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24 結末のその先(最終話)
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今、私は再び噂の渦中の人物となり、今度は「自分を犠牲にして、公爵家嫡男を献身的に支えた令嬢」と言われているらしい。
「お金に目が眩んで協力した」とか言われてもおかしくないのだが、誰かが悪い噂にならないように情報操作をしているのだろう。
それがソフィー様なのかリチャード様なのか、それともスタンリー公爵家なのかは私には分からないけれど。
それにしても・・・・・・
運命の恋を掴んだ「幸運な令嬢」
婚約者を取られた「哀れな令嬢」
男性二人を手玉に取る「魔性の令嬢」
そして、最後が「献身的な令嬢」
どれも本物の私の姿とはかけ離れている。
別人の話としか思えない。
毎回思うが、噂話とは当てにならない物だ。
スタンリー公爵家は、サミュエル様の新しい婚約者探しに苦労しているらしい。
情報操作のお陰でそれほど酷い噂にはなっていないが、私との婚約解消だけじゃ無く、夜会での聖女様との騒動も目撃されている為「結婚相手にはちょっと・・・」と嫌厭されているのだ。
可哀想だとは思うのだが、ソフィー様が言っていた通り、彼の選択の結果なのだから、必要以上に私が責任を感じる事は無いのだと考えを改めた。
「まさか君達2人が恋人同士じゃなかったなんて・・・」
湯気と共に上品な香りを立てる紅茶を前にして、リチャード様は深いため息を吐いた。
今日は、念願の〝両想いになって初めてのデート〟と言う奴だ。
・・・と、言ってもカフェでお茶をしているだけなのだが。
私の悪い噂が払拭された今、多少は一緒に外出しやすくなった。
婚約者になったわけではないので、頻繁に会えるわけではないけれど、これまでに比べたら充分である。
「騙していてごめんなさい」
「いや、君は悪くない。スタンリー公爵家に嘘を強要されていたんだから。
あの時の話も、この件に関連しているの?」
「あの時とは?」
「ほら、夜会でサミュエルと再会した時の・・・」
その時の事を思い出したのか、リチャード様の顔色が少し翳り、ちょっと不機嫌そうに目を細めた。
「ああ!そうです。
あの時は、一生治らないかもしれないと言われていた、サミュエル様の魔力の器が修復出来たって聞きました。
だから、再会を喜んだ訳ではなく、病が完治した事が嬉しかっただけなのです」
「君は、恋人のフリをしている頃、サミュエルの事を好きになったりとかは、なかったの?」
「いいえ。全く。
ああ、友人のような好意は持っていましたよ」
「そうか。
実は、まだサミュエルに気持ちが残っているんじゃないかと思っていたから、違うと分かって安心した」
「私の気持ちは、もうお伝えしてあるはずでしょう?」
まだ疑われていたとは。
軽く睨んだ私を見ながら、リチャード様は幸せそうに笑った。
「ところで、今日は嬉しい知らせがあるんだよ」
「何ですか?」
「僕たちの婚約が正式に決まりそうだ」
「・・・!ウェイクリング公爵様の許可が降りたのですか?」
「ああ。今、ウェイクリング側の最終調整をしているから、近日中に正式に打診が行く」
ウェイクリング公爵は、初めは強硬に私達の婚約に反対していたそうなのだが、リチャード様が根気強く交渉した結果、彼がいくつかの課題をクリアしたら前向きに検討して貰えるとの約束を取り付けた。
そのせいで此処の所、公爵領の諸問題を解決する為に奔走していたのだという。
公爵は、醜聞持ちの令嬢を嫁に迎えるのはマイナスだが、好きな女を娶らせる事で、彼のモチベーションが今迄以上に上がるのであれば、それも悪く無いと考えたようだ。
与えた課題はリチャード様の本気度を試す為の物。
だが、課題をクリアした時点で私の噂が酷くなっている可能性や、素行調査の結果で噂以外の問題が出てくる可能性を考慮すると、『認める』と確約する事は出来なかった。
そして、私の名誉が回復した事が追い風になった。
真実が公表された事で、社交界での私の評価は鰻登りなのだ。
真面目。我慢強い。信頼出来る。口が固い。
そんな評価が耳に入り、公爵の態度も軟化した。
リチャード様が親族を説得して回った事も大きかったようで、ウェイクリング公爵のお姉様に当たる方が、味方になってくださった事が、最後の一押しになったそうだ。
いつかお会い出来たら、お礼がしたい。
「本当に結婚出来るかもしれないのですね。
なんだか夢みたいです」
噛み締める様に呟くと、一瞬、目を丸くしたリチャード様が、歓びに満ちた表情になる。
テーブルの上に置かれた私の手を取り、そっと指を絡ませた。
「夢だったら困るな。
やっと触れられる立場になったのに。
・・・学生時代、こうして君の手に触れるサミュエルが、いつも羨ましかった」
「・・・・・・」
拗ねた様な発言にまで、ときめいてしまうのだから、私もそうとう重症なのだろう。
「君と早く結婚したいと思っていたけど、恋人の期間を楽しむのも良いね。
学生時代に出来なかった事を取り戻したい」
甘さを多分に含んだ眼差しを向けられる事には、なかなか慣れない。
「これから沢山、二人で過ごす時間がありますよ」
世間で噂になった私の恋物語は、聖女の出現で悲劇的な結末を迎えたと言われていた。
でも、その先にも私の人生は続いていて、新しい物語が既に始まっている。
「・・・・・・メリッサ。
俺を選んでくれてありがとう。
愛しているよ。
必ず、幸せにする」
その瞳にいつまでも私だけが映る事を確信して、思わず破顔した。
「もう充分幸せです」
【終】
「お金に目が眩んで協力した」とか言われてもおかしくないのだが、誰かが悪い噂にならないように情報操作をしているのだろう。
それがソフィー様なのかリチャード様なのか、それともスタンリー公爵家なのかは私には分からないけれど。
それにしても・・・・・・
運命の恋を掴んだ「幸運な令嬢」
婚約者を取られた「哀れな令嬢」
男性二人を手玉に取る「魔性の令嬢」
そして、最後が「献身的な令嬢」
どれも本物の私の姿とはかけ離れている。
別人の話としか思えない。
毎回思うが、噂話とは当てにならない物だ。
スタンリー公爵家は、サミュエル様の新しい婚約者探しに苦労しているらしい。
情報操作のお陰でそれほど酷い噂にはなっていないが、私との婚約解消だけじゃ無く、夜会での聖女様との騒動も目撃されている為「結婚相手にはちょっと・・・」と嫌厭されているのだ。
可哀想だとは思うのだが、ソフィー様が言っていた通り、彼の選択の結果なのだから、必要以上に私が責任を感じる事は無いのだと考えを改めた。
「まさか君達2人が恋人同士じゃなかったなんて・・・」
湯気と共に上品な香りを立てる紅茶を前にして、リチャード様は深いため息を吐いた。
今日は、念願の〝両想いになって初めてのデート〟と言う奴だ。
・・・と、言ってもカフェでお茶をしているだけなのだが。
私の悪い噂が払拭された今、多少は一緒に外出しやすくなった。
婚約者になったわけではないので、頻繁に会えるわけではないけれど、これまでに比べたら充分である。
「騙していてごめんなさい」
「いや、君は悪くない。スタンリー公爵家に嘘を強要されていたんだから。
あの時の話も、この件に関連しているの?」
「あの時とは?」
「ほら、夜会でサミュエルと再会した時の・・・」
その時の事を思い出したのか、リチャード様の顔色が少し翳り、ちょっと不機嫌そうに目を細めた。
「ああ!そうです。
あの時は、一生治らないかもしれないと言われていた、サミュエル様の魔力の器が修復出来たって聞きました。
だから、再会を喜んだ訳ではなく、病が完治した事が嬉しかっただけなのです」
「君は、恋人のフリをしている頃、サミュエルの事を好きになったりとかは、なかったの?」
「いいえ。全く。
ああ、友人のような好意は持っていましたよ」
「そうか。
実は、まだサミュエルに気持ちが残っているんじゃないかと思っていたから、違うと分かって安心した」
「私の気持ちは、もうお伝えしてあるはずでしょう?」
まだ疑われていたとは。
軽く睨んだ私を見ながら、リチャード様は幸せそうに笑った。
「ところで、今日は嬉しい知らせがあるんだよ」
「何ですか?」
「僕たちの婚約が正式に決まりそうだ」
「・・・!ウェイクリング公爵様の許可が降りたのですか?」
「ああ。今、ウェイクリング側の最終調整をしているから、近日中に正式に打診が行く」
ウェイクリング公爵は、初めは強硬に私達の婚約に反対していたそうなのだが、リチャード様が根気強く交渉した結果、彼がいくつかの課題をクリアしたら前向きに検討して貰えるとの約束を取り付けた。
そのせいで此処の所、公爵領の諸問題を解決する為に奔走していたのだという。
公爵は、醜聞持ちの令嬢を嫁に迎えるのはマイナスだが、好きな女を娶らせる事で、彼のモチベーションが今迄以上に上がるのであれば、それも悪く無いと考えたようだ。
与えた課題はリチャード様の本気度を試す為の物。
だが、課題をクリアした時点で私の噂が酷くなっている可能性や、素行調査の結果で噂以外の問題が出てくる可能性を考慮すると、『認める』と確約する事は出来なかった。
そして、私の名誉が回復した事が追い風になった。
真実が公表された事で、社交界での私の評価は鰻登りなのだ。
真面目。我慢強い。信頼出来る。口が固い。
そんな評価が耳に入り、公爵の態度も軟化した。
リチャード様が親族を説得して回った事も大きかったようで、ウェイクリング公爵のお姉様に当たる方が、味方になってくださった事が、最後の一押しになったそうだ。
いつかお会い出来たら、お礼がしたい。
「本当に結婚出来るかもしれないのですね。
なんだか夢みたいです」
噛み締める様に呟くと、一瞬、目を丸くしたリチャード様が、歓びに満ちた表情になる。
テーブルの上に置かれた私の手を取り、そっと指を絡ませた。
「夢だったら困るな。
やっと触れられる立場になったのに。
・・・学生時代、こうして君の手に触れるサミュエルが、いつも羨ましかった」
「・・・・・・」
拗ねた様な発言にまで、ときめいてしまうのだから、私もそうとう重症なのだろう。
「君と早く結婚したいと思っていたけど、恋人の期間を楽しむのも良いね。
学生時代に出来なかった事を取り戻したい」
甘さを多分に含んだ眼差しを向けられる事には、なかなか慣れない。
「これから沢山、二人で過ごす時間がありますよ」
世間で噂になった私の恋物語は、聖女の出現で悲劇的な結末を迎えたと言われていた。
でも、その先にも私の人生は続いていて、新しい物語が既に始まっている。
「・・・・・・メリッサ。
俺を選んでくれてありがとう。
愛しているよ。
必ず、幸せにする」
その瞳にいつまでも私だけが映る事を確信して、思わず破顔した。
「もう充分幸せです」
【終】
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リチャードとメリッサが結ばれて良かったぁ😭
そして親友もできて、その親友は高スペックで色々助けてくれて😭
大好きな作品になりました👏👏
素敵な感想ありがとうございます✨✨
楽しんで読んで頂けたみたいで、安心しました!!
ε-(´∀`; )
「大好きな作品」と言ってくださるなんて、嬉しすぎる〜\(//∇//)\💕