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27 側妃の陰謀
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側妃の表情に嫌な予感がした私は、テオのグラスに手を伸ばそうとするが、やんわりとそれを止められた。
「大丈夫だよ」
コソッと言ったテオの顔を見上げると、余裕の笑みを浮かべていた。
「兄上」
突然、近寄って来たオリヴァーがテオに声を掛ける。
「ん?どうした?」
「俺、炭酸が苦手なんですが、間違ってスパークリングが用意されたみたいなんです。
兄上の白ワインと交換してもらえませんか?」
「構わないが・・・」
「オリヴァー!!
何をしているの!?」
側妃が顔面蒼白になって声を上げる。
「何って、ドリンクを交換するだけですよ?
何か不都合でも?」
キョトンとした顔で首を傾げるオリヴァーに、側妃はワナワナと震え出した。
「そ、れは、その・・・・・・」
しどろもどろになる側妃に、陛下や王妃殿下も訝し気な視線を向け始める。
「まさか、毒でも入ってるんですかね?」
わざとらしくシレッと言い放ったオリヴァーの言葉に、側妃の顔色は益々悪くなる。
オリヴァーが銀の指輪を外して、テオから受け取った白ワインのグラスに放り込むと、その指輪は一瞬で真っ黒に変色した。
「毒だっっ!!!」
誰かが叫んだ途端に、会場中に響めきが広がって行く。
「側妃を捕らえよ」
陛下が命ずると、近くに控えていた騎士達が素早く動いて、側妃を捕縛する。
「何をするの!?無礼者っ!!
離しなさい!
違う・・・、違う、私じゃ無いわっ!」
髪を振り乱しながら叫ぶ側妃に、オリヴァーが冷めた目を向ける。
いや、オリヴァーだけでなく、会場に居る貴族全員が冷たい視線を投げかけていた。
「往生際が悪いですよ、母上。
俺の手にグラスが渡った事に動揺した時点で、その言い訳は通用しません」
「オリヴァー・・・・・・、貴方・・・、どうして・・・?」
実の息子に見限られた事を悟った側妃は、その場に崩れ落ち、弱々しい声で呟いた。
噛み締めた唇には微かに血が滲んでいる。
「どうして?
自分の兄の暗殺を阻止しただけですよ。
人として、当たり前の事でしょう?
残念ながら母上にとっては、そうでは無かったみたいですが」
心底不思議そうに問うオリヴァーに、側妃は涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、ガックリと項垂れた。
「連れて行け」
溜息混じりに陛下が指示を出し、騎士達が暴れる側妃を引き摺って会場から連れ出した。
「嫌よっ!
待って、陛下。
誤解ですっっ!!」
諦めきれずに叫び続ける側妃の声が、扉の向こうへ少しづつ遠ざかって消えた。
会場内の貴族達は大いに動揺しており、騒めきは増すばかりだったのだが・・・・・・。
「静まれ!!」
陛下の一喝で、瞬時にシンと静まり返った。
「問題は発生したが、折角の目出度い宴だ。
我々は後始末の為退場するが、皆は大いに楽しむが良い」
陛下はそう言い残すと、クルリと背を向け会場を後にする。
それに倣って、私達も退場した。
「この流れは最初から決まってたんですか?」
控室に戻る道中、テオにそう問いただすと、彼はコクリと頷いた。
「オリヴァーから、側妃が今日の乾杯の際に僕の毒殺を目論んでいると言う情報が齎されていたんだ。
最初は罠だろうと思って信じていなかったんだが、オリヴァーは側妃が毒薬を入手した証拠や、加担している貴族の名簿などを提出してくれた。
今回の事件は事前に阻止する事も出来たんだが、それだと側妃が首謀者だと言う証拠が少し弱い。
確実に側妃を潰す為には、陛下も庇い切れないくらいの状況を作りたかった。
だから、泳がせて実行させる事にしたんだ。
流石にこんなに大勢の前で、あんな失態を犯せば、揉み消す事は出来ないからね」
まさか、オリヴァーが母である側妃を裏切って、テオの暗殺を阻止してくれるなんて思わなかった。
これは、素直に感謝をすれば良いのか、それとも何か企んでいる可能性を考えた方が良いのか・・・・・・。
「なるほど・・・・・・」
「余計な心配をさせて済まなかった。
側妃側の人間に気付かれない様に、僕とオリヴァーとデニスだけで情報を共有していたんだ」
私にも教えてくれれば良かったのにと思っていたのだが・・・・・・
申し訳無さそうに眉を下げるテオに、何も言えなくなった。
きっとテオは、私が必要以上にオリヴァーを警戒していると気付いていた。
だから、あえて今回の作戦を伝えなかったのだろう。
私が反対するのが分かっていたから。
前世の記憶のせいで、視野が狭くなっていたのは否めない。
結果的には、オリヴァーに協力して貰うというテオの判断が正解だったのだ。
そう考えると、私に何も伝えてくれなかった事を責めるなんて出来なかった。
仲間外れにされたみたいで、ちょっとだけ不満だけど。
私はそのままデニス兄様に付き添われて、タウンハウスに帰る事になった。
王家の皆さんは、この後、側妃の処遇を決める為の話し合いをするらしい。
「大丈夫だよ」
コソッと言ったテオの顔を見上げると、余裕の笑みを浮かべていた。
「兄上」
突然、近寄って来たオリヴァーがテオに声を掛ける。
「ん?どうした?」
「俺、炭酸が苦手なんですが、間違ってスパークリングが用意されたみたいなんです。
兄上の白ワインと交換してもらえませんか?」
「構わないが・・・」
「オリヴァー!!
何をしているの!?」
側妃が顔面蒼白になって声を上げる。
「何って、ドリンクを交換するだけですよ?
何か不都合でも?」
キョトンとした顔で首を傾げるオリヴァーに、側妃はワナワナと震え出した。
「そ、れは、その・・・・・・」
しどろもどろになる側妃に、陛下や王妃殿下も訝し気な視線を向け始める。
「まさか、毒でも入ってるんですかね?」
わざとらしくシレッと言い放ったオリヴァーの言葉に、側妃の顔色は益々悪くなる。
オリヴァーが銀の指輪を外して、テオから受け取った白ワインのグラスに放り込むと、その指輪は一瞬で真っ黒に変色した。
「毒だっっ!!!」
誰かが叫んだ途端に、会場中に響めきが広がって行く。
「側妃を捕らえよ」
陛下が命ずると、近くに控えていた騎士達が素早く動いて、側妃を捕縛する。
「何をするの!?無礼者っ!!
離しなさい!
違う・・・、違う、私じゃ無いわっ!」
髪を振り乱しながら叫ぶ側妃に、オリヴァーが冷めた目を向ける。
いや、オリヴァーだけでなく、会場に居る貴族全員が冷たい視線を投げかけていた。
「往生際が悪いですよ、母上。
俺の手にグラスが渡った事に動揺した時点で、その言い訳は通用しません」
「オリヴァー・・・・・・、貴方・・・、どうして・・・?」
実の息子に見限られた事を悟った側妃は、その場に崩れ落ち、弱々しい声で呟いた。
噛み締めた唇には微かに血が滲んでいる。
「どうして?
自分の兄の暗殺を阻止しただけですよ。
人として、当たり前の事でしょう?
残念ながら母上にとっては、そうでは無かったみたいですが」
心底不思議そうに問うオリヴァーに、側妃は涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、ガックリと項垂れた。
「連れて行け」
溜息混じりに陛下が指示を出し、騎士達が暴れる側妃を引き摺って会場から連れ出した。
「嫌よっ!
待って、陛下。
誤解ですっっ!!」
諦めきれずに叫び続ける側妃の声が、扉の向こうへ少しづつ遠ざかって消えた。
会場内の貴族達は大いに動揺しており、騒めきは増すばかりだったのだが・・・・・・。
「静まれ!!」
陛下の一喝で、瞬時にシンと静まり返った。
「問題は発生したが、折角の目出度い宴だ。
我々は後始末の為退場するが、皆は大いに楽しむが良い」
陛下はそう言い残すと、クルリと背を向け会場を後にする。
それに倣って、私達も退場した。
「この流れは最初から決まってたんですか?」
控室に戻る道中、テオにそう問いただすと、彼はコクリと頷いた。
「オリヴァーから、側妃が今日の乾杯の際に僕の毒殺を目論んでいると言う情報が齎されていたんだ。
最初は罠だろうと思って信じていなかったんだが、オリヴァーは側妃が毒薬を入手した証拠や、加担している貴族の名簿などを提出してくれた。
今回の事件は事前に阻止する事も出来たんだが、それだと側妃が首謀者だと言う証拠が少し弱い。
確実に側妃を潰す為には、陛下も庇い切れないくらいの状況を作りたかった。
だから、泳がせて実行させる事にしたんだ。
流石にこんなに大勢の前で、あんな失態を犯せば、揉み消す事は出来ないからね」
まさか、オリヴァーが母である側妃を裏切って、テオの暗殺を阻止してくれるなんて思わなかった。
これは、素直に感謝をすれば良いのか、それとも何か企んでいる可能性を考えた方が良いのか・・・・・・。
「なるほど・・・・・・」
「余計な心配をさせて済まなかった。
側妃側の人間に気付かれない様に、僕とオリヴァーとデニスだけで情報を共有していたんだ」
私にも教えてくれれば良かったのにと思っていたのだが・・・・・・
申し訳無さそうに眉を下げるテオに、何も言えなくなった。
きっとテオは、私が必要以上にオリヴァーを警戒していると気付いていた。
だから、あえて今回の作戦を伝えなかったのだろう。
私が反対するのが分かっていたから。
前世の記憶のせいで、視野が狭くなっていたのは否めない。
結果的には、オリヴァーに協力して貰うというテオの判断が正解だったのだ。
そう考えると、私に何も伝えてくれなかった事を責めるなんて出来なかった。
仲間外れにされたみたいで、ちょっとだけ不満だけど。
私はそのままデニス兄様に付き添われて、タウンハウスに帰る事になった。
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