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25 貴方にだけは
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「『もう二度と言わない』なんて、嫌……です」
そう言った私の顔は、どんどん熱くなっていく。
羞恥に耐え切れずに俯いた。
「…………………は?」
驚いた様に目を見開いて固まってしまったリベリオ様は、たっぷりの沈黙の後に吐息の様な小さな声を漏らした。
チラリと上目遣いに彼を覗き見れば、片手で口元を押さえて顔を背けたその頬は、私に負けない位に真っ赤に染まっている。
「……好きだと言われても、もう、怖くは無いのですか?」
ポツリと零された疑問に、私は小さく頷く。
「リベリオ様に言われるのだけは……、嬉しい、みたい、です」
消え入りそうな声でそう答えた私は、いつの間にかリベリオ様の腕の中に囚われていた。
「……!?」
「……世界一可愛い、俺の姫。
貴女が好きです。愛しています」
私を強く抱き締めたリベリオ様は、飛び切り甘い声で囁く。
「私も、貴方が好きです」
「ああ、その言葉だけで無敵になった様な気がします。
今なら隣国の王子なんて全く怖くない。
いっその事、国ごと滅ぼしてしまいましょうか」
「何言ってるんです、ダメですよ」
上機嫌なリベリオ様の口から飛び出した好戦的過ぎる発言を、慌てて否定する。
戦争ダメ!絶対っ!
「ダメですか?どうしても?
私からクラウディアを奪おうとする国など、本当に滅んでしまえば良いのに……」
「そんな仔犬みたいな目をしたって、ダメな物はダメです」
いつもキリッとしているリベリオ様の拗ねた様なお顔は可愛いけど、言っている内容は全く可愛くない。
しかも、いつの間にか勝手に名前を呼び捨てにされているし。まあ、それは良いんだけど。
「滅ぼすのなら微力ながらお手伝いしますよ」
向かいの座席から急に聞こえた声に、ハッと我に返った。
声の主はイメルダだ。
「イメルダさんが協力するなら、俺もついて行きましょう」
リベリオ様の護衛騎士も、楽しそうに彼女に追従する。
そう。途中から完全に存在を忘れていたが、馬車の中にはこの二人もいたのだ。
全く周りが見えなくなっていた。
自分でも信じられない程の大失態だ。
先程までよりも更に顔を赤くした私は、リベリオ様の腕からなんとか逃れようと藻搔いてみたのだが、彼は私を放してくれる気は更々無いらしい。
余計に力強く抱き締められてしまった。
「は、放してくださいませ。
人前でこんな……、リベリオ様は恥ずかしくは無いのですかっ!?」
私が必死で抗議をしてもリベリオ様は意に介さず、熱っぽく私を見詰めている。
「貴族の護衛や侍女は、主人のラブシーンには見て見ぬふりをしてくれる物ですよ。
それに、誰に見られていようと気になりません。
私の瞳には、いつだって貴女しか映っていないのですから」
「なっ……!?
何を仰るんですか?余計に恥ずかしいっっ!」
ちょっと前までそんな素振りは全く見せなかった癖に、想いが通じた途端に急激に甘くなるの、本当にやめて欲しい。
顔を覆って身悶える私の耳に、クスクスとイメルダの笑う声が聞こえた。
「さては姫様、私達の存在をすっかり忘れていましたね?」
「ぅ゛ぅ……ごめんなさい……」
イメルダに図星を突かれた私は、リベリオ様の腕の中で小さく呻き声を上げる。
「良いのですよ。姫様の幸せは、私の幸せでもあるのですから。
……ちょっと砂糖を吐きそうでしたけど」
揶揄う様にそう言ったイメルダに、私は益々居た堪れない気持ちになった。
「だけど冗談抜きで、ジョスラン殿下には二度とクラウディアを狙ったりしない様に、少し位は痛い目を見せないといけないですね」
リベリオ様は黒い笑顔でそう言った。
「そもそも、あの方が本当に私との婚約を狙っているのかどうかも分かりませんよ?
まだ噂話の段階ですから」
「実は今日、クラウディアを王宮まで送るついでに会いに来る様にって、陛下から呼ばれているのです。
なんの用件かは聞いていないですが、もしかしたらジョスラン殿下に関する話かも知れませんね」
その話だとしたら、当事者の私では無くリベリオ様だけがお父様に呼ばれたのは何故だろう?
そう言った私の顔は、どんどん熱くなっていく。
羞恥に耐え切れずに俯いた。
「…………………は?」
驚いた様に目を見開いて固まってしまったリベリオ様は、たっぷりの沈黙の後に吐息の様な小さな声を漏らした。
チラリと上目遣いに彼を覗き見れば、片手で口元を押さえて顔を背けたその頬は、私に負けない位に真っ赤に染まっている。
「……好きだと言われても、もう、怖くは無いのですか?」
ポツリと零された疑問に、私は小さく頷く。
「リベリオ様に言われるのだけは……、嬉しい、みたい、です」
消え入りそうな声でそう答えた私は、いつの間にかリベリオ様の腕の中に囚われていた。
「……!?」
「……世界一可愛い、俺の姫。
貴女が好きです。愛しています」
私を強く抱き締めたリベリオ様は、飛び切り甘い声で囁く。
「私も、貴方が好きです」
「ああ、その言葉だけで無敵になった様な気がします。
今なら隣国の王子なんて全く怖くない。
いっその事、国ごと滅ぼしてしまいましょうか」
「何言ってるんです、ダメですよ」
上機嫌なリベリオ様の口から飛び出した好戦的過ぎる発言を、慌てて否定する。
戦争ダメ!絶対っ!
「ダメですか?どうしても?
私からクラウディアを奪おうとする国など、本当に滅んでしまえば良いのに……」
「そんな仔犬みたいな目をしたって、ダメな物はダメです」
いつもキリッとしているリベリオ様の拗ねた様なお顔は可愛いけど、言っている内容は全く可愛くない。
しかも、いつの間にか勝手に名前を呼び捨てにされているし。まあ、それは良いんだけど。
「滅ぼすのなら微力ながらお手伝いしますよ」
向かいの座席から急に聞こえた声に、ハッと我に返った。
声の主はイメルダだ。
「イメルダさんが協力するなら、俺もついて行きましょう」
リベリオ様の護衛騎士も、楽しそうに彼女に追従する。
そう。途中から完全に存在を忘れていたが、馬車の中にはこの二人もいたのだ。
全く周りが見えなくなっていた。
自分でも信じられない程の大失態だ。
先程までよりも更に顔を赤くした私は、リベリオ様の腕からなんとか逃れようと藻搔いてみたのだが、彼は私を放してくれる気は更々無いらしい。
余計に力強く抱き締められてしまった。
「は、放してくださいませ。
人前でこんな……、リベリオ様は恥ずかしくは無いのですかっ!?」
私が必死で抗議をしてもリベリオ様は意に介さず、熱っぽく私を見詰めている。
「貴族の護衛や侍女は、主人のラブシーンには見て見ぬふりをしてくれる物ですよ。
それに、誰に見られていようと気になりません。
私の瞳には、いつだって貴女しか映っていないのですから」
「なっ……!?
何を仰るんですか?余計に恥ずかしいっっ!」
ちょっと前までそんな素振りは全く見せなかった癖に、想いが通じた途端に急激に甘くなるの、本当にやめて欲しい。
顔を覆って身悶える私の耳に、クスクスとイメルダの笑う声が聞こえた。
「さては姫様、私達の存在をすっかり忘れていましたね?」
「ぅ゛ぅ……ごめんなさい……」
イメルダに図星を突かれた私は、リベリオ様の腕の中で小さく呻き声を上げる。
「良いのですよ。姫様の幸せは、私の幸せでもあるのですから。
……ちょっと砂糖を吐きそうでしたけど」
揶揄う様にそう言ったイメルダに、私は益々居た堪れない気持ちになった。
「だけど冗談抜きで、ジョスラン殿下には二度とクラウディアを狙ったりしない様に、少し位は痛い目を見せないといけないですね」
リベリオ様は黒い笑顔でそう言った。
「そもそも、あの方が本当に私との婚約を狙っているのかどうかも分かりませんよ?
まだ噂話の段階ですから」
「実は今日、クラウディアを王宮まで送るついでに会いに来る様にって、陛下から呼ばれているのです。
なんの用件かは聞いていないですが、もしかしたらジョスラン殿下に関する話かも知れませんね」
その話だとしたら、当事者の私では無くリベリオ様だけがお父様に呼ばれたのは何故だろう?
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