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14 デートの誘い
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「暫く会えなかったが、元気にしていたか?」
久し振りに聞くウェイクリング様の落ち着いた低い声が、耳に心地よい。
「ええ。噂が耳に入るのが鬱陶しかったので、田舎の領地に篭っておりました。
都会の暮らしよりも、あちらの方が私には合っているみたいでして。
あ、お花とカードを頂き、ありがとうございました。
とっても癒されました」
「ああ、気に入ってくれたのなら良かった。
領地に行ったのは、ソフィアから聞いていたんだ。
今日も、ソフィアに君が来るって聞いたから、急遽参加させてもらった」
私に何か用事でもあったのだろうか?
ウェイクリング様が私に会いたがる理由など、何も思いつかないのだが。
「何か私に聞きたい事でも?
サミュエル様に何かあったのですか?」
「何故そこでアイツの名前が出る?」
冷ややかに目を細める、ウェイクリング様。
私とウェイクリング様の共通の話題と言えば、サミュエル様のことしか思いつかなかったのだが、彼の名前を出したのは失敗だったようだ。
よく考えればウェイクリング様は、こんな状況の私にサミュエル様の話題を振るほどデリカシーの無い人ではなかった。
「・・・・・・やはり君は・・・いや、いい。
なんでもない。
ところで、この夜会が終わったら、また直ぐに領地へ帰ってしまうのか?」
ウェイクリング様は何か言いかけたが、思い直した様に口を閉じて、別の話題を持ち出した。
「いいえ。王都に残って、少しづつ社交を再開しようかと思っています。
そろそろ新たなご縁も探さなければなりませんし」
「もう、次の縁談を考えているのか!?」
びっくりした表情のウェイクリング様が、珍しく幼く見えて、思わずクスリと笑いが溢れた。
「家族は無理をするなと言っているのですが、私もいい歳なので、モタモタしていたら嫁き遅れてしまいますもの。
こんな状況なので、見つかるかどうかはわかりませんが。
贅沢は言っていられないので、後妻とかも含めて探してみようかと」
私の〝後妻〟という言葉に、隣からの空気がすこしピリッとした。
やはりこの人も過保護だ。
「暫くこちらに居るのなら、来週の花祭りの日は空いているか?」
「??・・・特に予定はありませんが」
「では、当日迎えに行く。
一緒に参加しよう」
「え・・・・・・?」
「俺と一緒では嫌か?」
「いえ、そうでは無いですが・・・・・・」
花祭りは、カップルで参加する者が多い。
所謂〝デート〟の定番である。
ウェイクリング様は婚約者はいらっしゃらない様だが、どなたか恋い慕う女性と参加なさるべきなのではないか?
そんな考えが頭を過ぎるが、私を誘うくらいだから、今は想う方がいらっしゃらないのかもしれない。
婚約破棄で傷ついたであろう私を元気付けようとしてくれているのだから、無碍にするのも申し訳ない。
私は彼のお誘いを受ける事にした。
「お誘いありがとうございます。
よろしくお願いします、ウェイクリング様」
「リチャードと呼んでくれないか?」
「えっ?」
「リチャードと呼んでほしい。
君はサミュエルの婚約者だったから、今までは少し距離を置いて接していたが、俺は君の事をずっと前から友人だと思っている。
これからは君も、俺にもう少し親しみを持ってくれると嬉しい」
「・・・光栄です。
私なんかで良ければ、これからもよろしくお願いします。リチャード様」
「ありがとう。
俺も、君の事をメリッサと呼んでも?」
「ええ、勿論です」
家族とサミュエル様以外の男性に初めて名前で呼ばれるなんて、なんだか擽ったい気持ちだ。
同性のソフィー様はともかく、異性であるリチャード様とは、サミュエル様との繋がりが無くなれば疎遠になってしまう物だと思っていた。
彼と友人であり続けられるのが、とても嬉しい。
一通り挨拶を終えたと言うソフィー様が私の元へ戻ったのは、それからすぐだった。
私とリチャード様が二人でいるところを見て、彼女はニヤリと笑った。
「お邪魔だったかしら?」
「とんでもない」
私達はそんな関係ではない。
おかしな噂が絶えない私との関係を誤解されては、リチャード様に迷惑がかかってしまうだろう。
久し振りに聞くウェイクリング様の落ち着いた低い声が、耳に心地よい。
「ええ。噂が耳に入るのが鬱陶しかったので、田舎の領地に篭っておりました。
都会の暮らしよりも、あちらの方が私には合っているみたいでして。
あ、お花とカードを頂き、ありがとうございました。
とっても癒されました」
「ああ、気に入ってくれたのなら良かった。
領地に行ったのは、ソフィアから聞いていたんだ。
今日も、ソフィアに君が来るって聞いたから、急遽参加させてもらった」
私に何か用事でもあったのだろうか?
ウェイクリング様が私に会いたがる理由など、何も思いつかないのだが。
「何か私に聞きたい事でも?
サミュエル様に何かあったのですか?」
「何故そこでアイツの名前が出る?」
冷ややかに目を細める、ウェイクリング様。
私とウェイクリング様の共通の話題と言えば、サミュエル様のことしか思いつかなかったのだが、彼の名前を出したのは失敗だったようだ。
よく考えればウェイクリング様は、こんな状況の私にサミュエル様の話題を振るほどデリカシーの無い人ではなかった。
「・・・・・・やはり君は・・・いや、いい。
なんでもない。
ところで、この夜会が終わったら、また直ぐに領地へ帰ってしまうのか?」
ウェイクリング様は何か言いかけたが、思い直した様に口を閉じて、別の話題を持ち出した。
「いいえ。王都に残って、少しづつ社交を再開しようかと思っています。
そろそろ新たなご縁も探さなければなりませんし」
「もう、次の縁談を考えているのか!?」
びっくりした表情のウェイクリング様が、珍しく幼く見えて、思わずクスリと笑いが溢れた。
「家族は無理をするなと言っているのですが、私もいい歳なので、モタモタしていたら嫁き遅れてしまいますもの。
こんな状況なので、見つかるかどうかはわかりませんが。
贅沢は言っていられないので、後妻とかも含めて探してみようかと」
私の〝後妻〟という言葉に、隣からの空気がすこしピリッとした。
やはりこの人も過保護だ。
「暫くこちらに居るのなら、来週の花祭りの日は空いているか?」
「??・・・特に予定はありませんが」
「では、当日迎えに行く。
一緒に参加しよう」
「え・・・・・・?」
「俺と一緒では嫌か?」
「いえ、そうでは無いですが・・・・・・」
花祭りは、カップルで参加する者が多い。
所謂〝デート〟の定番である。
ウェイクリング様は婚約者はいらっしゃらない様だが、どなたか恋い慕う女性と参加なさるべきなのではないか?
そんな考えが頭を過ぎるが、私を誘うくらいだから、今は想う方がいらっしゃらないのかもしれない。
婚約破棄で傷ついたであろう私を元気付けようとしてくれているのだから、無碍にするのも申し訳ない。
私は彼のお誘いを受ける事にした。
「お誘いありがとうございます。
よろしくお願いします、ウェイクリング様」
「リチャードと呼んでくれないか?」
「えっ?」
「リチャードと呼んでほしい。
君はサミュエルの婚約者だったから、今までは少し距離を置いて接していたが、俺は君の事をずっと前から友人だと思っている。
これからは君も、俺にもう少し親しみを持ってくれると嬉しい」
「・・・光栄です。
私なんかで良ければ、これからもよろしくお願いします。リチャード様」
「ありがとう。
俺も、君の事をメリッサと呼んでも?」
「ええ、勿論です」
家族とサミュエル様以外の男性に初めて名前で呼ばれるなんて、なんだか擽ったい気持ちだ。
同性のソフィー様はともかく、異性であるリチャード様とは、サミュエル様との繋がりが無くなれば疎遠になってしまう物だと思っていた。
彼と友人であり続けられるのが、とても嬉しい。
一通り挨拶を終えたと言うソフィー様が私の元へ戻ったのは、それからすぐだった。
私とリチャード様が二人でいるところを見て、彼女はニヤリと笑った。
「お邪魔だったかしら?」
「とんでもない」
私達はそんな関係ではない。
おかしな噂が絶えない私との関係を誤解されては、リチャード様に迷惑がかかってしまうだろう。
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