【完結】愛を信じないモブ令嬢は、すぐ死ぬ王子を護りたいけど溺愛だけはお断り!

miniko

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8 婚約者候補

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女性は、成人したら結婚して家を守る。
そんな文化が根強いこの国で、結婚願望が無いと言う女性は、きっと珍しい。

『結婚に夢を持てない』と言った私に、テオは少しだけ傷付いた様な顔をした。
彼と婚約したく無い私の言い訳だと思ったのかもしれない。
紛れも無い本心なのだけど。

「確かに、僕が王太子になれば、妻になる女性には大きな苦労をさせてしまうだろう。
エルザが尻込みするのも、当然だと思う。
僕は王族だから、国の為に生きなければならない。
だが、為政者としての自分を演じるのは、存外疲れる物だ。
だから、せめて伴侶だけは、自分の愛した人を選びたい。
側に居るだけで、心を癒してくれる様な人と添い遂げたいと願っている。
我儘かもしれないけど、これだけは譲れないんだ。
エルザ、僕は君が良い」

彼のその気持ちが愛なのか、刷り込みの様な物なのかは分からない。
どちらにしても、その気持ちは、きっと永遠に続くものでは無いのだろう。
もしも婚約者になったとしても、ヒロインと出逢った途端に捨てられてしまうのかもしれない。

だけど、彼の真剣な顔を見ていたら、冷たく断る気にはなれなかった。
だって、私もテオの事は大好きなのだ。
誰よりも幸せになって欲しいと思っている。
恋愛的な意味とは違うけれど。

「有難うございます。
では、一先ず婚約者候補にならせて頂く・・・というのは如何でしょうか?
もしも、お父様が許可すればですけれども・・・」

『候補』だなんて、微妙に逃げ道を残してしまったのは、やっぱりヒロインと結ばれるのがテオの幸せだっていう考えが捨て切れないから。

「グルーバー辺境伯には、もう手紙で許可を取ってある。
エルザが頷けばと言う条件で」

あ、もうとっくに外堀埋められてた。

「コレを受け取って」

テオが懐から取り出した指輪を、私の左手の薬指に嵌めた。

「え・・・っと、まだですよね?」

「ああ、嬉しいよ。
これで、エルザは僕の婚約者だね」

いや、『候補』を省略しないで下さい!!
そこ重要なので!
しかも指輪ピッタリサイズなんですけど!?

私は、テオの背後でお母様がニヤリと笑ったのを見逃さなかった。
お母様が指輪のサイズ教えたのか?

本当に外堀埋められてる!!

しかも、ウットリとした表情で私を見つめるテオの顔が少し近過ぎるような・・・。

「テオフィル殿下、妹から離れて下さい!!」

デニス兄様が私達二人をベリッと引き剥がして、私を抱き寄せた。

「デニス、エルザに縁談が来た事を知らせてくれたのは感謝するが、もう少し空気を読んでくれよ」

テオが、ムッとした表情を兄様に向けた。

「空気を読んだから、邪魔したんじゃないですか。
婚約者候補になったくらいで調子に乗らないでください。
エルザは、まだ渡しませんよ!」

「えっ?兄様がテオを呼んだのですか?」

「ああ、他国に嫁に出すくらいなら、王家に輿入れさせた方がまだマシだからな。
父上も兄上も、俺と同じ様な考えだよ」

優しく微笑んで私の頭を撫でる兄様。
世のご令嬢達の憧れの的である王子様との結婚を、『まだマシ』とか言わないで下さいよ。
何様ですか?
いつか刺されますよ。

「だが、意外だったな。
デニスは極度のシスコンだし、エルザを誰とも結婚させない気なのかと思っていたから、連絡を貰った時には驚いたよ。
まあ、いつかは奪うつもりだったけど」

テオは、私を抱き締めて頭を撫でる兄様に、呆れた視線を投げる。

「殿下は分かっていませんね。
俺に取ってはエルザの幸せが全てなんですよ。
だから、隣国へ渡るのがエルザの希望だったなら邪魔はしないで、俺の方が付いて行こうと思ってました。
俺は清く正しいシスコンですので」

「シスコンに清いも正しいもあるかっ!」

「ありますよ。
俺はエルザに邪な想いは持っていませんから。
×××したいとか、○○○したいとかは思ってません。
あくまでも兄妹なので」

「それを平気で口に出せる時点で既に病んでるっ!」

兄様が不埒な言葉を発し始めた時点で、テオがそっと私の耳を塞いだ。
だが、残念ながら、全ての音を防ぐ事は出来ず、何を言われたのかは大体聞こえてしまったのだけれど。

兄様は、シスコンに加えて、変態の称号も欲しいのかな?

だが、兄様がこんなにも残念な仕上がりになってしまったのは、私にも責任が有る様な無い様な・・・。
(認めたくは無いけど!)

よく考えれば、長年の悩みをヒロインに相談して、救われた事が切っ掛けで、ヤンデレ化する程の重い恋をしてしまったのだから、ヒロインよりも先に悩みの相談に乗ってしまった私に執着する事も予想は出来た筈なのだ。



そんな訳で、第一王子殿下の婚約者候補となった私は、来年のデニス兄様の学園入学に合わせて、一緒に王都のタウンハウスへ移り住む事が決まった。
少しでも早く王子妃教育を開始しなければならないのだ。

お父様は、私と離れて暮らすのが寂しいと泣いていた。
ユルゲン兄様も、やっと学園を卒業して、辺境に戻ったら私と一年は一緒に暮らせると言っていたのに、そのまま離れ離れになってしまう事を残念がった。
しかし、デニス兄様に「隣国へ留学させて、そのまま嫁に出すよりはマシでしょう」と説得されて、渋々納得した様だ。

そしてデニス兄様は、私との王都での暮らしが楽しみで仕方ないらしく、ウキウキとした様子で準備を進めている。
彼がいつまでも、清く正しく有り続けてくれる事を願うばかりだ。

くれぐれも、道を踏み外さないで頂きたい。
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