【完結】私を嫌ってたハズの義弟が、突然シスコンになったんですが!?

miniko

文字の大きさ
上 下
3 / 24

3 意識を失った日

しおりを挟む
夕方になって、城に出仕していたお父様と、心労が祟って自室で寝込んでいたお母様が、私の寝室に様子を見に来てくれた。

「キャシー、目が覚めてくれて本当に良かった。
今日は側に居てやれなくて済まなかったね」

「いいえ、お父様。
一週間もお仕事をお休み出来ない事くらい、私でも分かりますわ」

お父様は公爵領の統治だけでなく、城で財務関連の仕事もしており、そうそう休む事が出来ないのは分かっていた。

両親はたった一週間で随分と窶れていて、かなり心配を掛けてしまったのだと実感する。



「姉上、倒れた時の事は覚えていますか?」

「うーん・・・覚えてはいるけど、特に変わった事はなかったと思うの。
学園から邸に帰って来て、制服から着替えて、侍女にお茶を入れてもらっている間に意識が無くなったのよ」

両親と義弟は、視線を交わして頷き合う。

「うん。侍女の証言と同じだな。
・・・・・・お茶を飲む前に倒れたんだね?」

お父様に、真剣な表情で念を押される。

「ええ。それは間違いありません。
そこに注目すると言う事は、毒物が疑われているのですか?」

「姉上が眠っている間に、血液を採取して、鑑定に回しました。
その結果、毒物らしき成分が微量に検出されたのですが、国内で使用された事が無い毒だったみたいで、種類の特定までは出来なかったのです。
分かっているのは、植物性の毒である事くらいで」

それを聞いて、本当に毒を盛られていたのかと、背筋が寒くなる。
運良く死なずに済んだけれど、犯人が見つからなければ、もしかしたらまた命を狙われるかもしれないと言う事なのだ。

「遅効性の毒であれば、帰宅する前に口にしたのかもしれないな。
学園ではどの様に過ごしていたのだ?」

「放課後は、クリストファー殿下達と談話室におりました」

「・・・・・・達?」

室内の空気が急に冷んやりする。
三人は、最近の社交界での噂から、何か良くない想像をしているみたいで・・・。
そしてその想像は、おそらく正解である。

(これ、言って良いのだろうか?)

迷いながらも私は口を開いた。

「デズモンド様と、マクレガー様と、
・・・・・・アシュトン嬢ですわ」

オスカー・デズモンドは、宰相の子息。
ジェイク・マクレガーは、騎士団長の子息。
どちらも、クリストファー殿下の側近候補である。

そして、エミリー・アシュトン男爵令嬢は、クリストファー殿下の恋人と言われている女性だ。

「・・・・・・ほぉ」

お父様が冷たい微笑みを浮かべながら、目を細めた。
レイモンドとお母様も、その瞳に静かに怒りを湛えている。

皆さん、怖いです。

「キャシー、それはどの様な会談だったのかな?」




私は、あの不条理な会話を思い返した。

「キャサリン、私はエミリーを側妃として迎えたいと思っている。
そこで君に、エミリーの淑女教育を手伝って貰いたい」

クリストファー殿下は、言うに事欠いて、私にそんな命令をしたのだ。

「クリス様ぁ、私、側妃なんて嫌です。
王妃様になりたいのですぅ」

「いや、流石にそれは難しい。
側妃ならば、高位貴族の養子になれば、なんとかなるが。
それだって、君が側妃としてのマナーを覚えられなければ無理だよ。
その場合は愛妾になら出来るが・・・」

「そんな、酷い!!」

アシュトン嬢は、何故だかこちらを睨む。

───いや、酷いと言いたいのはこっちだ。

この国では、国王は側妃を娶る事が許されているが、それは正妃が二人以上の男児を産めないと判断された場合である。
実際に現在の国王陛下は側妃を一人娶っているが、それは王妃様がクリストファー殿下を産んだ後、第二子になかなか恵まれなかったせいなのだ。
結婚もまだしていない王太子が側妃を選定するなんて、前代未聞である。
しかもその教育を婚約者にさせようと言うのだから、始末に負えない。

「ご本人に学ぶ気が無いのであれば、私に出来る事はありません」

大体、こんな非常識な令嬢に淑女教育をしろとは、無理難題も甚だしい。
その辺の猿にでも教える方がマシである。
王族の名前を婚約者の目の前で愛称で呼ぶ、その図々しさだけは凄いと思うが・・・。


結局の所、アシュトン嬢がゴネまくったので、その話は保留になった。




私はその顛末を家族に話した。
3人の怒りのオーラが凄い。
部屋の温度がどんどん下がっていく様な錯覚に陥って、思わず身震いした。

「姉上は、その時何か口に入れましたか?」

「流石にそのメンバーで飲食するのは怖かったけど、口を付けないのも失礼になるので、紅茶に少しだけ口を付けたわ」

「それが怪しいですね」

紅茶に毒を入れたと言うの?
誰が、何の為に?
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

【完結】人生で一番幸せになる日 ~『災い』だと虐げられた少女は、嫁ぎ先で冷血公爵様から溺愛されて強くなる~

八重
恋愛
【全32話+番外編】 「過去を、後ろを見るのはやめます。今を、そして私を大切に思ってくださっている皆さんのことを思いたい!」  伯爵家の長女シャルロッテ・ヴェーデルは、「生まれると災いをもたらす」と一族で信じられている『金色の目』を持つ少女。生まれたその日から、屋敷には入れてもらえず、父、母、妹にも虐げられて、一人ボロボロの「離れ」で暮らす。  ある日、シャルロッテに『冷血公爵』として知られるエルヴィン・アイヒベルク公爵から、なぜか婚約の申し込みがくる。家族は「災い」であるシャルロッテを追い出すのにちょうどいい口実ができたと、彼女を18歳の誕生日に嫁がせた。  しかし、『冷血公爵』とは裏腹なエルヴィンの優しく愛情深い素顔と婚約の理由を知り、シャルロッテは彼に恩返しするため努力していく。  そして、一族の中で信じられている『金色の目』の話には、実は続きがあって……。  マナーも愛も知らないシャルロッテが「夫のために役に立ちたい!」と努力を重ねて、幸せを掴むお話。 ※引き下げにより、書籍版1、2巻の内容を一部改稿して投稿しております

地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

僕を拾ってくれた義姉さんが王太子に婚約破棄を言い渡されています、呪っていいですよね。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に投稿しています。

喋ることができなくなった行き遅れ令嬢ですが、幸せです。

加藤ラスク
恋愛
セシル = マクラグレンは昔とある事件のせいで喋ることができなくなっていた。今は王室内事務局で働いており、真面目で誠実だと評判だ。しかし後輩のラーラからは、行き遅れ令嬢などと嫌味を言われる日々。 そんなセシルの密かな喜びは、今大人気のイケメン騎士団長クレイグ = エヴェレストに会えること。クレイグはなぜか毎日事務局に顔を出し、要件がある時は必ずセシルを指名していた。そんなある日、重要な書類が紛失する事件が起きて……

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました

青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。 それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。

婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません

天宮有
恋愛
子爵令嬢の私カルラは、妹のミーファに婚約者ザノークを奪われてしまう。 ミーファは全てカルラが悪いと言い出し、束縛侯爵で有名なリックと婚約させたいようだ。 屋敷を追い出されそうになって、私がいなければ領地が大変なことになると説明する。 家族は信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。

処理中です...