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11 秘密の作業部屋
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ドライヤーを開発してみて、気付いた事がある。
私は、前世のドライヤーの中の仕組みを知っている訳では無い。
ただ、同じ効果が出る様に、魔法を組み合わせただけだ。
・・・と、言う事は、スマホも前世と同じ仕組みで作る必要など無いのではないだろうか?
いや、しかし、インターネットはどう考えても出来そうもないよね。
ネット環境を整えたところで、多数のサイトを運営管理する人が居なきゃ意味ない。
話の規模が大きすぎる。
通話のみの携帯電話ならいけそうかな。
通話機能だけに絞るならば、声を届ける事が出来そうな魔法・・・。
届ける・・・・・・。
転移魔法はどうだろう?
転移魔法の応用で声だけ転移させられないか?
私は早速、お父様の書斎から、転移魔法の理論が書かれた分厚い本を何冊も借りて来て、作業場で読み漁る。
どれ位の時間が経っただろうか?
扉の外が、なんだか騒がしくなった気がして、ふと、本から顔を上げた。
「お待ち下さい、殿下。困ります!
お嬢様の許可を取りませんと・・・」
微かに聞こえる執事の声。
えっ?殿下?
その言葉の意味を深く考える暇もなく、私の目の前の扉が、突然開かれた。
「やあ、リュシー。
僕に隠していたのは、コレかい?」
現れたのは、眩しい金髪の美しい王子様だった。
「・・・何故、ジュリアン殿下が此処に?」
「最近リュシーが、何か隠し事しているのが、気になって仕方なくてね。
ベルナールにちょっとした賄賂を渡して聞いたら、教えてくれた。
まさか、リュシーが魔道具を作っていたなんて思わなかったよ」
賄賂とは多分、王城のパティシエが作るフィナンシェだ。
弟の大好物である。
ベルナールめ、食欲に負けやがって!
でもまあ、強く口止めしていなかった私の失態だな。
仕方ない。
殿下は楽しそうに、材料や道具などが溢れかえって雑然とした作業場を見て回る。
このゴチャゴチャした部屋に、キラキラしい王子が居る光景。シュールだわ。
彼の反応を見るに、王子の婚約者が魔道具を作っていても、特に問題視していないみたいだ。
隠す必要も無かったのかしら?
ところが、机に置いてあった一枚の設計図を手にして、殿下の表情が急に真剣になった。
「これって・・・ドライヤー?だよね?
何故この設計図が此処に?」
「え・・・殿下は何故、ドライヤーをご存知なのですか?」
「以前、視察した劇団の楽屋に置いてあったんだよ」
どうしよう・・・巧い言い訳が思いつかない。
気まずい沈黙が部屋の空気を支配する。
壁掛け時計の秒針が時を刻む音だけが、やけに耳に付いた。
「・・・・・・私が開発した物です。
・・・・・・申し訳ありませんでした」
ああ、販売までしているとバレてしまったわ。
「何故謝るの?」
「・・・この国では、まだ女性の社会進出が、全く進んでいません。
特に、貴族女性が働くのは、あまり良しとされません。
ましてや、王子の婚約者である公爵令嬢が、平民向けの魔道具を開発しているだなんて・・・」
叱責を覚悟して、目を瞑る。
「僕はそうは思わないけど」
「えっ・・・?」
「君は、風魔法も火魔法も使える。
このドライヤーは、リュシー自身には全く必要の無い物の筈だ。
それなのに、これを作ったって事は、誰かの生活が少しでも便利になる様にと願ったんだよね?
そんな君が婚約者だなんて、僕は誇りに思うよ」
殿下は優しい眼差しで、私の頭を撫でる。
ああ、そうだった。
この人は、いつも私の気持ちや考え方を尊重してくれる。
「でも・・・こんな事、王子妃になったら、続けられませんよね?」
「いや。結婚しても、続けてくれても良いよ。
開発者としての君の名前を公にするには、さすがに色々根回しが必要だから、時間がかかるだろうけど。
それまでの間は、名前を出さないのであれば全く問題ない」
事も無げに言われて、拍子抜けしてしまう。
まさか許可されるなんて、思わなかった。
「・・・だけど、ちょっと気に入らないかな。
これって、マルセル商会から売り出してるよね?
君の幼馴染の、ドナルド・マルセルの」
「ええ、幼馴染のよしみで、協力して貰いました」
「君と親し気にしていたあの男と一緒に仕事をしてると思うと、ちょっとイライラする」
「・・・・・・」
「・・・・・・ごめんね。ちょっと嫉妬しただけ」
そう言って、彼は、困った様に笑った。
私は、前世のドライヤーの中の仕組みを知っている訳では無い。
ただ、同じ効果が出る様に、魔法を組み合わせただけだ。
・・・と、言う事は、スマホも前世と同じ仕組みで作る必要など無いのではないだろうか?
いや、しかし、インターネットはどう考えても出来そうもないよね。
ネット環境を整えたところで、多数のサイトを運営管理する人が居なきゃ意味ない。
話の規模が大きすぎる。
通話のみの携帯電話ならいけそうかな。
通話機能だけに絞るならば、声を届ける事が出来そうな魔法・・・。
届ける・・・・・・。
転移魔法はどうだろう?
転移魔法の応用で声だけ転移させられないか?
私は早速、お父様の書斎から、転移魔法の理論が書かれた分厚い本を何冊も借りて来て、作業場で読み漁る。
どれ位の時間が経っただろうか?
扉の外が、なんだか騒がしくなった気がして、ふと、本から顔を上げた。
「お待ち下さい、殿下。困ります!
お嬢様の許可を取りませんと・・・」
微かに聞こえる執事の声。
えっ?殿下?
その言葉の意味を深く考える暇もなく、私の目の前の扉が、突然開かれた。
「やあ、リュシー。
僕に隠していたのは、コレかい?」
現れたのは、眩しい金髪の美しい王子様だった。
「・・・何故、ジュリアン殿下が此処に?」
「最近リュシーが、何か隠し事しているのが、気になって仕方なくてね。
ベルナールにちょっとした賄賂を渡して聞いたら、教えてくれた。
まさか、リュシーが魔道具を作っていたなんて思わなかったよ」
賄賂とは多分、王城のパティシエが作るフィナンシェだ。
弟の大好物である。
ベルナールめ、食欲に負けやがって!
でもまあ、強く口止めしていなかった私の失態だな。
仕方ない。
殿下は楽しそうに、材料や道具などが溢れかえって雑然とした作業場を見て回る。
このゴチャゴチャした部屋に、キラキラしい王子が居る光景。シュールだわ。
彼の反応を見るに、王子の婚約者が魔道具を作っていても、特に問題視していないみたいだ。
隠す必要も無かったのかしら?
ところが、机に置いてあった一枚の設計図を手にして、殿下の表情が急に真剣になった。
「これって・・・ドライヤー?だよね?
何故この設計図が此処に?」
「え・・・殿下は何故、ドライヤーをご存知なのですか?」
「以前、視察した劇団の楽屋に置いてあったんだよ」
どうしよう・・・巧い言い訳が思いつかない。
気まずい沈黙が部屋の空気を支配する。
壁掛け時計の秒針が時を刻む音だけが、やけに耳に付いた。
「・・・・・・私が開発した物です。
・・・・・・申し訳ありませんでした」
ああ、販売までしているとバレてしまったわ。
「何故謝るの?」
「・・・この国では、まだ女性の社会進出が、全く進んでいません。
特に、貴族女性が働くのは、あまり良しとされません。
ましてや、王子の婚約者である公爵令嬢が、平民向けの魔道具を開発しているだなんて・・・」
叱責を覚悟して、目を瞑る。
「僕はそうは思わないけど」
「えっ・・・?」
「君は、風魔法も火魔法も使える。
このドライヤーは、リュシー自身には全く必要の無い物の筈だ。
それなのに、これを作ったって事は、誰かの生活が少しでも便利になる様にと願ったんだよね?
そんな君が婚約者だなんて、僕は誇りに思うよ」
殿下は優しい眼差しで、私の頭を撫でる。
ああ、そうだった。
この人は、いつも私の気持ちや考え方を尊重してくれる。
「でも・・・こんな事、王子妃になったら、続けられませんよね?」
「いや。結婚しても、続けてくれても良いよ。
開発者としての君の名前を公にするには、さすがに色々根回しが必要だから、時間がかかるだろうけど。
それまでの間は、名前を出さないのであれば全く問題ない」
事も無げに言われて、拍子抜けしてしまう。
まさか許可されるなんて、思わなかった。
「・・・だけど、ちょっと気に入らないかな。
これって、マルセル商会から売り出してるよね?
君の幼馴染の、ドナルド・マルセルの」
「ええ、幼馴染のよしみで、協力して貰いました」
「君と親し気にしていたあの男と一緒に仕事をしてると思うと、ちょっとイライラする」
「・・・・・・」
「・・・・・・ごめんね。ちょっと嫉妬しただけ」
そう言って、彼は、困った様に笑った。
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