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5 療養生活
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小鳥の囀りが聞こえる、爽やかな朝。
スッキリと目覚めた私は、少し体を起こして、枕を背に寄りかかる。
未だにベッドから出る許可が降りないので、そのまま何もする事が出来ず、ただ無為に時間を過ごしてばかりだ。
いい加減退屈だし、色々と気になる事もあるので、そろそろ自由に動きたい。
「姉上、朝食をお持ちしました」
満面の笑みで、料理が乗せられたトレーを運んで来るレイモンドを、軽く睨む。
トレーの上には、オムレツ、サラダ、フルーツ、カボチャのポタージュ。
好物ばかりだが、不満なのはメニューでは無い。
「ねぇ、レイモンド。
もう体調に問題は無いのだから、朝食くらい、自分でダイニングに食べに行けるわよ?
それに、次期公爵自ら食事を運んで来るなんて・・・」
「何を言っているのですか。
まだ目覚めてから2日しか経っていないのですよ?
起きて歩き回るなど、許可出来る訳がない。
それにこれは、僕が好きでやっている事です。
姉上のお世話を使用人に譲る気などありませんから」
有無を言わせぬ笑顔でベッドサイドの椅子に陣取るレイモンド。
何故こんなにも過保護なのか。
この状況に慣れなくて、今もまだ戸惑っている。
彼は私が嫌いな訳では無かったのだろうか?
いくら昏睡状態が長く続いた私を心配したからと言って、それだけでは彼の態度の説明は付かない気がする。
「そうは言っても、私もレイモンドも、いつまでも学園を休む訳にはいかないでしょう?
私が意識を失っている間も、レイモンドはお休みしていたのだから」
「レイって呼んでください」
「は?」
「だから、レイって・・・」
「レイ。学園に行かなくちゃ」
このままでは話が進まないので、希望通り愛称で呼ぶことにした。
「学園の事務に確認しましたが、僕と姉上の成績ならば、半年位休んでも問題ないと言われました。
姉上は何も心配しなくて良いのです。
体調が良いのなら、僕の話し相手にでもなって下さい」
何を言っても無駄だと悟り、小さく溜息をついて、朝食のトレーを受け取る。
「・・・・・・じゃあ、事件の話をして頂戴」
「僕が必ず犯人に生き地獄を味わわせて差し上げますので、姉上は何も心配しないで良いですよ」
爽やかな笑顔で、魔王みたいな事を言い出した。
生き地獄って何だ!?
これが本当に、あの可愛かったレイモンドなのだろうか?
「むしろ心配しか無いけど・・・。
色々調べているって事よね。
私にも教えてよ」
ふわふわのオムレツを口に運びながら、今一番の関心事についてしつこく質問すると、レイモンドは僅かに顔を顰めた。
自分で話し相手になれって言った癖に。
「・・・姉上に報告出来る様な事は、まだ何も」
「そうなの?
毒の種類はまだ特定されていないの?
放課後、私とお茶を飲んだ四人に的を絞っているのでしょう?
動機もよく分からないわよね?
今は何を調べているの?」
矢継ぎ早の質問に、レイモンドは苦い表情になる。
私が事件に首を突っ込むのを快く思っていないのだろう。
しかし、自分の命が狙われたのかもしれないのだから、じっとしているのも落ち着かない。
「義父上が、クリストファー殿下の金の動きを調べてくれています」
「クリストファー殿下が計画した事なのかしら?
何だかピンと来ないのだけど」
「姉上は、あのアホ王太子を庇うのですか?
まさか、あの男と婚約を継続したい訳では無いですよね?」
レイモンドが不満そうに目を細める。
「いいえ。出来れば婚約は解消したいし、庇うつもりも無いわ。
でも、クリストファー殿下は、アシュトン嬢を側妃か愛妾にするって言ったのよ?
という事は、正妃には私を据えたかったのだわ。
その方が彼にとって都合が良いから。
もしも、私が彼女を側妃にするのを大反対したならまだ分かるけど、私は何も反対意見を言っていないのだし、殺す動機が無いでしょ?」
私にだって、幼い頃は、それなりに殿下に対する気持ちがあった。
それが恋心だったか、親愛や敬愛の様な物だったかは定かでは無いが、彼を支え、彼と共に国を良くしていくのだと、意気込んでいた頃も確かにあったのだ。
しかし、私の殿下に対する愛情など、とうの昔に枯れてしまっている。
だから側妃や愛妾を持つ事を、反対するつもりなど毛頭無かった。
彼女の淑女教育を押し付けられるのだけはゴメンだが。
寧ろ、彼女が正妃になってくれて、私が解放されるのであれば万々歳だ。
しかし、殿下は馬鹿な様に見えて、意外と計算高い。
公爵家の後ろ盾や、私の執務能力を手放すとは思えない。
ならば、私が死ねば、殿下は逆に困るのでは無いだろうか?
「・・・・・・なるほど。
クソ王太子は、クズではあるけれど、あの馬鹿女では正妃には成れないと理解していたのですね。
最低限の知能は持っているみたいですね」
先程から一国の王太子に対して、『アホ』『クソ』『クズ』『最低限の知能』と散々な言い様に、少し笑ってしまった。
「不敬罪になるから、人前では気を付けなさいよ。
ところで、どうやって毒を紅茶に入れたのかしら?」
「まだ分かりませんが、侍女が協力したのではないかと」
「根拠があるの?」
「いえ。今の所、状況的に怪しいと言うだけです」
何気ない風を装ったレイモンドを、ジッと見る。
隠し事をされていると直感で分かった。
「ふ~ん。・・・そう。
何か分かったら、私にも教えてよ。
当事者なんだから」
深く追及されなかった事に、レイモンドはあからさまにホッとした表情を浮かべた。
まあ良いわ。
その内、聞き出すから。
スッキリと目覚めた私は、少し体を起こして、枕を背に寄りかかる。
未だにベッドから出る許可が降りないので、そのまま何もする事が出来ず、ただ無為に時間を過ごしてばかりだ。
いい加減退屈だし、色々と気になる事もあるので、そろそろ自由に動きたい。
「姉上、朝食をお持ちしました」
満面の笑みで、料理が乗せられたトレーを運んで来るレイモンドを、軽く睨む。
トレーの上には、オムレツ、サラダ、フルーツ、カボチャのポタージュ。
好物ばかりだが、不満なのはメニューでは無い。
「ねぇ、レイモンド。
もう体調に問題は無いのだから、朝食くらい、自分でダイニングに食べに行けるわよ?
それに、次期公爵自ら食事を運んで来るなんて・・・」
「何を言っているのですか。
まだ目覚めてから2日しか経っていないのですよ?
起きて歩き回るなど、許可出来る訳がない。
それにこれは、僕が好きでやっている事です。
姉上のお世話を使用人に譲る気などありませんから」
有無を言わせぬ笑顔でベッドサイドの椅子に陣取るレイモンド。
何故こんなにも過保護なのか。
この状況に慣れなくて、今もまだ戸惑っている。
彼は私が嫌いな訳では無かったのだろうか?
いくら昏睡状態が長く続いた私を心配したからと言って、それだけでは彼の態度の説明は付かない気がする。
「そうは言っても、私もレイモンドも、いつまでも学園を休む訳にはいかないでしょう?
私が意識を失っている間も、レイモンドはお休みしていたのだから」
「レイって呼んでください」
「は?」
「だから、レイって・・・」
「レイ。学園に行かなくちゃ」
このままでは話が進まないので、希望通り愛称で呼ぶことにした。
「学園の事務に確認しましたが、僕と姉上の成績ならば、半年位休んでも問題ないと言われました。
姉上は何も心配しなくて良いのです。
体調が良いのなら、僕の話し相手にでもなって下さい」
何を言っても無駄だと悟り、小さく溜息をついて、朝食のトレーを受け取る。
「・・・・・・じゃあ、事件の話をして頂戴」
「僕が必ず犯人に生き地獄を味わわせて差し上げますので、姉上は何も心配しないで良いですよ」
爽やかな笑顔で、魔王みたいな事を言い出した。
生き地獄って何だ!?
これが本当に、あの可愛かったレイモンドなのだろうか?
「むしろ心配しか無いけど・・・。
色々調べているって事よね。
私にも教えてよ」
ふわふわのオムレツを口に運びながら、今一番の関心事についてしつこく質問すると、レイモンドは僅かに顔を顰めた。
自分で話し相手になれって言った癖に。
「・・・姉上に報告出来る様な事は、まだ何も」
「そうなの?
毒の種類はまだ特定されていないの?
放課後、私とお茶を飲んだ四人に的を絞っているのでしょう?
動機もよく分からないわよね?
今は何を調べているの?」
矢継ぎ早の質問に、レイモンドは苦い表情になる。
私が事件に首を突っ込むのを快く思っていないのだろう。
しかし、自分の命が狙われたのかもしれないのだから、じっとしているのも落ち着かない。
「義父上が、クリストファー殿下の金の動きを調べてくれています」
「クリストファー殿下が計画した事なのかしら?
何だかピンと来ないのだけど」
「姉上は、あのアホ王太子を庇うのですか?
まさか、あの男と婚約を継続したい訳では無いですよね?」
レイモンドが不満そうに目を細める。
「いいえ。出来れば婚約は解消したいし、庇うつもりも無いわ。
でも、クリストファー殿下は、アシュトン嬢を側妃か愛妾にするって言ったのよ?
という事は、正妃には私を据えたかったのだわ。
その方が彼にとって都合が良いから。
もしも、私が彼女を側妃にするのを大反対したならまだ分かるけど、私は何も反対意見を言っていないのだし、殺す動機が無いでしょ?」
私にだって、幼い頃は、それなりに殿下に対する気持ちがあった。
それが恋心だったか、親愛や敬愛の様な物だったかは定かでは無いが、彼を支え、彼と共に国を良くしていくのだと、意気込んでいた頃も確かにあったのだ。
しかし、私の殿下に対する愛情など、とうの昔に枯れてしまっている。
だから側妃や愛妾を持つ事を、反対するつもりなど毛頭無かった。
彼女の淑女教育を押し付けられるのだけはゴメンだが。
寧ろ、彼女が正妃になってくれて、私が解放されるのであれば万々歳だ。
しかし、殿下は馬鹿な様に見えて、意外と計算高い。
公爵家の後ろ盾や、私の執務能力を手放すとは思えない。
ならば、私が死ねば、殿下は逆に困るのでは無いだろうか?
「・・・・・・なるほど。
クソ王太子は、クズではあるけれど、あの馬鹿女では正妃には成れないと理解していたのですね。
最低限の知能は持っているみたいですね」
先程から一国の王太子に対して、『アホ』『クソ』『クズ』『最低限の知能』と散々な言い様に、少し笑ってしまった。
「不敬罪になるから、人前では気を付けなさいよ。
ところで、どうやって毒を紅茶に入れたのかしら?」
「まだ分かりませんが、侍女が協力したのではないかと」
「根拠があるの?」
「いえ。今の所、状況的に怪しいと言うだけです」
何気ない風を装ったレイモンドを、ジッと見る。
隠し事をされていると直感で分かった。
「ふ~ん。・・・そう。
何か分かったら、私にも教えてよ。
当事者なんだから」
深く追及されなかった事に、レイモンドはあからさまにホッとした表情を浮かべた。
まあ良いわ。
その内、聞き出すから。
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