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22 復学
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《side:ルルーシア》
私がローレンス様に攫ってもらってから、一ヶ月。
あっという間に養子縁組の手続きが為されて、私は晴れてルルーシア・ビリンガム伯爵令嬢になった。
それと同時に、ローレンス様との婚約も成立した。
あの日、元父はローレンス様の従者の提案を、二つ返事で飲んだらしい。
自分の娘を如何に高額で売るかと言う事にしか興味が無い。
やっぱり愚物だ。
最悪な実家と縁が切れて嬉しいし、ビリンガム伯爵家の家族は私を温かく迎えてくれた。
そして、なんと、学園にも復学する事が出来た。
将来侯爵夫人になるのならば、学園は卒業しておくべきだったと後悔していたので、本当に良かった。
本来この学園は、一度自主退学をすると復学は出来ない決まりなので、諦めていた。
しかし、クラス担任の先生と学園長が結託し、態と退学手続きを遅らせてくれていて、私は休学に近い扱いになっていたのだ。
担任の先生の『力になれる事があれば──』と言う言葉を、私は社交辞令として受け取っていたのだが、かなり本気で力になってくれるつもりだったみたいだ。
私は、自分の事を『家族に愛されない、価値の無い人間だ』と長年思っていた。
だから、誰かに助けを求めたりしてはしてはいけないのだと。
でも、私を心配し支えてくれていた人達が、意外にも沢山いたのだと、やっと気付く事が出来た。
それは、とても幸せな事だ。
「───それで、ローレンス様のお兄様のご容態は、最近如何なのですか?」
昼休みの学食のテラス。
以前と変わらず私とローレンス様は、一緒に昼食を取っている。
本日の話題は、ローレンス様のお兄様について。
その話の流れで、気になっていた『女性不信について』の事情も判明した。
思えば契約恋愛をしていた頃は、長く一緒に過ごしたにも関わらず、お互いの事をあまり深く話していなかった。
正式に婚約者となった今、改めてお互いの事を知って行こうと交流を深めている所である。
「療養先の空気が合っているみたいで、こちらにいる頃よりもずっと元気になったらしい。
以前は酷い時は寝たきりだったけど、最近は割と普通に生活出来てるって。
とは言え、やはり次期当主は難しいけどね。
俺達の結婚迄には、ルルーシアに会いたいって言ってた」
学園を卒業したらすぐに私達は結婚する予定になっている。
まだ全然実感が湧かないけれど。
「お会い出来るのが楽しみです。
ローレンス様のお相手として認めて頂けるかは心配ですけど・・・」
「その心配は無用だけど、俺はちょっと二人を会わせたくないな」
「何故ですか?」
「兄上はイケメンだから」
「?」
ちょっと意味が分からなくて、私は首を傾げた。
「俺は思ったより嫉妬深いらしい」
「嫉妬?」
「そう」
「ローレンス様が?」
「そう」
「逆じゃ無くて?
私がローレンス様に近付く女性に嫉妬するなら分かりますけど、その逆は・・・
嫉妬する要素、ありませんよね?」
益々首を傾げる。
すると、ローレンス様は深い溜息を吐いた。
「あるよ。
今迄何度も。
ルルーシアは無自覚過ぎるよね。
あの従兄弟殿とも距離感が近過ぎだし、サイモンに紹介した時だって・・・」
「アレは、違うじゃ無いですか」
「うん、分かってる。
ルルーシアもサイモンもそんなつもりじゃ無いって事は。
でも、二人が仲良くなるのが嫌だったんだよ。
自分で紹介しといて馬鹿みたいだけど。
・・・・・・あぁ・・・、なんか俺、ルルーシアにカッコ悪い所ばっかり見せてないか?」
顔を覆って、また重い溜息を吐いたローレンス様。
指の隙間から見えるその頬は少し赤い。
「フフッ。好きな人に嫉妬されるのは嬉しいものですよ」
「でも、やっぱり恥ずかしいから忘れて」
「プリン、ご馳走してくれます?」
「何個でも」
「じゃあ、忘れてあげます」
退学した時は、もう二度と食べる事がないと思っていた学食のプリン。
再びローレンス様と食べられる事がとても嬉しい。
幸せな日常が戻って来た。
私がローレンス様に攫ってもらってから、一ヶ月。
あっという間に養子縁組の手続きが為されて、私は晴れてルルーシア・ビリンガム伯爵令嬢になった。
それと同時に、ローレンス様との婚約も成立した。
あの日、元父はローレンス様の従者の提案を、二つ返事で飲んだらしい。
自分の娘を如何に高額で売るかと言う事にしか興味が無い。
やっぱり愚物だ。
最悪な実家と縁が切れて嬉しいし、ビリンガム伯爵家の家族は私を温かく迎えてくれた。
そして、なんと、学園にも復学する事が出来た。
将来侯爵夫人になるのならば、学園は卒業しておくべきだったと後悔していたので、本当に良かった。
本来この学園は、一度自主退学をすると復学は出来ない決まりなので、諦めていた。
しかし、クラス担任の先生と学園長が結託し、態と退学手続きを遅らせてくれていて、私は休学に近い扱いになっていたのだ。
担任の先生の『力になれる事があれば──』と言う言葉を、私は社交辞令として受け取っていたのだが、かなり本気で力になってくれるつもりだったみたいだ。
私は、自分の事を『家族に愛されない、価値の無い人間だ』と長年思っていた。
だから、誰かに助けを求めたりしてはしてはいけないのだと。
でも、私を心配し支えてくれていた人達が、意外にも沢山いたのだと、やっと気付く事が出来た。
それは、とても幸せな事だ。
「───それで、ローレンス様のお兄様のご容態は、最近如何なのですか?」
昼休みの学食のテラス。
以前と変わらず私とローレンス様は、一緒に昼食を取っている。
本日の話題は、ローレンス様のお兄様について。
その話の流れで、気になっていた『女性不信について』の事情も判明した。
思えば契約恋愛をしていた頃は、長く一緒に過ごしたにも関わらず、お互いの事をあまり深く話していなかった。
正式に婚約者となった今、改めてお互いの事を知って行こうと交流を深めている所である。
「療養先の空気が合っているみたいで、こちらにいる頃よりもずっと元気になったらしい。
以前は酷い時は寝たきりだったけど、最近は割と普通に生活出来てるって。
とは言え、やはり次期当主は難しいけどね。
俺達の結婚迄には、ルルーシアに会いたいって言ってた」
学園を卒業したらすぐに私達は結婚する予定になっている。
まだ全然実感が湧かないけれど。
「お会い出来るのが楽しみです。
ローレンス様のお相手として認めて頂けるかは心配ですけど・・・」
「その心配は無用だけど、俺はちょっと二人を会わせたくないな」
「何故ですか?」
「兄上はイケメンだから」
「?」
ちょっと意味が分からなくて、私は首を傾げた。
「俺は思ったより嫉妬深いらしい」
「嫉妬?」
「そう」
「ローレンス様が?」
「そう」
「逆じゃ無くて?
私がローレンス様に近付く女性に嫉妬するなら分かりますけど、その逆は・・・
嫉妬する要素、ありませんよね?」
益々首を傾げる。
すると、ローレンス様は深い溜息を吐いた。
「あるよ。
今迄何度も。
ルルーシアは無自覚過ぎるよね。
あの従兄弟殿とも距離感が近過ぎだし、サイモンに紹介した時だって・・・」
「アレは、違うじゃ無いですか」
「うん、分かってる。
ルルーシアもサイモンもそんなつもりじゃ無いって事は。
でも、二人が仲良くなるのが嫌だったんだよ。
自分で紹介しといて馬鹿みたいだけど。
・・・・・・あぁ・・・、なんか俺、ルルーシアにカッコ悪い所ばっかり見せてないか?」
顔を覆って、また重い溜息を吐いたローレンス様。
指の隙間から見えるその頬は少し赤い。
「フフッ。好きな人に嫉妬されるのは嬉しいものですよ」
「でも、やっぱり恥ずかしいから忘れて」
「プリン、ご馳走してくれます?」
「何個でも」
「じゃあ、忘れてあげます」
退学した時は、もう二度と食べる事がないと思っていた学食のプリン。
再びローレンス様と食べられる事がとても嬉しい。
幸せな日常が戻って来た。
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