【完結】愛を信じないモブ令嬢は、すぐ死ぬ王子を護りたいけど溺愛だけはお断り!

miniko

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20 久々の死亡フラグ

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テオとカフェでの楽しい時間を過ごしていたのに、グルーバー家の騎士が私を呼びに来た。
いきなり邪魔をされてしまったけれど、その理由を聞いたら帰らざるを得なくなった。

「奥様が突然タウンハウスの方へいらっしゃって、エルザお嬢様に急ぎのお話があるそうなのです」

「お母様が?
済みませんテオフィル様、せっかくお誘い頂いたのに」

「いや、緊急事態かもしれないから、早く帰った方が良さそうだな。
直ぐに送って行くよ」

「いえ、辺境伯家の馬車を用意してありますので大丈夫です」

騎士がそう言うので、私も頷く。

「テオフィル様はお忙しいのですから、私の事は気にせず、王宮へお帰りください。
また明日、学園で」

テオに別れを告げて、騎士に促されて店を後にした。
直ぐ近くに馬車があるのかと思ったら、結構歩かされている。

「馬車はどこに停めたの?」

「済みません。
先程まで、店の周りが混雑していて馬車を停めるスペースが無く、少し離れた所に停めてあるのですよ」

「そう。構わないわ」

「有難うございます。
こちらです」

騎士は人通りの少ない道へと進んで行く。
初めて通る筈なのに、なんだか見覚えがある路地だと思った瞬間、脇腹に小型のナイフが突き付けられた。

「本当に済みません、お嬢様。
騒がないで下さい」

「・・・・・・何が目的?」

「さあ?俺には分かりません。
ただ、この先の路地裏へ連れて来る様にとしか・・・。
もう黙って貰えますか?」

人が良さそうな騎士だったのに。
何かのっぴきならない事情があって協力させられているのだろうか。


そうか、この路地は確かゲームの中で見たんだわ。
ヒロインであるユリアが、小さな子供に「お兄ちゃんが急に苦しみ出して倒れちゃったの」と、助けを求められて路地裏へと誘い込まれる。
そこで破落戸達に襲われるのだが・・・・・・。
近くを通りかかったテオが悲鳴を聞いて駆け付け、ユリアを庇って命を落とす場合があるのだ。

ユリアがテオフィルルートを進んでいない今、この死亡フラグは消えたとばかり思っていたのだが。
まさかヒロインの代わりに私が襲われる事になるとは思わなかった。

ゲームの中では、男爵令嬢のユリアは護衛を伴わずに街を普通に歩いていたけれど、辺境伯令嬢の私は外出時は常に誰かと一緒にいる。
だから、路地裏へ連れ込む方法が違っているのかも。

ゲームの中でも無理目な設定だなと思っていたけど、カフェから王宮へ向かうはずのテオが偶然路地裏を通りかかる事など、おそらく無いだろう。
もしも何らかの強制力でテオが助けに来るとしても、私を庇って死ぬなんて絶対にさせない。
まあ、強くなったテオにとっては破落戸を制圧するなんて、赤子の手を捻る様な物だろうけど。
でも、誘い込む手段と言い、ゲームとは少しづつ違う部分もあるので、油断は出来ない。

だけど、今私丸腰だからなぁ。
せめて帯剣してればなんとかなったんだけど。
デートで帯剣してる令嬢とか、普通に引くよね。


「きゃっ・・・・・・!」

私は躓いたフリをしてしゃがみ込むと、地面の砂を掴んだ。

「大丈夫ですか?立って下さい」

「ええ、大丈夫・・・・・・よ、っと!」

立ち上がり、振り向きざま。
思いっきり騎士の目に叩きつける様に砂を投げる。

「ぎゃあっっ!」

後は走って逃げるだけ。
・・・なのだが。

「お嬢ちゃん、どこに行くのかな?」

別の男に直ぐに捕まった。
マジかよ。
破落戸達、意外と近くに居たのね。

「往生際が悪いわね」

男達の後ろから現れたのは、ドロテーア・レーヴェンタール。

そう、この事件は、ヒロインに嫉妬した悪役令嬢が、ヒロインの顔に傷を負わせようとして仕組んだ物なのだ。
ってゆーか、ドロテーアは現場には来ない筈なのに、何故!?

「貴女の泣き叫ぶ顔が見たかったのに、全然怯えていないのね。
まあ、いいわ。
どうせ直ぐに死ぬのだから」

そう言われて、漸く分かった。

ゲームではドロテーアはテオの婚約者だが、今の彼女は婚約者候補ですらない。
だから、私を傷付けるだけに飽き足らず、完全に排除しようとしているのだ。
最終的に命を奪うつもりならば、顔を見られて黒幕である事が知られても問題ないと考えているのだろう。

つまりは、殺す気満々って事!?

それは流石に嫌だよ!!
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