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私とグレッグは、半年後に結婚式を挙げる事になった。
グレッグとルシアン様の策略に嵌ったみたいで若干悔しい気もするが、私だって別に彼との結婚が嫌な訳では無い。


最近は結婚準備に忙しく過ごしている。
先週の休みは、二人で新居の候補をいくつか見学しに行った。

その中に白い壁に赤い屋根の可愛らしい家があった。

「邸と呼ぶ程広くは無いけど、四人くらいで住むには丁度いい部屋数よね」

私がそう言うと、グレッグは艶っぽい笑みを浮かべた。

「・・・と、言う事は、子供は二人ですね」

言ってる事は普通なんだけど、その微笑みに含みを感じる。
なんだか頬が熱くなってきた。

キッチンなども見学したけど、なかなか使いやすそう。
休みの日には自分で料理をするのも良いかもしれない。
立地的にも、治安が良い場所で、カルヴァート公爵邸からもそう遠く無い。

「私は気に入ったけど、グレッグはどう?」

「いいと思います」

グレッグは即金でこの家を購入した。
私も出すと言ったのだが・・・・・・

「ここは私が格好付ける場面ですので、邪魔しないでください」

と、頑なに拒否された。
グレッグの貯金はかなりの額になっているらしく、家一軒くらい余裕で買えるとの事。

「ランチェスター公爵家にいる時、衣食住は保証されてましたから、他に使う事が無かったんですよ」

「何か趣味とか無いの?」

「なくも無いですが、休みの日でも、殆どアビーのお側にいましたからねぇ」

そう言えば、子供の頃からグレッグが側にいなかったのは、騎士学校に通ってた頃くらいで、その他はいつも一緒にいた。

「そう言えば、全然休んでなかったじゃない!
労働環境酷くない?」

「いや、好きでやってた事なので良いんですよ。
アビーを見ているのが一番面白いので」

面白いって何だ!?
・・・・・・喜べば良いのか、怒れば良いのか分からない。



そんな感じで、新居が決まった。
少しづつ引っ越しの荷造りも進めている。




今日も仕事はお休みで、公爵邸内のグレッグに与えられた部屋で、結婚式の相談をしていた。

ドレスのカタログをペラペラとめくる。

「ねぇ、このウエディングドレスはどうかな?」

私が指し示したデザイン画をチラリと見たグレッグは、微かに眉根を寄せた。

「ドレスのデザインは素敵だと思いますが、このデザインだと胸元にボリュームがある女性じゃないと似合いませんよ」

「ううっ・・・。気にしてるのにぃ。
グレッグは、ちょっと私への態度が酷過ぎない?
愛されている感じが全くしないんだけど」

口を尖らせてそう言うと、彼は挑戦的な笑みを浮かべた。

「甘い方が良ければ、そう出来ますよ」

グレッグは、私の髪を一束手に取って、恭しく口付けを落とす。
ゆっくりと顔を上げた彼の瞳には、見た事がない甘さと熱が溢れ出していた。
そのあまりの変貌ぶりに、驚いた私は思わず目を見開く。

「アビー、愛しています。
早く貴女を私だけの物にしたい」

頬にそっと手を触れられて見つめられると、じわじわと顔が熱くなった。
逃げ腰になった私に、グイグイと彼の美しい顔が近付く。

「ああ、照れているアビーも愛らしいですね。
その甘そうな唇に口付けても良いですか?」

何これ!?
こんなのグレッグじゃ無い!!

普段、余りに辛辣な言葉を吐かれ過ぎてて忘れがちだけど、実はグレッグって凄いイケメンなんだよね。
乙女ゲームのキャラなんだから、当然だけど。

その整い過ぎた顔の男に、蕩けるような瞳で見つめられて、甘い言葉を吐かれるなんて、無理無理!
私には難易度が高過ぎる!
こーゆーの、慣れてないんだよー!!

「ちょっと待って!ストップ!!」

「何故?」

「無理ぃ!恥ずかしいぃ・・・」

グレッグの胸を押し退けて、俯く。
彼の顔がまともに見れない。
グレッグは、呆れたように小さな溜息をついた。

「ほら、嫌がるじゃないですか。
この程度でキャパオーバーになる癖に、愛されてる感じがどうとか言わないで下さいよ」

「ゴメン」

「まあ、アビーの性格上、こうなる事は最初から分かってましたけどね。
だから、ずっと我慢してたんじゃないですか」

近過ぎる距離を普通に戻して、半眼で私を見るグレッグ。

「我慢?」

「そうです。
私だって、たまには好きな女性をデロデロに甘やかせたいとか思うんですよ」

「デロデロ・・・」

「でも、照れて慌てる貴女を見るのもやっぱり良いですね。
癖になりそうです。
結婚するまでに、少しづつ慣れてもらいましょうか」

艶っぽい笑みを浮かべるグレッグが、若干怖い。

「それとも、続きは新居に移ってからが良いですか?」

引っ越し先は大きな邸では無いので、住み込みの使用人はいない。
新居に移ったら、家にいる間は殆ど二人きりだ。

・・・・・・なんか、今迄とは違う方向で酷い目に合いそうな予感がするんだけど!?


私が、熱くなった頬を手でパタパタと扇いでいる間に、グレッグはドレスのデザイン画を真剣に見比べていた。

「ほら、先程のより、こちらのドレスの方が、アビーの魅力がグッと引き立ちますよ」

さっきのとは別のデザイン画を手渡される。

「本当だ、これも素敵!」

「この世で一番、貴女の好みや貴女に似合う物を熟知しているのは私ですから」

そう言って胸を張るグレッグ。

「いや、一番は私自身でしょ?」

「いいえ。負けません!
だって、貴女自身よりも私の方がずっと、貴女を見つめている時間も、貴女の事を考えている時間も長いのですから」


確かに、私が私の姿を見られるのは、鏡の前に立った時だけだけど。
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