【完結】愛を信じないモブ令嬢は、すぐ死ぬ王子を護りたいけど溺愛だけはお断り!

miniko

文字の大きさ
上 下
1 / 33

1 私の立ち位置

しおりを挟む
ああ、神様、この世界に転生させてくださって感謝します!!
今迄、全く貴方様を信じていなくて申し訳ありませんでした。
これからは、敬虔な信者になると誓います。


「初めまして、僕はテオフィル。
君の名前を教えてくれないかな?」

今、私の目の前には、キラキラと輝きを放つ、推しの笑顔がある。
記憶の中の彼よりは、だいぶ幼い。
確か私の次兄と同じ年齢の筈だから、今は六歳か。
金髪碧眼の小さな王子様は、有り得ないほど可愛らしい。

尊い。
尊過ぎる。
彼が私と同じ時を生きているなんて、夢のようだ。
もしも夢なら醒めないで欲しい。

「聞いてる?」

その推しが、キョトンとした表情で首を傾げた。

「も、申し訳ありません、テオフィル殿下!
私はグルーバー辺境伯の長女、エルザと申します」

うっかり自分の世界にトリップしていた私は、慌てて淑女の礼をとる。

「エルザと呼んでも?」

「はい。勿論です」

名前で呼んで頂けるなんて、ご褒美が過ぎる!!
光栄過ぎて鼻血が出そう!

「では、僕の事はテオと呼んで。敬称は無しで」

なんと、更なるご褒美!!
私、そんなに前世で徳を積んだ覚えはございませんが・・・・・・。

「いえ、それは流石に、恐れ多く・・・」

「エルザは僕の友達になってくれないの?」

なんですか、そのションボリ顔はっ!?
萌え殺す気ですか?

「私もお友達になりたいです。テオ」

私の言葉を聞いたテオは、頬を染めて嬉しそうに笑った。



私はグルーバー辺境伯家の末っ子長女、エルザ・グルーバー、今年で五歳。
優しいお母様と、脳筋のお父様。
同じく脳筋の長兄であるユルゲン兄様、十歳。
次兄のデニス兄様、六歳、の五人家族だ。

この世界が乙女ゲームの世界だと気付いたのは、一週間程前の事だった。
転生物の小説によくある様に、高熱を出して寝込んだとか、頭を打ったとか、そんなドラマチックな切っ掛けがあった訳では無い。
ただ、夕食の席で、お父様が私の推しの名前を出したせいで、急激に前世を思い出したのだ。



「一週間後から、第一王子のテオフィル殿下が、療養の為、ウチに暫くの間滞在する事が決まった。
皆んな、粗相の無いように」

(テオフィル、殿下・・・?
なんだろう、何か引っかかる・・・)

「ああぁぁっっ!!」

「急にどうした?エルザ」

ユルゲン兄様が訝しげに私を見る。

「い、いえ、なんでもありません。
少し考え事をしていました。
大きな声を出して、申し訳ありません」

(ゲームと同じだ!!)

そう気付い途端に、前世の記憶が映画のダイジェスト版を見るように、断片的に頭の中に蘇ってきた。
その中でも、一番印象深かったのは、前世でどハマりしていた、乙女ゲーム。
・・・・・・そう、賢い読者様はもうお気付きだろう。
その乙女ゲームとは、私が今生きている、この世界の事だ。

間違いない。
テオフィルという、第一王子の名前。
この国の国名も、ゲームの世界と一致する。
そして、私の二番目の兄デニス・グルーバーは、ゲームの中に登場した攻略対象者で王子の側近候補の男と、名前も出自も容姿も同じである。
これだけ揃えば、偶然とは思えない。


そして、この世界における私の立ち位置は、ヒロインでも悪役令嬢でもなく・・・・・・

モブもモブ!
超どモブである。
いや、寧ろモブですら無いかもしれない。
『デニスには、一つ年下の妹がいるみたいだよ~』と、仄めかされるのみで、名前すら出てこない存在。
それが私。
トホホ・・・。


マジか~、そうか~・・・・・・。
折角大好きなゲームの世界に転生したのに、物語には全く関われない立ち位置なのね。
無念・・・・・・!
だけど、逆に言えば、断罪とかを気にする必要は無いって事だ。
うん。
愛憎渦巻くゲームのストーリーに巻き込まれるよりも、気楽で良いかもしれない。

それに私は・・・・・・前世で負ったトラウマから、恋愛をするのが少し怖いのだ。
だから寧ろ、どモブくらいが丁度良いのかもしれない。

ならば、傍観者として登場人物達の恋愛模様を、間近で思う存分楽しませて貰う事にしようじゃないか。
特に最推しであるテオフィル殿下の幸せを、是非とも見届けたい!!

目指すは、テオフィル殿下とヒロインのハッピーエンドをこの目で見る事だ!

出来れば特等席で!
最前列で!
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

無事にバッドエンドは回避できたので、これからは自由に楽しく生きていきます。

木山楽斗
恋愛
悪役令嬢ラナトゥーリ・ウェルリグルに転生した私は、無事にゲームのエンディングである魔法学校の卒業式の日を迎えていた。 本来であれば、ラナトゥーリはこの時点で断罪されており、良くて国外追放になっているのだが、私は大人しく生活を送ったおかげでそれを回避することができていた。 しかしながら、思い返してみると私の今までの人生というものは、それ程面白いものではなかったように感じられる。 特に友達も作らず勉強ばかりしてきたこの人生は、悪いとは言えないが少々彩りに欠けているような気がしたのだ。 せっかく掴んだ二度目の人生を、このまま終わらせていいはずはない。 そう思った私は、これからの人生を楽しいものにすることを決意した。 幸いにも、私はそれ程貴族としてのしがらみに縛られている訳でもない。多少のわがままも許してもらえるはずだ。 こうして私は、改めてゲームの世界で新たな人生を送る決意をするのだった。 ※一部キャラクターの名前を変更しました。(リウェルド→リベルト)

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します

天宮有
恋愛
 私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。  その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。  シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。  その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。  それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。  私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

俺の婚約者が可愛すぎる件について ~第三王子は今日も、愚かな自分を殴りたい~

salt
恋愛
ぐらりと視界が揺れて、トラヴィス・リオブライド・ランフォールドは頭を抱えた。 刹那、脳髄が弾けるような感覚が全身を襲い、何かを思い出したようなそんな錯覚に陥ったトラヴィスの目の前にいたのは婚約したばかりの婚約者、フェリコット=ルルーシェ・フォルケイン公爵令嬢だった。 「トラ……ヴィス、でんか…っ…」 と、名前を呼んでくれた直後、狂ったように泣きだしたフェリコットはどうやら時戻りの記憶があるようで……? ライバルは婚約者を傷つけまくった時戻り前の俺(八つ裂きにしたい)という話。 或いは性根がダメな奴は何度繰り返してもダメという真理。 元サヤに見せかけた何か。 *ヒロインターンは鬱展開ですので注意。 *pixiv・なろうにも掲載しています

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

処理中です...