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17 またまた真っ暗森
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私はアルバートに真っ暗森の魔女さんに聞いたペンダントの話をした。
そして今、私達は、黒猫亭の休憩室のソファーにテーブルを挟んで向かい合って座っている。
そのテーブルの上には、例のペンダント。
「じゃあ、やってみるわね」
「ああ」
神妙な顔で頷くアルバート。
私はペンダントを手の平に乗せると、なけなしの魔力を放出した。
その瞬間ペンダントが淡く光り、やがてその光が広がって、私の体を包み込んだ。
(発動した!?何が起こるの?)
だが、その光はあっという間に消えてしまう。
「ん?何も起きない?」
アルバートは首を傾げるが、私は自分の体の変化に驚愕していた。
「もしかして、私───」
いつもの様に黒ウサギを追いかけて、青い屋根の小さな家の玄関前に立つと、勢い良く扉が開く。
「また来たか、小娘っ!」
面倒臭そうに吐き捨てた魔女さんは、私の異変に気付いたのか、スッと目を細めた。
「おや、封印が解けたようだね」
「やっぱり?
もしかして私、今かなりの魔力を持ってますよね!?」
「まあ、そこそこ位だね。
多分、アンタの親は、アンタが他人に利用される事を懸念して、アンタの魔力をペンダントに封印したんだろう。
アンタが大人になって、自分の身を守れるようになってから、封印を解くつもりで」
封印後に私の中に残った微量の魔力と満月に力を借りた魔力を足してペンダントに流すと、ギリギリ封印が解けるような仕組みになっていたのだ。
「で?今日は何しに来たんだい?」
溜息混じりの質問に、私は勢い良く頭を下げた。
「私に魔術を教えて下さいっっ!!」
「断るっっ!!」
食い気味に断られた。
「なんでアタシがそんな面倒事を引き受けなきゃならないんだいっっ!?
そんなの王宮魔術師にでも頼みな。
最近は魔術師不足なんだから、そんだけ魔力を持ってりゃ弟子として歓迎されるよ」
「だって、魔力持ちは搾取されるって言ってたの、魔女さんじゃないですか」
「ぐ……っ!」
魔女さんは、小さく呻いた。
余計な事を言ってしまったと気付いたらしい。
「勿論、タダでとは言いませんよ。
今日もアクセサリーを持って来ました」
「…………」
魔女さんは腕を組んだまま無反応。
「それとー……、魔女さん、ミートパイはお好きですか?
丁度もう直ぐお昼の時間じゃないですか。
なんでもお見通しの魔女さんは、もうご存知かも知れないですけど、私今食堂でアルバイトをしていまして。
ミートパイ、ウチのお店の人気メニューなんですよ。
サックサクのパイ生地と、ジューシーなお肉のハーモニーは最高ですよー。
食べなきゃ損ですよー」
私の誘い文句に魔女さんはゴクリと唾を呑み込んだ。
───よし、もう一息!
「コールスローサラダと、デザートのパンプキンプディング!
フルーツだってありますよ?」
私が二人分の昼食が入ったバスケットを差し出した途端、魔女さんのお腹がグゥッと大きく鳴った。
「しっ、仕方ないねっっ!
先ずは昼食を食べてからだよっ」
少し顔を赤らめた魔女さんは、フイッとそっぽを向きながら言った。
私は魔術師になりたい訳では無いので、教えて貰う魔術は必要最小限だ。
自分の魔力を周囲に隠す為の魔力のコントロール方法と、いざと言う時の防御の魔術。
本当は治癒魔術も出来る様になったら、アルバートが仕事で怪我をしても治してあげられるかも……
とか、思っていたのだが、魔女さんによると、私の魔力量は元に比べれば大幅に増えたとはいえ、王宮魔術師になれるかどうかギリギリくらいの量らしく、治癒魔術は使えないとの事。
私はその日から、黒猫亭の定休日には真っ暗森に通い、半年間掛けて魔女さんに習いながら魔術を習得した。
そして今、私達は、黒猫亭の休憩室のソファーにテーブルを挟んで向かい合って座っている。
そのテーブルの上には、例のペンダント。
「じゃあ、やってみるわね」
「ああ」
神妙な顔で頷くアルバート。
私はペンダントを手の平に乗せると、なけなしの魔力を放出した。
その瞬間ペンダントが淡く光り、やがてその光が広がって、私の体を包み込んだ。
(発動した!?何が起こるの?)
だが、その光はあっという間に消えてしまう。
「ん?何も起きない?」
アルバートは首を傾げるが、私は自分の体の変化に驚愕していた。
「もしかして、私───」
いつもの様に黒ウサギを追いかけて、青い屋根の小さな家の玄関前に立つと、勢い良く扉が開く。
「また来たか、小娘っ!」
面倒臭そうに吐き捨てた魔女さんは、私の異変に気付いたのか、スッと目を細めた。
「おや、封印が解けたようだね」
「やっぱり?
もしかして私、今かなりの魔力を持ってますよね!?」
「まあ、そこそこ位だね。
多分、アンタの親は、アンタが他人に利用される事を懸念して、アンタの魔力をペンダントに封印したんだろう。
アンタが大人になって、自分の身を守れるようになってから、封印を解くつもりで」
封印後に私の中に残った微量の魔力と満月に力を借りた魔力を足してペンダントに流すと、ギリギリ封印が解けるような仕組みになっていたのだ。
「で?今日は何しに来たんだい?」
溜息混じりの質問に、私は勢い良く頭を下げた。
「私に魔術を教えて下さいっっ!!」
「断るっっ!!」
食い気味に断られた。
「なんでアタシがそんな面倒事を引き受けなきゃならないんだいっっ!?
そんなの王宮魔術師にでも頼みな。
最近は魔術師不足なんだから、そんだけ魔力を持ってりゃ弟子として歓迎されるよ」
「だって、魔力持ちは搾取されるって言ってたの、魔女さんじゃないですか」
「ぐ……っ!」
魔女さんは、小さく呻いた。
余計な事を言ってしまったと気付いたらしい。
「勿論、タダでとは言いませんよ。
今日もアクセサリーを持って来ました」
「…………」
魔女さんは腕を組んだまま無反応。
「それとー……、魔女さん、ミートパイはお好きですか?
丁度もう直ぐお昼の時間じゃないですか。
なんでもお見通しの魔女さんは、もうご存知かも知れないですけど、私今食堂でアルバイトをしていまして。
ミートパイ、ウチのお店の人気メニューなんですよ。
サックサクのパイ生地と、ジューシーなお肉のハーモニーは最高ですよー。
食べなきゃ損ですよー」
私の誘い文句に魔女さんはゴクリと唾を呑み込んだ。
───よし、もう一息!
「コールスローサラダと、デザートのパンプキンプディング!
フルーツだってありますよ?」
私が二人分の昼食が入ったバスケットを差し出した途端、魔女さんのお腹がグゥッと大きく鳴った。
「しっ、仕方ないねっっ!
先ずは昼食を食べてからだよっ」
少し顔を赤らめた魔女さんは、フイッとそっぽを向きながら言った。
私は魔術師になりたい訳では無いので、教えて貰う魔術は必要最小限だ。
自分の魔力を周囲に隠す為の魔力のコントロール方法と、いざと言う時の防御の魔術。
本当は治癒魔術も出来る様になったら、アルバートが仕事で怪我をしても治してあげられるかも……
とか、思っていたのだが、魔女さんによると、私の魔力量は元に比べれば大幅に増えたとはいえ、王宮魔術師になれるかどうかギリギリくらいの量らしく、治癒魔術は使えないとの事。
私はその日から、黒猫亭の定休日には真っ暗森に通い、半年間掛けて魔女さんに習いながら魔術を習得した。
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