17 / 32
17 過激な人々
しおりを挟む
「あーあー、やっぱり腫れちゃいましたねぇ。せっかくの美人さんが台無しですぅ。
はい、姫様。シッカリ冷やしましょうね」
「どうせ眼鏡を掛けてしまえば見えないわよ?」
「姫様。シ・ッ・カ・リ・と、冷やしましょうね?」
有無を言わさないニッコリ笑顔のカリーナに、瞼より先に背筋が冷えた。
泣き腫らした私の目に、カリーナが氷水でキンキンに冷やしたタオルを当てる。
冷た過ぎてちょっと頭が痛いくらいだけど、ちゃんと冷やさないとカリーナに猛烈に怒られる予感がするので、渋々指示に従った。
スーパー侍女カリーナは美容にとても煩いのだ。
「ところで、姫様はまだ眼鏡をかけ続けるのですか?」
イメルダが不思議そうに問い掛ける。
「うーん……。
魅了が漏れている訳では無いって事は分かったんだけど……、まだちょっと怖いから、暫くは外せないかな」
「あーーー、勿体無い。人類の損失だわ」
天を仰いで大袈裟に嘆くカリーナに、少し笑ってしまった。
いつかは、眼鏡を外せる様になるのだろうか?
「クラウディア様の気持ちがそれで少しでも軽くなるなら、眼鏡くらい掛ければ良いと思いますけど。
そんな事より、もうあの男の減刑を陛下に奏上するなんて、言い出さないでくださいよね。
まあ、そんな馬鹿な提案を陛下が聞き入れる訳が無いんですけどね。
あの男を野放しにしたら、クラウディア様の身が危険に晒されるんですからね。
貴女がアイツの前に飛び出した時は、本当に心臓が止まるかと思った。
もうあんな思いだけは御免です」
懇々と私に言い聞かせるのは、未だ私の肩をギュッと抱いたままのリベリオ様だ。
放して欲しいと訴えても、聞き入れてもらえなかった。
やっぱり彼に触れられる事に嫌悪感はないのだが、少々恥ずかしい気持ちは湧いて来る。
彼はついでに私の瞼に乗せた冷やしタオルをそっと押さえてくれている。
至れり尽くせりだ。
「ちゃんと理解しました。彼の処遇は司法に任せる事にします」
「私としては、極刑でも良いと思っているくらいですよ。
クラウディア様を付け回すなんて、万死に値する」
シレッと放たれたリベリオ様の極端な発言に、カリーナとイメルダまでウンウンと深く頷いている。
いつの間に私の周りは過激派集団になってしまったのだろうか?
確かに付き纏われるのは迷惑ではあるが、命で償うほどでは……。
そもそも、彼の罪はリベリオ様をナイフで襲おうとした事で、私に付き纏った事では無いはずなのだが。
「ええっと……多分、判例からすると、無期懲役くらいになるかと思うのですが」
「まあ、二度とクラウディア様に近付けないなら、それで良いですけど」
リベリオ様は少しだけ不満気な様子だが、一応納得したみたいだ。
「さあ、私はそろそろお暇します。
クラウディア様は沢山泣いてお疲れでしょうから、今日はゆっくりと休んで下さいね。
明日、また様子を伺いに来ます」
漸く私の肩から手を離したリベリオ様は、ソファーから立ち上がった。
「あの、お気遣いはありがたいですが、研究の方もお忙しいでしょう?
お陰様で私はもう大丈夫ですから、無理はなさらないで」
「こんな不安定な状態の貴女を放って置いては、心配で研究に身が入りません」
「……済みません」
小さくなって頭を下げたら、リベリオ様はクスクスと笑った。
「謝らないで下さい。私が貴女に会いたいから来るだけです。
では、また明日」
リベリオ様は、私の頭をポンポンと撫でると、爽やかな微笑みを残して帰って行った。
はい、姫様。シッカリ冷やしましょうね」
「どうせ眼鏡を掛けてしまえば見えないわよ?」
「姫様。シ・ッ・カ・リ・と、冷やしましょうね?」
有無を言わさないニッコリ笑顔のカリーナに、瞼より先に背筋が冷えた。
泣き腫らした私の目に、カリーナが氷水でキンキンに冷やしたタオルを当てる。
冷た過ぎてちょっと頭が痛いくらいだけど、ちゃんと冷やさないとカリーナに猛烈に怒られる予感がするので、渋々指示に従った。
スーパー侍女カリーナは美容にとても煩いのだ。
「ところで、姫様はまだ眼鏡をかけ続けるのですか?」
イメルダが不思議そうに問い掛ける。
「うーん……。
魅了が漏れている訳では無いって事は分かったんだけど……、まだちょっと怖いから、暫くは外せないかな」
「あーーー、勿体無い。人類の損失だわ」
天を仰いで大袈裟に嘆くカリーナに、少し笑ってしまった。
いつかは、眼鏡を外せる様になるのだろうか?
「クラウディア様の気持ちがそれで少しでも軽くなるなら、眼鏡くらい掛ければ良いと思いますけど。
そんな事より、もうあの男の減刑を陛下に奏上するなんて、言い出さないでくださいよね。
まあ、そんな馬鹿な提案を陛下が聞き入れる訳が無いんですけどね。
あの男を野放しにしたら、クラウディア様の身が危険に晒されるんですからね。
貴女がアイツの前に飛び出した時は、本当に心臓が止まるかと思った。
もうあんな思いだけは御免です」
懇々と私に言い聞かせるのは、未だ私の肩をギュッと抱いたままのリベリオ様だ。
放して欲しいと訴えても、聞き入れてもらえなかった。
やっぱり彼に触れられる事に嫌悪感はないのだが、少々恥ずかしい気持ちは湧いて来る。
彼はついでに私の瞼に乗せた冷やしタオルをそっと押さえてくれている。
至れり尽くせりだ。
「ちゃんと理解しました。彼の処遇は司法に任せる事にします」
「私としては、極刑でも良いと思っているくらいですよ。
クラウディア様を付け回すなんて、万死に値する」
シレッと放たれたリベリオ様の極端な発言に、カリーナとイメルダまでウンウンと深く頷いている。
いつの間に私の周りは過激派集団になってしまったのだろうか?
確かに付き纏われるのは迷惑ではあるが、命で償うほどでは……。
そもそも、彼の罪はリベリオ様をナイフで襲おうとした事で、私に付き纏った事では無いはずなのだが。
「ええっと……多分、判例からすると、無期懲役くらいになるかと思うのですが」
「まあ、二度とクラウディア様に近付けないなら、それで良いですけど」
リベリオ様は少しだけ不満気な様子だが、一応納得したみたいだ。
「さあ、私はそろそろお暇します。
クラウディア様は沢山泣いてお疲れでしょうから、今日はゆっくりと休んで下さいね。
明日、また様子を伺いに来ます」
漸く私の肩から手を離したリベリオ様は、ソファーから立ち上がった。
「あの、お気遣いはありがたいですが、研究の方もお忙しいでしょう?
お陰様で私はもう大丈夫ですから、無理はなさらないで」
「こんな不安定な状態の貴女を放って置いては、心配で研究に身が入りません」
「……済みません」
小さくなって頭を下げたら、リベリオ様はクスクスと笑った。
「謝らないで下さい。私が貴女に会いたいから来るだけです。
では、また明日」
リベリオ様は、私の頭をポンポンと撫でると、爽やかな微笑みを残して帰って行った。
77
お気に入りに追加
1,112
あなたにおすすめの小説

覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。

【完結】元婚約者が偉そうに復縁を望んできましたけど、私の婚約者はもう決まっていますよ?
白草まる
恋愛
自分よりも成績が優秀だからという理由で侯爵令息アッバスから婚約破棄を告げられた伯爵令嬢カティ。
元から関係が良くなく、欲に目がくらんだ父親によって結ばれた婚約だったためカティは反対するはずもなかった。
学園での静かな日々を取り戻したカティは自分と同じように真面目な公爵令息ヘルムートと一緒に勉強するようになる。
そのような二人の関係を邪魔するようにアッバスが余計なことを言い出した。
私達、政略結婚ですから。
黎
恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。
それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。

【完結】愛されない令嬢は全てを諦めた
ツカノ
恋愛
繰り返し夢を見る。それは男爵令嬢と真実の愛を見つけた婚約者に婚約破棄された挙げ句に処刑される夢。
夢を見る度に、婚約者との顔合わせの当日に巻き戻ってしまう。
令嬢が諦めの境地に至った時、いつもとは違う展開になったのだった。
三話完結予定。

ガネス公爵令嬢の変身
くびのほきょう
恋愛
1年前に現れたお父様と同じ赤い目をした美しいご令嬢。その令嬢に夢中な幼なじみの王子様に恋をしていたのだと気づいた公爵令嬢のお話。
※「小説家になろう」へも投稿しています

もう、愛はいりませんから
さくたろう
恋愛
ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。
王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。

幼馴染の許嫁は、男勝りな彼女にご執心らしい
和泉鷹央
恋愛
王国でも指折りの名家の跡取り息子にして、高名な剣士がコンスタンスの幼馴染であり許嫁。
そんな彼は数代前に没落した実家にはなかなか戻らず、地元では遊び人として名高くてコンスタンスを困らせていた。
「クレイ様はまたお戻りにならないのですか……」
「ごめんなさいね、コンスタンス。クレイが結婚の時期を遅くさせてしまって」
「いいえおば様。でも、クレイ様……他に好きな方がおられるようですが?」
「えっ……!?」
「どうやら、色町で有名な踊り子と恋をしているようなんです」
しかし、彼はそんな噂はあり得ないと叫び、相手の男勝りな踊り子も否定する。
でも、コンスタンスは見てしまった。
朝方、二人が仲睦まじくホテルから出てくる姿を……
他の投稿サイトにも掲載しています。
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる