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14 意外過ぎる周囲の評価

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「ベルジュロン様、先日は災難でしたわね」

「本当に、ベルジュロン様が他人に危害を加えるなんてあり得ないのに。
酷い濡れ衣ですわっっ!」

週明け、登校するとクラスメイトのご令嬢達に囲まれた。
彼女達は口々に、私に労いや慰めの言葉を掛ける。

「ベルジュロン様は、公爵家のご令嬢なのに全く偉ぶらないですし、誰にでもお優しくて素晴らしい方ですのに」

・・・・・・うん。
だって、平凡顔の癖に傲慢な公爵令嬢って、非常に残念な存在でしょ?
そうならない様に、努めて慎ましく見える様に振る舞ってきたのだ。

「私達でお力になれる事があれば、なんでも仰って下さいませ!」

「それは・・・どうも、有難うございます」

うーん・・・。
平凡顔だから親しみ易いのかしら?
この顔もたまには役に立つのね。
しかし、言葉通りに受け取って良いものだろうか?
私、周囲にそんなに好感を持って貰えてるとは思えないのだけど。
公爵家に媚を売りたいだけって可能性もある?
そんな風に考えるのは失礼かしら?
人の言葉の裏を読むのって難しいよね・・・。
ホント、公爵令嬢とか向いてないよ。




「普通に好かれてるんじゃ無い?」

お昼休み、殿下に相談したら即答された。

「そうでしょうか?」

「うん。
リュシーは気付いて無いけど、君は結構生徒達から慕われていると思うよ。
先日の階段での事件の時だって、君のクラスのご令嬢達が、リュシーがトラブルに巻き込まれてるって僕に知らせに来てくれたから、直ぐに駆けつける事が出来たんだよ」

殿下は私を安心させるように微笑んだ。

「まあ!そうだったのですか。
後で御礼を言わなければいけませんね」

自分の知らない所で、色々な人に助けられていたのかも知れない。
同年代に高位貴族のご令嬢がいない為遠巻きにされていて、お友達を作るのが難しいと思っていたのだが、それ程身構えなくても良かったのかも。




その数日後、階段事件の新たな証言が出始めた。

ある者は、図書室で例の男子生徒が私に「殿下が怪我をした」と嘘をついて呼び出したのを見たと言う。
そしてある者は、私が呼び出されたよりも前の時間に、大階段の5段目辺りで、例の男子生徒と共に〝よろめいて手摺りにしがみ付く仕草〟を繰り返しているモンタニエ伯爵令嬢を見たと証言した。

二つの証言が出てから、更に自分も見たと言う者が数名現れた。

そうなってくると、今迄私に疑惑の目を向けていた生徒達も、流石に事実を認識し始めた様で、私に同情的な空気が学園内にどんどん広がって行く。


ただ、私は少し疑問に思っている。

図書室に呼び出しに来たあの令息は、慌てている振りをしながらも、大声は出していなかった。
目撃されれば自分も疑われるのだから、当然気を付けていたのだろう。
そしてあの時、その程度の大きさの声が聞こえる範囲には、誰も居なかったと思うのだ。

誰かが、私に有利な証言を捏造しているのだろうか?
その誰かとは、当然あの人だろう。
でも、私は気付いていない振りをする。
私は嘘をつくのがあまり上手く無いのだから、具体的な事は何も知らずに居るのが一番なのだ。

そんな事を考えながら、私は帰り支度をして、ベルジュロン公爵家の馬車に近付いた。
御者台に見覚えのない男が座っていた事には気付いていたが、新しい使用人を雇ったのだろうとしか思わなかった。
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