【完結】愛を信じないモブ令嬢は、すぐ死ぬ王子を護りたいけど溺愛だけはお断り!

miniko

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15 トカゲの尻尾

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打ち合わせが終了して解散したところで、兄二人を手招きで呼び寄せ、騎士達の集団から少し離れた。

「明日の討伐までの間、先程の騎士から目を離さないでください」

声を顰めてお願いをすると、二人は眉根を寄せた。

「一体どう言う事なんだ?」

「なぜ突然、テオが魔獣討伐に参加する事が決まったのだと思いますか?
私は、側妃殿下が何か企んでいる気がして仕方が無いのです。
特にあの赤毛の騎士は、何度もテオを睨んでいましたし、なんだか動きが怪しいです。
きっと何かを企んでいます。
特に人目が少ない夜は気をつけてくださいね」


本当は、その企みの全てを知っているのだが、それを明かせば間違い無く情報源を聞かれる。
まさか、前世の記憶が・・・などと言える筈もなく、口をつぐめば私の方が不穏分子に認定されかねない。
何か適当な言い訳を考えられれば良かったのだが、残念ながら何も思いつかなかった。

しかし、私の二人の兄様は非常に優秀である。
最小限の情報を与えれば、必ず結果を出してくれるだろう。

・・・そう考えて、側妃からの刺客を兄様達に丸投げし、グッスリと眠った翌朝。

朝食を取るために食堂へ向かう途中、玄関ホールに、兄様達とお父様と辺境騎士団の騎士二人が集まっていた。
よく見ると彼等が囲んでいる中心に、何かが転がっている。
それは、ミノムシの様にロープでぐるぐる巻きにされた、赤髪の騎士だった。

(やだ、漫画みたい)

吹き出しそうになるのを抑えながら、近付いて挨拶をした。

「皆様、おはようございます」

「ああ、エルザ。おはよう」

先程までミノムシに鋭い視線を向けていたお父様が、笑顔で振り返った。

「お父様まで手を貸してくださったのですか?」

「一晩中目を離さない様にするには、俺達二人じゃ少し心許無いと思って、父上にお願いして忠実な部下を貸して貰ったんだ」

確かに、言われてみれば、ちょっと二人じゃ大変かも知れない。

「私が言い出したのに、何も協力せずに申し訳ありません」

「今回の討伐隊は男性ばかりだから、エルザを近付ける訳にはいかないよ」

それはそうなのだが・・・
丸投げして一人だけスヤスヤ眠っていたなんて、さすがに罪悪感が凄い。

「それに、お前のお陰でテオフィル殿下の命を守る事が出来た」

「では、やっぱり?」

「ああ、昨夜、魔獣の森に興奮剤を撒こうとしていた所を捕まえた」

赤髪の騎士はひっそりと深夜の森に入って行き、薬剤の容器を取り出した所で、兄様達に取り押さえられたらしい。
ゲームの中では、辺境への移動中に、隙を見てテオの荷物にも薬剤を掛けるのだが、実際はテオは私達と移動した。
だから討伐当日に、こっそりとテオの背中にも薬剤を数滴垂らすつもりだったとか。


魔獣の興奮剤は、人にとっては無色無臭の水にしか見えないのだが、魔獣はその臭いに引き寄せられ、揮発した成分を沢山吸い込むと興奮して凶暴化する。
そんな危険な薬剤が何故開発されたかと言うと、戦争の為だ。
とある国が、戦時中に、敵国へ散布する目的で開発した。
だが、散布量が多過ぎて、錯乱状態になった多くの魔獣が国境を超え、とある国の方まで流入するという、かなり間抜けな結末を迎えたのだとか。

今では、我が国を含めた殆どの国で、禁止薬剤に指定されており、所持しているだけでも重罪となる。

今回の犯人は生け捕りにされたので、自白剤を使った取り調べを受ける事になるだろう。
側妃の関与が証明されれば、流石に寵妃であっても厳しく罰せられる。
まだ残っている側妃関連のテオの死亡フラグも消えるかもしれない。


魔獣の討伐は予定通り、その日の午後に行われて、何の問題も無く終了した。

討伐隊の中で、王都から派遣された騎士達は、赤髪のミノムシを引き摺って直ぐに王都へ戻って行った。


テオは、このまま暫くの間はグルーバー邸に滞在するらしい。

「またしてもエルザに護られてしまったな。
このままでは、いつまで経っても庇護対象から抜け出せない」

テオがちょっと悔しそうに呟く。

「私はテオの役に立てた事が嬉しいですよ」

「・・・・・・ありがとう」

お礼の言葉を口にした彼は、とても複雑な表情をしていた。



その数日後、王都に送られた例の赤髪が、王宮の地下牢で取り調べを待つ間に毒殺されたとの知らせが届いた。
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