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33 変化し続ける(最終話)
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側妃派の残党騒動で、婚礼の儀の後のパレードと夜会が中止になったと、密かにホッとしていたのだが・・・・・・。
「中止になる訳無いじゃん。
延期だよ。ひと月後に」
・・・・・・マジか。
中止になる訳無いらしい。
私の体調が完全に回復した頃に延期になっただけらしい。
「・・・・・・そう、ですか」
パレードかぁ・・・。
想像しただけで、ゲンナリする。
「そんなに嫌そうな顔しないでよ。
なんか傷付くじゃないか」
「いや、テオとの結婚のお披露目が嫌とかじゃなくてですね・・・」
「分かってるよ、エルザは派手な事苦手だもんね。
でも慣れてもらわないと。
次期王妃なんだから」
「うぅ・・・・・・。
・・・はい・・・、ガンバリマス」
渋々頷いた私の頭を、テオがポンポンと撫でた。
パレードの当日は見事な快晴で、沿道には予想していた以上に沢山の人々が詰め掛けていた。
(神様なんて居ないんだわ・・・)
フゥッと溜息が漏れる。
悪天候で人が殆ど集まりません様に、と祈っていた私の願いは、残念ながら聞き届けられなかった様だ。
屋根の無いオープンタイプの馬車に乗り込み、テオと並んで笑顔で沿道に手を振りながら、王都を一周ぐるりと回る。
途中から頬がヒクヒクと引き攣りそうになるのを、必死で抑えた。
「エルザ、頬が引き攣ってる」
・・・・・・抑え切れてなかった。
テオがふふっと笑って私の頬にキスをした。
沿道から「キャーーーーッッ!」っと黄色い歓声が上がる。
「なんて事をするんですかっ!?」
涙目で睨んでも、テオは涼しい顔をしている。
「ほら、ちょっとリラックス出来たんじゃない?」
「・・・~~~っっ!!!」
顔が燃える様に熱い。
私が注目されるの苦手だって知ってるくせに~~っ!!
テオなんてっ、テオなんて、後でデニス兄様にしばき倒されてしまえば良いんだわっっ!
予想通り、パレードの後に冷ややかな笑顔のデニス兄様に呼び止められたテオは、後日、鍛錬と言う名の扱きを受ける事になったらしい。
その後の結婚披露の夜会では、ダンスで緊張した私が思いっきりテオの足を踏み付けたり、またしてもお父様が大号泣して、会場中から生温かい視線を向けられると言うハプニングもありつつ、なんとか無事に結婚関連の行事を全てこなすことが出来た。
そんな風に始まった私の王太子妃としての生活も、早い物で、もう三年目を迎える。
王太子妃専用の執務室で、書類仕事と格闘していると、廊下をバタバタと走る音が近付いて来た。
(ああ、また来たわ・・・)
「エルザッ!」
バンッと勢い良く扉が開いて、慌てた表情のテオが入って来た。
「どうしたのですか?そんなに慌てて。
廊下を走って、ノックもせずに入室するなんて・・・」
書類から目を離さずに、苦言を呈すると、近付いて来たテオがその書類をサッと奪った。
「ダメじゃ無いか、執務なんて他の者に任せて、エルザは安静にしてないと」
「体に負担が掛かるような仕事はしませんよ。
やる事がなさ過ぎて退屈なのです」
「今はノンビリするのが、君の仕事。
せめて安定期に入るまでは、大人しくしていてくれよ」
テオは、困った様に眉を下げながら、まだペッタンコな私のお腹を愛しそうにさすった。
「あ、ちょっと動いたんじゃ無い?」
「いや、まだ動きませんって。
気が早過ぎですよ」
私の懐妊が発覚してから、今迄以上に過保護になったテオに苦笑しながらも、愛しい気持ちが込み上げてくる。
愛とは複雑で厄介な感情だ。
健斗の様に、直ぐに移ろってしまう事もある。
側妃やドロテーアの様に、愛と欲望が複雑に絡み合い、暴走してしまう事もある。
陛下の様に、間違った人を愛してしまったと気付き、後悔する事もある。
だから私は、人を再び愛する事が怖かった。
でも、きっと必死で避けようとしても、自分の気持ちを完璧にコントロールする事なんて、不可能なのだ。
どんなに否定しても、私の中には、確かに幼い頃からテオへの愛情があって、それは長い時間を掛けて推しへの愛から友愛に変わり、更に恋愛へと大きく形を変えた。
きっとこれからも変化し続けて行くのだろう。
物語の様に、永遠に変わらぬ愛などは存在しない。
だが、誠実さと敬意を忘れずに努力をすれば、その時々に合う最適な愛の形に近付ける事は出来るんじゃないだろうか。
きっと、その努力を怠ってはいけないのだ。
お腹の子供が産まれたら、私達の愛の形はまた大きく変わるのだろうか?
今は、それが少しだけ楽しみでもある。
「女の子かなぁ?男の子かなぁ?」
「男の子だと良いですね」
「僕は、エルザに似た可愛い女の子が良いなぁ」
「早めに世継ぎが出来た方が良くないですか?」
「この子が生まれる前に、法律を改正しようと思ってるんだ。
この国初の女王を誕生させるのも良いんじゃない?」
なんて事無い風に、サラリとテオは言うけれど・・・。
「法改正なんて、そんな簡単じゃ無いでしょう?」
「大丈夫。
実はもう大分前から根回しはしてあるんだ」
悪戯が成功したみたいにニヤリと笑うテオに、開いた口が塞がらない。
この人は、いつも私の知らないところで色々と画策している。
これもきっと、世継ぎを産まなければという私のプレッシャーを軽くする為なのだろう。
「どちらが生まれるか、楽しみですね」
「男でも女でも、エルザと僕の子なら、きっと最高に可愛いよ」
嬉しそうに笑うテオに、幸せな未来の予感がした。
【終】
「中止になる訳無いじゃん。
延期だよ。ひと月後に」
・・・・・・マジか。
中止になる訳無いらしい。
私の体調が完全に回復した頃に延期になっただけらしい。
「・・・・・・そう、ですか」
パレードかぁ・・・。
想像しただけで、ゲンナリする。
「そんなに嫌そうな顔しないでよ。
なんか傷付くじゃないか」
「いや、テオとの結婚のお披露目が嫌とかじゃなくてですね・・・」
「分かってるよ、エルザは派手な事苦手だもんね。
でも慣れてもらわないと。
次期王妃なんだから」
「うぅ・・・・・・。
・・・はい・・・、ガンバリマス」
渋々頷いた私の頭を、テオがポンポンと撫でた。
パレードの当日は見事な快晴で、沿道には予想していた以上に沢山の人々が詰め掛けていた。
(神様なんて居ないんだわ・・・)
フゥッと溜息が漏れる。
悪天候で人が殆ど集まりません様に、と祈っていた私の願いは、残念ながら聞き届けられなかった様だ。
屋根の無いオープンタイプの馬車に乗り込み、テオと並んで笑顔で沿道に手を振りながら、王都を一周ぐるりと回る。
途中から頬がヒクヒクと引き攣りそうになるのを、必死で抑えた。
「エルザ、頬が引き攣ってる」
・・・・・・抑え切れてなかった。
テオがふふっと笑って私の頬にキスをした。
沿道から「キャーーーーッッ!」っと黄色い歓声が上がる。
「なんて事をするんですかっ!?」
涙目で睨んでも、テオは涼しい顔をしている。
「ほら、ちょっとリラックス出来たんじゃない?」
「・・・~~~っっ!!!」
顔が燃える様に熱い。
私が注目されるの苦手だって知ってるくせに~~っ!!
テオなんてっ、テオなんて、後でデニス兄様にしばき倒されてしまえば良いんだわっっ!
予想通り、パレードの後に冷ややかな笑顔のデニス兄様に呼び止められたテオは、後日、鍛錬と言う名の扱きを受ける事になったらしい。
その後の結婚披露の夜会では、ダンスで緊張した私が思いっきりテオの足を踏み付けたり、またしてもお父様が大号泣して、会場中から生温かい視線を向けられると言うハプニングもありつつ、なんとか無事に結婚関連の行事を全てこなすことが出来た。
そんな風に始まった私の王太子妃としての生活も、早い物で、もう三年目を迎える。
王太子妃専用の執務室で、書類仕事と格闘していると、廊下をバタバタと走る音が近付いて来た。
(ああ、また来たわ・・・)
「エルザッ!」
バンッと勢い良く扉が開いて、慌てた表情のテオが入って来た。
「どうしたのですか?そんなに慌てて。
廊下を走って、ノックもせずに入室するなんて・・・」
書類から目を離さずに、苦言を呈すると、近付いて来たテオがその書類をサッと奪った。
「ダメじゃ無いか、執務なんて他の者に任せて、エルザは安静にしてないと」
「体に負担が掛かるような仕事はしませんよ。
やる事がなさ過ぎて退屈なのです」
「今はノンビリするのが、君の仕事。
せめて安定期に入るまでは、大人しくしていてくれよ」
テオは、困った様に眉を下げながら、まだペッタンコな私のお腹を愛しそうにさすった。
「あ、ちょっと動いたんじゃ無い?」
「いや、まだ動きませんって。
気が早過ぎですよ」
私の懐妊が発覚してから、今迄以上に過保護になったテオに苦笑しながらも、愛しい気持ちが込み上げてくる。
愛とは複雑で厄介な感情だ。
健斗の様に、直ぐに移ろってしまう事もある。
側妃やドロテーアの様に、愛と欲望が複雑に絡み合い、暴走してしまう事もある。
陛下の様に、間違った人を愛してしまったと気付き、後悔する事もある。
だから私は、人を再び愛する事が怖かった。
でも、きっと必死で避けようとしても、自分の気持ちを完璧にコントロールする事なんて、不可能なのだ。
どんなに否定しても、私の中には、確かに幼い頃からテオへの愛情があって、それは長い時間を掛けて推しへの愛から友愛に変わり、更に恋愛へと大きく形を変えた。
きっとこれからも変化し続けて行くのだろう。
物語の様に、永遠に変わらぬ愛などは存在しない。
だが、誠実さと敬意を忘れずに努力をすれば、その時々に合う最適な愛の形に近付ける事は出来るんじゃないだろうか。
きっと、その努力を怠ってはいけないのだ。
お腹の子供が産まれたら、私達の愛の形はまた大きく変わるのだろうか?
今は、それが少しだけ楽しみでもある。
「女の子かなぁ?男の子かなぁ?」
「男の子だと良いですね」
「僕は、エルザに似た可愛い女の子が良いなぁ」
「早めに世継ぎが出来た方が良くないですか?」
「この子が生まれる前に、法律を改正しようと思ってるんだ。
この国初の女王を誕生させるのも良いんじゃない?」
なんて事無い風に、サラリとテオは言うけれど・・・。
「法改正なんて、そんな簡単じゃ無いでしょう?」
「大丈夫。
実はもう大分前から根回しはしてあるんだ」
悪戯が成功したみたいにニヤリと笑うテオに、開いた口が塞がらない。
この人は、いつも私の知らないところで色々と画策している。
これもきっと、世継ぎを産まなければという私のプレッシャーを軽くする為なのだろう。
「どちらが生まれるか、楽しみですね」
「男でも女でも、エルザと僕の子なら、きっと最高に可愛いよ」
嬉しそうに笑うテオに、幸せな未来の予感がした。
【終】
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