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12 そしてゲームが始まる
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(ヤバいヤバい・・・!)
自分の入学式に遅れそうになっている私は、学園の廊下を走る・・・・・・訳には行かないので、競歩の様に進んでいた。
学園にはデニス兄様と共に通学する予定なのだが、生徒会役員になっている彼は入学式の準備を手伝わなければならないらしく、今日だけは先に出発してしまった。
その後、まだ時間があるからと寛いでしまったせいで、到着が式典の開始時刻ギリギリになってしまったのだ。
(こんな事なら、兄様と一緒に早朝に出れば良かった)
ゲームをやり込んでいたお陰で、校内の地図だけは完璧に頭に入っている私は、講堂へと急いだ。
途中、数人の女生徒とすれ違った時、足に何かが引っ掛かる。
「あぁっっ!」
ズベッとすっ転んで、蹲った私の頭上から、嘲笑う様な令嬢達の声が降り注いだ。
「あら、こんな何も無い所で転ぶなんて、みっともない」
「仕方ありませんわよ。
きっと田舎貴族は王都の建物に馴染みがないのでしょう」
「こんな粗忽な女が、テオフィル殿下の婚約者候補だなんて、図々しいですわね」
他の女達もクスクスと笑っているが、この中の誰かが私の足を引っ掛けたのは明白だ。
立ち上がって振り返ると、その中心人物には見覚えがあった。
ドロテーア・レーヴェンタール。
テオやデニス兄様と同学年の公爵令嬢。
一年前まで領地に引き篭っていた私は、彼女と面識がある訳では無い。
では何故知っているのかと言うと・・・・・・、
彼女がこのゲームの登場人物だからである。
高位貴族の彼女の役どころは、勿論、テオの婚約者。
所謂、悪役令嬢だ。
誤解のない様に言っておくと、私は元々悪役令嬢擁護派である。
ヒロインになりきってゲームの世界に入り込んでいる時は、悪役の振る舞いに腹が立つ事もあった。
しかし、そもそも婚約者が自分を蔑ろにして別の女と仲良くなっているのだ。
やり過ぎるのはいけないけれど、嫌味を言ったり多少の嫌がらせくらいならば許してあげたいと思うじゃないか。
・・・・・・でもねぇ。
レーヴェンタール公爵令嬢のこの所業に関しては、如何な物か。
だって、彼女は現在テオの婚約者では無い。
候補ですら無い。
なのに、婚約者候補の私に嫌がらせをするなんて、本当に性格の悪い女でしか無い。
「まるで、ご自身の方が相応しいとでも言いたげですね」
苛立ちを抑えながら、口元に笑みを張り付けて、言い返す。
「田舎貴族の貴女なんかより、ドロテーア様の方が相応しいのは明白です!」
鼻息荒く言い返してくる取り巻きに、呆れてしまう。
さっきから、田舎貴族と馬鹿にするけど、辺境伯はただの辺境に住む貴族では無い。
国防の要所を代々護っている、由緒正しい家柄だ。
私はそれを誇りに思っているし、グルーバー家は陛下からの信頼だって厚い。
そんな事も理解していないなんて、本当に貴族令嬢としての教育を受けたのだろうか?
「この婚約は、テオフィル殿下御本人がお望みの事です。
ご意見があるのでしたら、テオフィル殿下に直接仰って?
まあ、一人の令嬢を集団で取り囲んで嫌がらせをする様な方を、彼が選ぶとは思えませんけれど」
「なんて生意気なっっ!」
レーヴェンタール公爵令嬢は、鬼の様な形相で、私に向かって手を振り上げた。
渾身の力を込めて振り下ろされた手を、私は余裕の表情でヒラリと躱す。
ご令嬢のヘナチョコビンタなんて、当たる訳ないじゃないか。
コッチは男児に混じって毎朝鍛錬してきたんだぞ。
「きゃあっ!!」
私に避けられた公爵令嬢は、勢い余って倒れ込んだ。
「ああっ!
ドロテーア様、大丈夫ですか!?」
膝をつく公爵令嬢に、慌てて駆け寄る取り巻き連中。
「あら、こんな何も無い所で転ぶなんて、みっともない」
私は微笑みながら、先程自分が言われたのと全く同じ台詞をお返しして、その場を後にした。
再び講堂への道を急ぎながら壁に掛けられた時計を見ると、既に式典開始の時刻は過ぎてしまっていた。
(もうっっ!
余計な時間を食ってしまったじゃないの!)
講堂の大きくて重い扉を、音を立てない様にゆっくりと細く開いた。
席次は自由なので、一番後ろの空席へと滑り込み、ホッと小さく息を吐く。
壇上では、校長による長~~い挨拶の真っ最中で、新入生達は皆、涙目で欠伸を噛み殺したり、ヒソヒソと話をしたり、うつらうつらと居眠りをしたりしていた。
「ウフフ。遅刻ですか?
実は私も、ちょっとだけ遅れちゃったんですよ」
「ええ、少々トラブルに巻き込まれまして・・・」
隣の席の女生徒がコッソリと話しかけてきたので、私も小声で答えながらそちらを向くと・・・・・・、
そこに座っていたのは、なんとヒロインちゃんだった。
自分の入学式に遅れそうになっている私は、学園の廊下を走る・・・・・・訳には行かないので、競歩の様に進んでいた。
学園にはデニス兄様と共に通学する予定なのだが、生徒会役員になっている彼は入学式の準備を手伝わなければならないらしく、今日だけは先に出発してしまった。
その後、まだ時間があるからと寛いでしまったせいで、到着が式典の開始時刻ギリギリになってしまったのだ。
(こんな事なら、兄様と一緒に早朝に出れば良かった)
ゲームをやり込んでいたお陰で、校内の地図だけは完璧に頭に入っている私は、講堂へと急いだ。
途中、数人の女生徒とすれ違った時、足に何かが引っ掛かる。
「あぁっっ!」
ズベッとすっ転んで、蹲った私の頭上から、嘲笑う様な令嬢達の声が降り注いだ。
「あら、こんな何も無い所で転ぶなんて、みっともない」
「仕方ありませんわよ。
きっと田舎貴族は王都の建物に馴染みがないのでしょう」
「こんな粗忽な女が、テオフィル殿下の婚約者候補だなんて、図々しいですわね」
他の女達もクスクスと笑っているが、この中の誰かが私の足を引っ掛けたのは明白だ。
立ち上がって振り返ると、その中心人物には見覚えがあった。
ドロテーア・レーヴェンタール。
テオやデニス兄様と同学年の公爵令嬢。
一年前まで領地に引き篭っていた私は、彼女と面識がある訳では無い。
では何故知っているのかと言うと・・・・・・、
彼女がこのゲームの登場人物だからである。
高位貴族の彼女の役どころは、勿論、テオの婚約者。
所謂、悪役令嬢だ。
誤解のない様に言っておくと、私は元々悪役令嬢擁護派である。
ヒロインになりきってゲームの世界に入り込んでいる時は、悪役の振る舞いに腹が立つ事もあった。
しかし、そもそも婚約者が自分を蔑ろにして別の女と仲良くなっているのだ。
やり過ぎるのはいけないけれど、嫌味を言ったり多少の嫌がらせくらいならば許してあげたいと思うじゃないか。
・・・・・・でもねぇ。
レーヴェンタール公爵令嬢のこの所業に関しては、如何な物か。
だって、彼女は現在テオの婚約者では無い。
候補ですら無い。
なのに、婚約者候補の私に嫌がらせをするなんて、本当に性格の悪い女でしか無い。
「まるで、ご自身の方が相応しいとでも言いたげですね」
苛立ちを抑えながら、口元に笑みを張り付けて、言い返す。
「田舎貴族の貴女なんかより、ドロテーア様の方が相応しいのは明白です!」
鼻息荒く言い返してくる取り巻きに、呆れてしまう。
さっきから、田舎貴族と馬鹿にするけど、辺境伯はただの辺境に住む貴族では無い。
国防の要所を代々護っている、由緒正しい家柄だ。
私はそれを誇りに思っているし、グルーバー家は陛下からの信頼だって厚い。
そんな事も理解していないなんて、本当に貴族令嬢としての教育を受けたのだろうか?
「この婚約は、テオフィル殿下御本人がお望みの事です。
ご意見があるのでしたら、テオフィル殿下に直接仰って?
まあ、一人の令嬢を集団で取り囲んで嫌がらせをする様な方を、彼が選ぶとは思えませんけれど」
「なんて生意気なっっ!」
レーヴェンタール公爵令嬢は、鬼の様な形相で、私に向かって手を振り上げた。
渾身の力を込めて振り下ろされた手を、私は余裕の表情でヒラリと躱す。
ご令嬢のヘナチョコビンタなんて、当たる訳ないじゃないか。
コッチは男児に混じって毎朝鍛錬してきたんだぞ。
「きゃあっ!!」
私に避けられた公爵令嬢は、勢い余って倒れ込んだ。
「ああっ!
ドロテーア様、大丈夫ですか!?」
膝をつく公爵令嬢に、慌てて駆け寄る取り巻き連中。
「あら、こんな何も無い所で転ぶなんて、みっともない」
私は微笑みながら、先程自分が言われたのと全く同じ台詞をお返しして、その場を後にした。
再び講堂への道を急ぎながら壁に掛けられた時計を見ると、既に式典開始の時刻は過ぎてしまっていた。
(もうっっ!
余計な時間を食ってしまったじゃないの!)
講堂の大きくて重い扉を、音を立てない様にゆっくりと細く開いた。
席次は自由なので、一番後ろの空席へと滑り込み、ホッと小さく息を吐く。
壇上では、校長による長~~い挨拶の真っ最中で、新入生達は皆、涙目で欠伸を噛み殺したり、ヒソヒソと話をしたり、うつらうつらと居眠りをしたりしていた。
「ウフフ。遅刻ですか?
実は私も、ちょっとだけ遅れちゃったんですよ」
「ええ、少々トラブルに巻き込まれまして・・・」
隣の席の女生徒がコッソリと話しかけてきたので、私も小声で答えながらそちらを向くと・・・・・・、
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