【完結】愛を拒絶した王女に捧げる溺愛

miniko

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17 過激な人々

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「あーあー、やっぱり腫れちゃいましたねぇ。せっかくの美人さんが台無しですぅ。
 はい、姫様。シッカリ冷やしましょうね」

「どうせ眼鏡を掛けてしまえば見えないわよ?」

「姫様。シ・ッ・カ・リ・と、冷やしましょうね?」

 有無を言わさないニッコリ笑顔のカリーナに、瞼より先に背筋が冷えた。

 泣き腫らした私の目に、カリーナが氷水でキンキンに冷やしたタオルを当てる。
 冷た過ぎてちょっと頭が痛いくらいだけど、ちゃんと冷やさないとカリーナに猛烈に怒られる予感がするので、渋々指示に従った。
 スーパー侍女カリーナは美容にとても煩いのだ。

「ところで、姫様はまだ眼鏡をかけ続けるのですか?」

 イメルダが不思議そうに問い掛ける。

「うーん……。
 魅了が漏れている訳では無いって事は分かったんだけど……、まだちょっと怖いから、暫くは外せないかな」

「あーーー、勿体無い。人類の損失だわ」

 天を仰いで大袈裟に嘆くカリーナに、少し笑ってしまった。

 いつかは、眼鏡を外せる様になるのだろうか?

「クラウディア様の気持ちがそれで少しでも軽くなるなら、眼鏡くらい掛ければ良いと思いますけど。
 そんな事より、もうあの男の減刑を陛下に奏上するなんて、言い出さないでくださいよね。
 まあ、そんな馬鹿な提案を陛下が聞き入れる訳が無いんですけどね。
 あの男を野放しにしたら、クラウディア様の身が危険に晒されるんですからね。
 貴女がアイツの前に飛び出した時は、本当に心臓が止まるかと思った。
 もうあんな思いだけは御免です」

 懇々と私に言い聞かせるのは、未だ私の肩をギュッと抱いたままのリベリオ様だ。
 放して欲しいと訴えても、聞き入れてもらえなかった。
 やっぱり彼に触れられる事に嫌悪感はないのだが、少々恥ずかしい気持ちは湧いて来る。

 彼はついでに私の瞼に乗せた冷やしタオルをそっと押さえてくれている。
 至れり尽くせりだ。

「ちゃんと理解しました。彼の処遇は司法に任せる事にします」

「私としては、極刑でも良いと思っているくらいですよ。
 クラウディア様を付け回すなんて、万死に値する」

 シレッと放たれたリベリオ様の極端な発言に、カリーナとイメルダまでウンウンと深く頷いている。
 いつの間に私の周りは過激派集団になってしまったのだろうか?

 確かに付き纏われるのは迷惑ではあるが、命で償うほどでは……。
 そもそも、彼の罪はリベリオ様をナイフで襲おうとした事で、私に付き纏った事では無いはずなのだが。

「ええっと……多分、判例からすると、無期懲役くらいになるかと思うのですが」

「まあ、二度とクラウディア様に近付けないなら、それで良いですけど」

 リベリオ様は少しだけ不満気な様子だが、一応納得したみたいだ。

「さあ、私はそろそろお暇します。
 クラウディア様は沢山泣いてお疲れでしょうから、今日はゆっくりと休んで下さいね。
 明日、また様子を伺いに来ます」

 漸く私の肩から手を離したリベリオ様は、ソファーから立ち上がった。

「あの、お気遣いはありがたいですが、研究の方もお忙しいでしょう?
 お陰様で私はもう大丈夫ですから、無理はなさらないで」

「こんな不安定な状態の貴女を放って置いては、心配で研究に身が入りません」

「……済みません」

 小さくなって頭を下げたら、リベリオ様はクスクスと笑った。

「謝らないで下さい。私が貴女に会いたいから来るだけです。
 では、また明日」

 リベリオ様は、私の頭をポンポンと撫でると、爽やかな微笑みを残して帰って行った。

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