【完結】愛を信じないモブ令嬢は、すぐ死ぬ王子を護りたいけど溺愛だけはお断り!

miniko

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13 新たな友人

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「初めまして、ユリア・シュタルクと申します」

ええ、勿論存じ上げておりますよ。
ユリア・シュタルク男爵令嬢。
この世界のヒロインである彼女は、素朴で人懐っこい笑みが可愛らしい少女だった。
私とタメなので、彼女も今年の新入生である。

「エルザ・グルーバーと申します。
どうぞ宜しくお願いします」

「まあ、グルーバー様と言えば、辺境伯のご令嬢でいらっしゃいますよね?
これは大変失礼致しました」

「とんでもない。
この学園では身分は平等ですよ、シュタルク様。
隣に座ったのも何かのご縁ですから、仲良くして頂けると嬉しいです」

「お友達になって頂けるのですか?
それなら、私の事はユリアと呼んで下さいませ」

無邪気な笑顔がとても眩しい。
なんかキラキラしてる。
これがヒロインの実力なのか。

「では、私の事はエルザと・・・」

───んっ?

なんか、ヒロインちゃんと仲良くなっちゃってるんだけど・・・。
私、ポジション的には悪役令嬢の筈なんだが、これで良いのかしら?

うーーん・・・・・・。
まあ、無駄に揉め事を増やす必要は無いか・・・・・・。
ヒロインとテオの恋を盛り上げる為の悪役は、ドロテーアが喜んで引き受けてくれそうな気もするし。

取り敢えずユリアと友達になって、さり気なくテオにユリアを紹介してみて・・・・・・。
それから、『私はあくまでも婚約者だから、いくらでも変更は可能ですよー』とアピールしておこうかな。
そこからは、二人の気持ち次第だろう。

とにかく、ユリアが良い子そうで良かった。
彼女が乙女ゲーム転生物の小説に出てくる様な、ちょっとヤバい思考回路のご令嬢だったなら、ハッピーエンドが見れたとしても複雑な気持ちになってしまうだろう。

ユリアがヒドインでは無かった事にホッと胸を撫で下ろしつつ、まだまだ終わりそうも無い校長の長~~~~い話に耳を傾けた。



「お前、遅刻して来ただろ?
だから気を付けろって言ったのに。
まあ、明日からは一緒に登校するから良いけど・・・」

式典が終わって、同じクラスだと判明したユリアと一緒に教室に移動しようとした所で、呆れた顔の兄様に捕まった。

「済みません。
ちょっと油断しました」

「ん?そちらのレディは?」

兄様が私の隣のユリアに目を留めた。

「ああ。
こちら、ユリア・シュタルクさんですわ。
先程、お友達になったばかりなのです」

「そうか。
エルザの兄のデニスです。
これからも妹を宜しくお願いします」

「ユリア・シュタルクです」

ユリアと兄様が微笑み合う様子を見て、もしかして兄様、早くもユリアに惹かれてしまったのかしら?なんて、一瞬思ったのだが・・・・・・。

「エルザ、この手の傷は一体どうしたんだ!?
痛いだろう?可哀想に・・・。
直ぐに保健室に行こう!」

さっき転んだ時に出来た掌の小さな擦り傷を見咎めた兄様は、慌てた様子でオロオロと心配し始めた。
ヒロインと出逢っても、最強のシスコンはやっぱり通常運転である。

「だ、大丈夫です。
全く痛く無いですから」

「そんな筈は無いじゃないか!
俺の可愛いエルザの白くて美しい手に、傷痕でも残ってしまったらどうするんだ。
早く治療をしなければ」

「かすり傷ですよ。
跡なんて残りませんってば!」

強引に保健室へと私を連れて行こうとする兄様をなんとか宥めて別れ、ユリアと共に自分達の教室へと向かった。



私達が教室の扉を開ける音に反応して、既に中に居た生徒達が一斉に振り向いた。

ヒソヒソと噂される声は、わざとなのか不可抗力なのか、私の耳にも微かに入って来る。
その内容は、好意的な物も悪意に満ちた物もある様だ。

ドロテーアの様に、私がテオの婚約者候補になった事を不満に思う人も居れば、その現状を受け入れて、次期王妃の座に一番近い私に媚を売ろうとする人も。
どちらも充分に気を付けなければいけない存在である。

そんな中で少数ではあるが、私自身に興味を持ってくれているクラスメイトもいるみたいだ。
彼女達とは是非とも仲良くなりたい。

「初めまして、エルザ・グルーバーと申します」

ユリアを連れて、好意的な視線を送って来たご令嬢達に挨拶に行くと、彼女達はフワリと微笑んでくれた。

うん。
なかなか楽しい学園生活になるかもしれないわ。
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