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18 婚約者と異母弟
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《side:テオフィル》
少し落ち着いたエルザをソファーに座らせ、彼女の好きなアールグレイの紅茶を飲ませた。
その間に、他の従者に呼びに行かせたデニスが、執務室へとやって来た。
「エルザの様子が少しおかしい。
今日の仕事はもう良いから、エルザが紅茶を飲み終わったら、一緒に帰れ」
エルザに気を遣わせない様に、そっと耳打ちすると、デニスは神妙な顔で頷いた。
「感謝します」
二人を見送った後、人払いをして、誰もいない空中に呼び掛ける。
「マーカス、報告を」
「は~い」
すると、どこからともなく黒い騎士服を着た一人の男が現れて、僕に跪いた。
(いつ見ても不思議だよなぁ)
彼は所謂『影』と呼ばれる存在だ。
たまにエルザに付けている。
「エルザ様は、先程オリヴァー殿下と鉢合わせなさいました」
マーカスの報告に、ピクリと眉が動く。
よりによって、一番会わせたくない奴に捕まったのか。
オリヴァーが僕のエルザを気に入ったりしたら非常に厄介だ。
「オリヴァーと?
それで、何か問題でも起きたのか?」
「いいえ。全く。
最初は普通に挨拶を。
その後、エルザ様は何か考え込む様な仕草をなさって・・・。
オリヴァー様が小さく何か呟かれたのですが、残念ながら私には聞き取れない程の小さな声で。
その言葉を聞いて、エルザ様はショックを受けたみたいな様子で、慌てて殿下に辞去の挨拶をすると、直ぐにこちらの執務室へと向かわれました」
「なんだそれ?
何を言われたんだろう・・・・・・?」
「さあ?
多分、二文字くらいの短い言葉で〝ミヤ〟とか〝ミナ〟みたいな感じだと思うんですけど・・・・・・」
そんな言葉に心当たりは無い。
どんな意味があるのだろうか?
短い単語でそこまで動揺したなんて・・・・・・。
「オリヴァーとエルザは、元々知り合いなのだろうか?」
「ん~、最初に殿下が声をかけた時に、『君がエルザ嬢か?』と聞いていらしたので、初対面だと思います」
じゃあ、知り合いの線は消えるか。
いや、近くで顔を見て思い出したと言う可能性もあるか。
それに、一方的にエルザがオリヴァーを知っていた線も残るな。
僕の知らない間に、二人に何か接点があったのかもしれない・・・・・・。
───気に入らない。
なんだろう、この不快感。
凄くモヤモヤする。
「テオフィル殿下、黒いオーラを撒き散らすのやめて貰えませんかね?
嫉妬深い男は嫌がられますよ」
マーカスは前髪をかき上げながら、呆れた表情で溜め息をついた。
「嫉妬じゃない。
ちょっとイライラするだけだ」
「いやいや、一般的にはそれを嫉妬と言うんですよ。
他の男を意識するよりも、エルザ様との仲を深める事を考えた方が宜しいかと思います」
「仲は良いと思うが」
「確かにお二人は仲良しでいらっしゃいますが、恋人同士の様な甘さは足りません。
だから、なかなか進展しないのでは?
お忙しいのは分かりますが、たまにはエルザ様をデートにでも誘ってみたらいかがでしょう」
「・・・・・・っっ!!」
なんてこった!
盲点だった。
思い返してみれば、こんなに長く一緒に過ごしているのに、エルザと二人きりで出掛けた事は殆どなかった。
出掛ける機会があっても、いつもシスコンが付いて来て邪魔しやがるから。
早速、翌日の学園からの帰りに、エルザを流行りのカフェへ誘う事にした。
「絶っっ対に付いて来るなよ!」
「分かりましたってば。
今日だけですよ」
昨日早退させてやった件を恩着せがましく持ち出して、デニスに邪魔をしない様にと釘を刺す。
コレで一つ目の難所をクリアした。
後はエルザを誘い出すだけ!
───なのだが。
「エルザ、今日の帰りに最近オープンしたと言うカフェに行こうと思うんだけど、付き合ってくれないか?」
「カフェですか?
良いですけど・・・。
カフェを視察するなんて、珍しいですねぇ」
公務だと思われた。
キョトンとした顔で首を傾げる様子は可愛いが、それにしてもニブい!!
ニブ過ぎるっっ!!
まさかそこまで意識されていないとは・・・・・・。
婚約者候補なのに、全くその自覚が無いようだ。
なんなの?わざとなの?
ちょっと挫折しそうになったが、なんとか気を取り直した。
「視察じゃない。デートだ!!」
少し落ち着いたエルザをソファーに座らせ、彼女の好きなアールグレイの紅茶を飲ませた。
その間に、他の従者に呼びに行かせたデニスが、執務室へとやって来た。
「エルザの様子が少しおかしい。
今日の仕事はもう良いから、エルザが紅茶を飲み終わったら、一緒に帰れ」
エルザに気を遣わせない様に、そっと耳打ちすると、デニスは神妙な顔で頷いた。
「感謝します」
二人を見送った後、人払いをして、誰もいない空中に呼び掛ける。
「マーカス、報告を」
「は~い」
すると、どこからともなく黒い騎士服を着た一人の男が現れて、僕に跪いた。
(いつ見ても不思議だよなぁ)
彼は所謂『影』と呼ばれる存在だ。
たまにエルザに付けている。
「エルザ様は、先程オリヴァー殿下と鉢合わせなさいました」
マーカスの報告に、ピクリと眉が動く。
よりによって、一番会わせたくない奴に捕まったのか。
オリヴァーが僕のエルザを気に入ったりしたら非常に厄介だ。
「オリヴァーと?
それで、何か問題でも起きたのか?」
「いいえ。全く。
最初は普通に挨拶を。
その後、エルザ様は何か考え込む様な仕草をなさって・・・。
オリヴァー様が小さく何か呟かれたのですが、残念ながら私には聞き取れない程の小さな声で。
その言葉を聞いて、エルザ様はショックを受けたみたいな様子で、慌てて殿下に辞去の挨拶をすると、直ぐにこちらの執務室へと向かわれました」
「なんだそれ?
何を言われたんだろう・・・・・・?」
「さあ?
多分、二文字くらいの短い言葉で〝ミヤ〟とか〝ミナ〟みたいな感じだと思うんですけど・・・・・・」
そんな言葉に心当たりは無い。
どんな意味があるのだろうか?
短い単語でそこまで動揺したなんて・・・・・・。
「オリヴァーとエルザは、元々知り合いなのだろうか?」
「ん~、最初に殿下が声をかけた時に、『君がエルザ嬢か?』と聞いていらしたので、初対面だと思います」
じゃあ、知り合いの線は消えるか。
いや、近くで顔を見て思い出したと言う可能性もあるか。
それに、一方的にエルザがオリヴァーを知っていた線も残るな。
僕の知らない間に、二人に何か接点があったのかもしれない・・・・・・。
───気に入らない。
なんだろう、この不快感。
凄くモヤモヤする。
「テオフィル殿下、黒いオーラを撒き散らすのやめて貰えませんかね?
嫉妬深い男は嫌がられますよ」
マーカスは前髪をかき上げながら、呆れた表情で溜め息をついた。
「嫉妬じゃない。
ちょっとイライラするだけだ」
「いやいや、一般的にはそれを嫉妬と言うんですよ。
他の男を意識するよりも、エルザ様との仲を深める事を考えた方が宜しいかと思います」
「仲は良いと思うが」
「確かにお二人は仲良しでいらっしゃいますが、恋人同士の様な甘さは足りません。
だから、なかなか進展しないのでは?
お忙しいのは分かりますが、たまにはエルザ様をデートにでも誘ってみたらいかがでしょう」
「・・・・・・っっ!!」
なんてこった!
盲点だった。
思い返してみれば、こんなに長く一緒に過ごしているのに、エルザと二人きりで出掛けた事は殆どなかった。
出掛ける機会があっても、いつもシスコンが付いて来て邪魔しやがるから。
早速、翌日の学園からの帰りに、エルザを流行りのカフェへ誘う事にした。
「絶っっ対に付いて来るなよ!」
「分かりましたってば。
今日だけですよ」
昨日早退させてやった件を恩着せがましく持ち出して、デニスに邪魔をしない様にと釘を刺す。
コレで一つ目の難所をクリアした。
後はエルザを誘い出すだけ!
───なのだが。
「エルザ、今日の帰りに最近オープンしたと言うカフェに行こうと思うんだけど、付き合ってくれないか?」
「カフェですか?
良いですけど・・・。
カフェを視察するなんて、珍しいですねぇ」
公務だと思われた。
キョトンとした顔で首を傾げる様子は可愛いが、それにしてもニブい!!
ニブ過ぎるっっ!!
まさかそこまで意識されていないとは・・・・・・。
婚約者候補なのに、全くその自覚が無いようだ。
なんなの?わざとなの?
ちょっと挫折しそうになったが、なんとか気を取り直した。
「視察じゃない。デートだ!!」
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