6 / 24
6 防御の魔術
しおりを挟む
バチンッッ!!
「きゃあっっ!」
人も疎らな放課後の廊下を歩いていたら、私の教室の方から大きな音と女性の悲鳴が聞こえた。
ーーーあ、やっちゃったな。
まだ校舎内に残っていた生徒達が、教室に集まり出す。
私も教室に入ってみると、先日のアボット様が私の机の近くに蹲っている。
教科書に仕掛けた防御魔術が発動したのだ。
静電気より少し強めの電気が走るように設定したつもりだったけど・・・
思ったよりちょっと威力が強いかしら?
調整が必要かもしれない。
どうやら怪我まではしてないみたいだから、まあ良いか。
少しくらいは自業自得だよね。
「それ、防御魔術がかけてありまして、悪意を持った人間に反応します。
ワザと破損させようとしたりすると、電流が流れるのですよ。
危ないので、気を付けてくださいね」
アボット様の綺麗なお顔を覗き込んで、に~っこり笑って教えてあげたら、なんだか怯えた顔をされてしまった。
そちらが先に嫌がらせをしようとしたのでは無いか。
心外である。
翌日のお昼休み。
ソフィー様に食事に誘われた私は、食堂のテラス席に座った。
正面に座る黒髪の美女の白く細い指が、上品にパンをちぎるのを、なんとなく眺める。
美女は食事をしているだけでも絵になるなぁ。
「うふふ。雷撃事件の時のアボット様のお顔ったら、本当に傑作だったわ。
彼女が貴女の教科書を破ろうとした事も、学園内に周知されて、叱責を受けたみたいだし。
流石は私の妹ね」
ソフィー様が、可愛らしくウインクする。
やっぱり姉になりたいらしい。
「・・・・・・雷撃と言うほどの威力では無かった筈なのですが・・・」
「あら、皆んなそう呼んでるわよ」
あ、そうなんですね。
しかも事件化されているんですね。
初耳です。
「あの女、いつも高慢な態度で、自分より格下の家の人を威嚇したりする嫌な奴なのよ。
だから、ちょっとスッキリしたわ。
でも、今度からは何かされたら、私にも相談してちょうだいね。
ロブソン侯爵家の名にかけて、完膚無きまでに叩き潰してあげるから」
「お気持ちだけ、頂いておきます」
黒い笑顔のソフィー様には、やんわりとお断りしておく。
彼女に任せたら、本気で社会的に抹殺しそうだ。
「何の話?」
サミュエル様とウェイクリング様がやって来た。
恋人に移行してから、この四人でいる事が多くなった。
隣に座ったサミュエル様が、そっと私の手を取る。
ウェイクリング様がジッとその手を見ているが、このくらいの接触は許容範囲だろう・・・多分?
触れている部分から、コッソリ魔力を流す。
その間にソフィー様がお二人に〝雷撃事件〟の詳細を話して聞かせた。
「メリッサは魔術が得意だからな」
サミュエル様は笑っていたが、ウェイクリング様は渋い顔。
「大丈夫か?よく嫌がらせをされるのか?」
このお方はなかなか心配性である。
安心させるようにへらりと笑って見せる。
「今の所、実害は起きていないので、問題ありませんよ」
「そうか・・・・・・」
しかし残念ながら、程なくして、実害が出てしまう。
「あーあ、やられちゃった」
ダンスレッスン用のドレスがビリビリに切り裂かれている。
ロッカーに入れっぱなしにしてたから、防御魔術をかけるの忘れてた。
その日のダンスの授業は、体調不良を装ってお休みするしか無かった。
放課後、破れたドレスを処分する為、抱えて歩いてるとサミュエル様とウェイクリング様にばったり会った。
「ドレスなんか持って、どうしたの?」
「うっかり破いてしまいましたので処分しようと。
どうせ母のお下がりの古いドレスだったので、別に良いのですが」
「なら、僕が新しいドレスをプレゼントしようか」
「本当ですか?嬉しい!ありがとうございます」
喜びを表しつつ、然りげ無くサミュエル様の手を握った。
ラッキーだ。
ドレスを破いてくれたご令嬢に感謝したいくらいだ。
次のダンスの授業では、サミュエル様に買ってもらった高価なドレスを着てレッスンに参加した。
いつも嫌がらせをしてくるご令嬢達の、悔しそうな顔は見ものだった。
勿論、防御魔術をかけたので、もう破かれる心配は無い。
「きゃあっっ!」
人も疎らな放課後の廊下を歩いていたら、私の教室の方から大きな音と女性の悲鳴が聞こえた。
ーーーあ、やっちゃったな。
まだ校舎内に残っていた生徒達が、教室に集まり出す。
私も教室に入ってみると、先日のアボット様が私の机の近くに蹲っている。
教科書に仕掛けた防御魔術が発動したのだ。
静電気より少し強めの電気が走るように設定したつもりだったけど・・・
思ったよりちょっと威力が強いかしら?
調整が必要かもしれない。
どうやら怪我まではしてないみたいだから、まあ良いか。
少しくらいは自業自得だよね。
「それ、防御魔術がかけてありまして、悪意を持った人間に反応します。
ワザと破損させようとしたりすると、電流が流れるのですよ。
危ないので、気を付けてくださいね」
アボット様の綺麗なお顔を覗き込んで、に~っこり笑って教えてあげたら、なんだか怯えた顔をされてしまった。
そちらが先に嫌がらせをしようとしたのでは無いか。
心外である。
翌日のお昼休み。
ソフィー様に食事に誘われた私は、食堂のテラス席に座った。
正面に座る黒髪の美女の白く細い指が、上品にパンをちぎるのを、なんとなく眺める。
美女は食事をしているだけでも絵になるなぁ。
「うふふ。雷撃事件の時のアボット様のお顔ったら、本当に傑作だったわ。
彼女が貴女の教科書を破ろうとした事も、学園内に周知されて、叱責を受けたみたいだし。
流石は私の妹ね」
ソフィー様が、可愛らしくウインクする。
やっぱり姉になりたいらしい。
「・・・・・・雷撃と言うほどの威力では無かった筈なのですが・・・」
「あら、皆んなそう呼んでるわよ」
あ、そうなんですね。
しかも事件化されているんですね。
初耳です。
「あの女、いつも高慢な態度で、自分より格下の家の人を威嚇したりする嫌な奴なのよ。
だから、ちょっとスッキリしたわ。
でも、今度からは何かされたら、私にも相談してちょうだいね。
ロブソン侯爵家の名にかけて、完膚無きまでに叩き潰してあげるから」
「お気持ちだけ、頂いておきます」
黒い笑顔のソフィー様には、やんわりとお断りしておく。
彼女に任せたら、本気で社会的に抹殺しそうだ。
「何の話?」
サミュエル様とウェイクリング様がやって来た。
恋人に移行してから、この四人でいる事が多くなった。
隣に座ったサミュエル様が、そっと私の手を取る。
ウェイクリング様がジッとその手を見ているが、このくらいの接触は許容範囲だろう・・・多分?
触れている部分から、コッソリ魔力を流す。
その間にソフィー様がお二人に〝雷撃事件〟の詳細を話して聞かせた。
「メリッサは魔術が得意だからな」
サミュエル様は笑っていたが、ウェイクリング様は渋い顔。
「大丈夫か?よく嫌がらせをされるのか?」
このお方はなかなか心配性である。
安心させるようにへらりと笑って見せる。
「今の所、実害は起きていないので、問題ありませんよ」
「そうか・・・・・・」
しかし残念ながら、程なくして、実害が出てしまう。
「あーあ、やられちゃった」
ダンスレッスン用のドレスがビリビリに切り裂かれている。
ロッカーに入れっぱなしにしてたから、防御魔術をかけるの忘れてた。
その日のダンスの授業は、体調不良を装ってお休みするしか無かった。
放課後、破れたドレスを処分する為、抱えて歩いてるとサミュエル様とウェイクリング様にばったり会った。
「ドレスなんか持って、どうしたの?」
「うっかり破いてしまいましたので処分しようと。
どうせ母のお下がりの古いドレスだったので、別に良いのですが」
「なら、僕が新しいドレスをプレゼントしようか」
「本当ですか?嬉しい!ありがとうございます」
喜びを表しつつ、然りげ無くサミュエル様の手を握った。
ラッキーだ。
ドレスを破いてくれたご令嬢に感謝したいくらいだ。
次のダンスの授業では、サミュエル様に買ってもらった高価なドレスを着てレッスンに参加した。
いつも嫌がらせをしてくるご令嬢達の、悔しそうな顔は見ものだった。
勿論、防御魔術をかけたので、もう破かれる心配は無い。
50
お気に入りに追加
1,137
あなたにおすすめの小説

七光りのわがまま聖女を支えるのは疲れました。私はやめさせていただきます。
木山楽斗
恋愛
幼少期から魔法使いとしての才覚を見せていたラムーナは、王国における魔法使い最高峰の役職である聖女に就任するはずだった。
しかし、王国が聖女に選んだのは第一王女であるロメリアであった。彼女は父親である国王から溺愛されており、親の七光りで聖女に就任したのである。
ラムーナは、そんなロメリアを支える聖女補佐を任せられた。それは実質的に聖女としての役割を彼女が担うということだった。ロメリアには魔法使いの才能などまったくなかったのである。
色々と腑に落ちないラムーナだったが、それでも好待遇ではあったためその話を受け入れた。補佐として聖女を支えていこう。彼女はそのように考えていたのだ。
だが、彼女はその考えをすぐに改めることになった。なぜなら、聖女となったロメリアはとてもわがままな女性だったからである。
彼女は、才覚がまったくないにも関わらず上から目線でラムーナに命令してきた。ラムーナに支えられなければ何もできないはずなのに、ロメリアはとても偉そうだったのだ。
そんな彼女の態度に辟易としたラムーナは、聖女補佐の役目を下りることにした。王国側は特に彼女を止めることもなかった。ラムーナの代わりはいくらでもいると考えていたからである。
しかし彼女が去ったことによって、王国は未曽有の危機に晒されることになった。聖女補佐としてのラムーナは、とても有能な人間だったのだ。

【完結】愛されない令嬢は全てを諦めた
ツカノ
恋愛
繰り返し夢を見る。それは男爵令嬢と真実の愛を見つけた婚約者に婚約破棄された挙げ句に処刑される夢。
夢を見る度に、婚約者との顔合わせの当日に巻き戻ってしまう。
令嬢が諦めの境地に至った時、いつもとは違う展開になったのだった。
三話完結予定。

聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)
蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。
聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。
愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。
いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。
ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。
それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。
心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。

【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている
五色ひわ
恋愛
ドラード王国の第二王女、クラウディア・ドラードは正体不明の相手に襲撃されて子供の姿に変えられてしまった。何とか逃げのびたクラウディアは、年齢を偽って孤児院に隠れて暮らしている。
初めて経験する貧しい暮らしに疲れ果てた頃、目の前に現れたのは婚約破棄寸前の婚約者アルフレートだった。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
婚約破棄から聖女~今さら戻れと言われても後の祭りです
青の雀
恋愛
第1話
婚約破棄された伯爵令嬢は、領地に帰り聖女の力を発揮する。聖女を嫁に欲しい破棄した侯爵、王家が縁談を申し込むも拒否される。地団太を踏むも後の祭りです。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる