【完結】愛を信じないモブ令嬢は、すぐ死ぬ王子を護りたいけど溺愛だけはお断り!

miniko

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6 婚約と留学?

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その後、一年ほど我が家で療養生活を送ったテオは、すっかり食欲も出て、体力や筋力もある程度は付いた。


療養を終え、王都に帰る事になった時、彼は私の両手を強く握って涙ぐんだ。

「エルザ、必ず迎えに来るからね」

「は・・・い?迎え、ですか?」

(何だろう?
何か約束したっけ?)

考えている間に、デニス兄様が冷たい笑顔を浮かべながら、私とテオの間に割り込んで手を離させる。

「王子殿下と言えども、令嬢に気軽に触れるのはマナー違反ですからね」

兄様、瞳孔が開いてて怖いです。

「くっ・・・!このシスコンがっ!」

そして、テオも負けずに睨み返していて、二人の間に火花が散っている幻が見えた。

(この二人、たまに揉めてるんだよなぁ)

テオは兄様を押し退けて、再び私に向き合った。

「今度会う時までに、絶対に強くなるから。
エルザの事、守れる様に」

(きゃーっ!!
何それ、可愛い!!!)

私は、テオを思いっきり抱きしめて頭をグリグリと撫で繰り回したい衝動を、必死で我慢した。
それを実行したら、流石に引かれるだろう。

「有難うございます。
期待してますね」



こうして、私達はお別れした・・・・・・のだが。

テオは夏になると毎年、避暑と称して私達兄妹に会いに、辺境の我が領地に一ヶ月程滞在する様になった。
そんな時に限って、もうすっかり健康体なクセに「僕は病弱だから、夏バテしない様に、涼しくて空気の良い場所へ・・・」とか何とか言い出すらしく、侍従達も困り顔だ。
まあ、確かに王都に比べたら、気温は低いし空気も綺麗だけれど。
振り回される周囲が少し哀れになる。

でも、それを指摘すると、「エルザは僕に会いたく無いの?」と、ションボリ顔をされてしまうので、推しのこの顔に弱い私はつい口をつぐんでしまうのだ。

それに、毎年会う度に逞しく成長していくテオを見るのは、私にとっても楽しみの一つだった。

テオは、あの約束通り、剣術の腕も磨いていて、今ではかなり強くなった。
因みにデニス兄様も、あれからグングン強くなっていて、もう私ではどちらにも勝てなくなってしまった。
嬉しい様な、少し寂しい様な。
子供の成長を見るのって、こんな気持ちなのだろうか?
前世でも子供はいなかったので、わからないけど。



そんな中、いつもとは違う季節に、テオが慌てた様子で辺境にやって来た。

私が十三歳の秋だった。

この国では、王侯貴族の子女は十五歳から四年間、学園に通う事になっている。
デニス兄様と同じ年齢の彼は、来年春の入学に向けて、色々と準備に忙しいはずなのに、どうしたのだろう? 

・・・・・・と思っていたら、馬車を降りたテオは、いきなり険しい顔でグイグイと近寄ってくる。
昔と違って体が大きくなった彼にコレをされると威圧感が凄い。

「エルザ、婚約するって本当?」

「ああ、その事を心配してくれたのですか・・・」

先日、隣国の公爵家の嫡男の釣書が、私宛に届いた。
父と兄達は、可愛がっている私を国外に出すのを泣いて嫌がったが、母に宥められている。
返事はまだ検討中なのだが、隣国と我が国は友好的な関係が長年続いており、決して悪い話では無い。

ただ、婚約の打診と共に、隣国へ留学して文化を学んで欲しいとの誘いも受けている。
乙女ゲームにエルザが登場しないのは、きっとこの誘いを受けたせいなのだろう。
しかし、私は同じ学園でテオを見守りたいので、留学の方は断る予定だ。

「ソイツの事、好きなのか!?」

「好きも何も、まだお会いした事もありません。
顔合わせもこれからです」

「じゃあ、隣国で暮らしたい?」

「いえ。正直に言えば、家族と離れる事に不安はありますよ。
ですが、断る口実もありませんし・・・」

出来る事ならば、結婚自体をしたくない。
だが、貴族令嬢に生まれてしまった以上、そんな我儘は通らないだろうし、家族に迷惑はかけられない。

婚約に若干後ろ向きな私の意見を聞いたテオは、パッと顔を輝かせた。

「じゃあ、僕の婚約者になれば良い!」

「えぇっっ!?」
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