【完結】私を嫌ってたハズの義弟が、突然シスコンになったんですが!?

miniko

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7 容疑者の来訪

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《side:レイモンド》


姉上の部屋を出た僕は、大きな溜息を吐いた。

───予想通り、事件に興味を持たれてしまったか。

本当ならば、義姉を出来るだけ危険から遠ざけて置きたいのだ。
事件の報告も、全てが解決してからと考えていた。

しかし、彼女が黙って解決を待っている様な性格では無いと言う事も分かっていた。
危険な事は周囲に任せて、安全な箱庭の中でのんびり過ごして欲しいのに、じっとしていてくれない。
そんな無鉄砲な所も、僕にとっては可愛いと思えてしまうのだから、困った物である。

だが、実行犯にされた侍女については、深く追及されなかった事に、内心ホッとしていた。
実の所、侍女が実行犯だと言う根拠ならあるのだが・・・。

侍女が遺体で発見された事は、姉上にはまだ伏せておきたい。

当日お茶を用意した殿下付きの侍女は、数日前、国境付近の川の下流で、河原に打ち上げられている所を発見された。
妊娠初期だった様だが、お腹の子供の父親は不明。

頭部に外傷があったが、殴られて出来た傷か、川底の石にぶつけたのか調査中である。
なので、事故か自殺か事件かは、まだ特定されていない。
しかし、姉上の事件に近い人物がタイミングよく死亡したのだから、無関係な訳は無いだろう。



「レイモンド様」

いつも冷静な執事が、若干の困惑を滲ませて僕を呼び止めた。

「デズモンド公爵家のオスカー様から、本日午後にお嬢様のお見舞いに伺いたいとの先触れが届きましたが、いかが致しましょう?」

「はっ?」

何故、オスカー・デズモンドが、わざわざ姉上の見舞いになど来るのか?

今まで対外的には、姉上は疲れから来る体調不良で伏せっているという事になっていたが、原因不明の昏睡状態が続いていた事を王家には明かして、その健康不安を理由に婚約解消を願い出ている。
このタイミングで来るという事は、その件に関する話なのか。
だとしたら、宰相か王太子の指示で動いているのだろうけれど。

もしくは、デズモンドも事件に関係していて、こちらに探りを入れようとしているのか。

奴がどんな目的で見舞いに来るのかは気になるが、姉上を会わせる訳にはいかない。

「断っておけ」
「勝手に断らないでよ」

背後から不機嫌そうな声がして、慌てて振り返る。

「姉上、ベッドから出てはダメじゃ無いですか」

「もう。大丈夫だってば。
邸の中くらい自由にしても良いでしょう?
そろそろ少しづつ動かさなければ、体がおかしくなっちゃうわ。
それより、私への面会の要請を、勝手に断らないでちょうだい」

「ですが、あの男は容疑者の一人ですよ?
姉上が会うのは危険です」

「容疑者だからこそ、話を聞きたいじゃない。
心配しなくても、一人で会ったりしないわ。
護衛も同席させるし、レイも立ち会ってくれるでしょう?
レイが私を護ってくれるのでしょう?」

上目遣いに僕を見上げる姿に、心臓が鷲掴みにされる。
クソッ!可愛いなっ!(チョロい)

「・・・わかりました」




「急に押し掛けてしまい、申し訳ありません。
しかし、思ったよりもお元気そうで安心しました」

僕達の正面のソファーに怜悧で美しい青年が座った。
彼は眼鏡の奥の瞳をスッと細めて、口元に笑みを浮かべる。
相変わらず、何を考えているかよく分からない男だ。

「わざわざお見舞いに来て頂き、有難うございます。
ご心配をお掛けして申し訳ありません」

暫く学園内の話や最近の気候の話など、当たり障りの無い会話が続き、コイツ何しに来たんだろうと思い始めた頃、デズモンドは漸く本題に入った。

「ところで、キャサリン嬢は、クリストファー殿下との婚約解消を打診していらっしゃるとか」

一瞬だけ姉上の眉がピクッと動いたが、直ぐに動揺を隠すように淑女の笑みを湛える。
王太子に頼まれて考え直す様に説得する為に来たのか、それとも円満に婚約解消を進める為に来たのか・・・。

「さあ?
婚約の事は父に全て任せておりますので、私は何も存じ上げません。
貴方のお父上である、宰相閣下にお聞きになられた方が宜しいのでは?」

「いえ、それが、この件に関しては、メルヴィル公爵と陛下が直接交渉なさっている様で、父の耳にも詳しい話はまだ入っていないのですよ。
ご本人が進捗をご存知ないのなら、まだ話し合いはあまり進んでいないのかもしれないですね。
残念です。
もし婚約解消なさるなら、次の婚約者に立候補しようと思って来たのですが」

「「は?」」

何食わぬ顔で紅茶に口を付ける男が発した言葉の意図を理解しかねる。
一拍遅れて、じわじわと胸に不快感が広がった。
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