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1 噂の主人公
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キラキラとシャンデリアの灯りが照らし出す夜会の会場。
「メリッサ、無理をしなくても良いんだぞ」
「大丈夫です。お兄様」
お兄様のエスコートでホールに足を踏み入れた私の背中に、幾つもの不躾な視線が突き刺さる。
騒めきに紛れて聞こえる嘲笑の声。
それでも・・・・・・
奥歯をグッと噛み締めて、出来るだけ優雅に見える様に背筋を伸ばす。
大丈夫。俯いたら負けだ。凛と前を向いて。
つい先日まで、社交界の話題の中心は、女性なら誰もが憧れる、本当にあった、小説の様な大恋愛の話だった。
そして、今の話題の中心は、その恋愛の終幕について。
主人公は私、メリッサ・ハミルトン子爵令嬢である。
その物語の始まりは、3年半前。
私が学園に入学した日から始まる。
入学式で隣の席に座った公爵家の嫡男サミュエル・スタンリー様に見初められた私。
実はその時、私もサミュエル様に一目惚れしていたのだが、当時の私は、とある男爵家の嫡男と婚約していたため、どんなに想っていてもその求愛を受け入れる事など出来なかった。
しかしその後、婚約者の男爵家の嫡男も他の御令嬢に恋をしてしまった為、婚約は円満に解消され、私とサミュエル様はお付き合いを始めることが出来た。
私達はとても仲睦まじく、常に肩を寄せ合い手を繋いでいた。
すぐに学園の中では知らぬ者がいない程の、公認のカップルとなる。
オリーブグリーンの瞳に亜麻色の髪の地味な女。魔力が強いのだけが取り柄の子爵令嬢と、誰もが憧れる素敵な公爵令息との、格差を超えたシンデレラストーリー。
世間ではそれを運命の恋だとか、真実の愛だとか騒ぎたてた。
学園の女生徒からは嫉妬されて嫌がらせを受けるかと思っていたが、次期公爵の最愛を堂々と傷付ける馬鹿はいなかった様で、陰口を叩かれたり、通りすがりに少々嫌味を言われる程度で済んだ。
やがて、公爵家も二人の仲を認めざるを得なくなり、身分差を超えて、正式に婚約を結ぶ事になった。
婚約者になってからはすぐに公爵家に居を移し、公爵夫人になる為の厳しい教育が行われたが、常に寄り添い支えてくれるサミュエル様の存在に助けられ、幸せに暮らしていた。
だがしかし、私達が学園を卒業して半年以上が経ち、結婚式を数ヶ月後に控えた先月、突然その運命的な恋は終わりを迎えたのだ。
・・・・・・と、世間では言われているが、現実はそれとは全く異なる。
私は金で買われた婚約者だったのだから。
「メリッサ、無理をしなくても良いんだぞ」
「大丈夫です。お兄様」
お兄様のエスコートでホールに足を踏み入れた私の背中に、幾つもの不躾な視線が突き刺さる。
騒めきに紛れて聞こえる嘲笑の声。
それでも・・・・・・
奥歯をグッと噛み締めて、出来るだけ優雅に見える様に背筋を伸ばす。
大丈夫。俯いたら負けだ。凛と前を向いて。
つい先日まで、社交界の話題の中心は、女性なら誰もが憧れる、本当にあった、小説の様な大恋愛の話だった。
そして、今の話題の中心は、その恋愛の終幕について。
主人公は私、メリッサ・ハミルトン子爵令嬢である。
その物語の始まりは、3年半前。
私が学園に入学した日から始まる。
入学式で隣の席に座った公爵家の嫡男サミュエル・スタンリー様に見初められた私。
実はその時、私もサミュエル様に一目惚れしていたのだが、当時の私は、とある男爵家の嫡男と婚約していたため、どんなに想っていてもその求愛を受け入れる事など出来なかった。
しかしその後、婚約者の男爵家の嫡男も他の御令嬢に恋をしてしまった為、婚約は円満に解消され、私とサミュエル様はお付き合いを始めることが出来た。
私達はとても仲睦まじく、常に肩を寄せ合い手を繋いでいた。
すぐに学園の中では知らぬ者がいない程の、公認のカップルとなる。
オリーブグリーンの瞳に亜麻色の髪の地味な女。魔力が強いのだけが取り柄の子爵令嬢と、誰もが憧れる素敵な公爵令息との、格差を超えたシンデレラストーリー。
世間ではそれを運命の恋だとか、真実の愛だとか騒ぎたてた。
学園の女生徒からは嫉妬されて嫌がらせを受けるかと思っていたが、次期公爵の最愛を堂々と傷付ける馬鹿はいなかった様で、陰口を叩かれたり、通りすがりに少々嫌味を言われる程度で済んだ。
やがて、公爵家も二人の仲を認めざるを得なくなり、身分差を超えて、正式に婚約を結ぶ事になった。
婚約者になってからはすぐに公爵家に居を移し、公爵夫人になる為の厳しい教育が行われたが、常に寄り添い支えてくれるサミュエル様の存在に助けられ、幸せに暮らしていた。
だがしかし、私達が学園を卒業して半年以上が経ち、結婚式を数ヶ月後に控えた先月、突然その運命的な恋は終わりを迎えたのだ。
・・・・・・と、世間では言われているが、現実はそれとは全く異なる。
私は金で買われた婚約者だったのだから。
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