれも印象に残っていたが、動きに女性らしさがある成虫の2つ目と答えてハッとした。
妻の香織も番組をよく知っていたのだ。
答えを聞いて、ふうーんといった感じで笑みを浮かべている。
そのあと、また2人で巨大昆虫観察を鑑賞した。
幼虫が糸を出して繭を作りサナギになる。
子ども達は中を見たくてたまらず、ある日繭を破って中を覗く。
サナギは全体的に光沢があり、くすんだオレンジ色をしている。
人工物のようにも見えるサナギを子ども達は
好奇心から繭をやぶってサナギを外に出してしまう。
外に出されたサナギを子ども達が触ると、その度にサナギはヒクヒクと動いている。
サナギはしばらくすると皮を剥いで成虫が出てくる。
実際の昆虫ではよくある光景だが、これは成虫の着ぐるみを着せられた女性が、さらにサナギの着ぐるみも着せられて出てこなければならない。
これはとんでもなくキツイだろうと思った。
そんな状況でもがんばっている彼女のこと
を考えていると、変に興奮してきてしまう。
放送されたシーンはほんの1分程度だが、実際の撮影では子ども達もいて、すんなり一発でOKはでなかったと思うと彼女はすごいと思った。
「あのシーンって、相当苦しいんじゃないかなぁ」とテレビ画面を見ながら妻に話しかけたところ、耳を疑うような返事が返ってきた。
「暑いし、苦しかったよ」と。
だから、番組について質問されても下手な嘘もつけずに着ぐるみを操演した女性が気になり、彼女の顔を見てみたかったと正直に打ち明けた。
香織は「あなたって好きそうだものね、こういうのと」と言って、そのまま一緒にDVDを鑑賞する。
突然なにか聞かれるかもしれないと内心ドキドキしながら、妻の様子を警戒しつつDVDを見ていた。
見ていてつい、「この着ぐるみに女性が入るのってきつくないのかなぁ」
とあまり黙って見ているのもどうかと思い振ってみた。
すると、「暑くて大変なんじゃない」とそっけない返事。
しばらく、二人で見ていたのだが、妻は急に立ち上がり部屋を出て行ってしまった。
テレビ画面では、幼虫のイモムシが躰をくねらせながら、子ども達の後ろをついて行くシーンが映し出されていた。
次の日、妻は「どの着ぐるみが好きだったの?」と聞いてきた。
どれも印象に残っていたが、動きに女性らしさがある成虫の2つ目と答えてハッとした。
妻の香織も番組をよく知っていたのだ。
答えを聞いて、ふうーんといった感じで笑みを浮かべている。
そのあと、また2人で巨大昆虫観察を鑑賞した。
幼虫が糸を出して繭を作りサナギになる。
子ども達は中を見たくてたまらず、ある日繭を破って中を覗く。
サナギは全体的に光沢があり、くすんだオレンジ色をしている。
人工物のようにも見えるサナギを子ども達は
好奇心から繭をやぶってサナギを外に出してしまう。
外に出されたサナギを子ども達が触ると、その度にサナギはヒクヒクと動いている。
サナギはしばらくすると皮を剥いで成虫が出てくる。
実際の昆虫ではよくある光景だが、これは成虫の着ぐるみを着せられた女性が、さらにサナギの着ぐるみも着せられて出てこなければならない。
これはとんでもなくキツイだろうと思った。
そんな状況でもがんばっている彼女のこと
を考えていると、変に興奮してきてしまう。
放送されたシーンはほんの1分程度だが、実際の撮影では子ども達もいて、すんなり一発でOKはでなかったと思うと彼女はすごいと思った。
「あのシーンって、相当苦しいんじゃないかなぁ」とテレビ画面を見ながら妻に話しかけたところ、耳を疑うような返事が返ってきた。
「暑いし、苦しかったよ」と。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説




【フリー台本】一人向け(ヤンデレもあるよ)
しゃどやま
恋愛
一人で読み上げることを想定した台本集です。五分以下のものが大半になっております。シチュエーションボイス/シチュボとして、声劇や朗読にお使いください。
別名義しゃってんで投稿していた声劇アプリ(ボイコネ!)が終了したので、お気に入りの台本や未発表台本を投稿させていただきます。どこかに「作・しゃどやま」と記載の上、個人・商用、収益化、ご自由にお使いください。朗読、声劇、動画などにご利用して頂いた場合は感想などからURLを教えていただければ嬉しいのでこっそり見に行きます。※転載(本文をコピーして貼ること)はご遠慮ください。
ゼンタイリスト! 全身タイツなひとびと
ジャン・幸田
ライト文芸
ある日、繁華街に影人間に遭遇した!
それに興味を持った好奇心旺盛な大学生・誠弥が出会ったのはゼンタイ好きの連中だった。
それを興味本位と学術的な興味で追っかけた彼は驚異の世界に遭遇する!
なんとかして彼ら彼女らの心情を理解しようとして、振り回される事になった誠弥は文章を纏められることができるのだろうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる