【完結】女嫌いの公爵様は、お飾りの妻を最初から溺愛している

miniko

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18 彼女の変化(ダニエル視点)

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彼女の様子が、何となくおかしいと感じた時、初めは気の所為かと思った。
或いは、先日の夜会での事件で落ち込んでいるのかと・・・・・・。


『ハズレの癖に』

あの女が吐いた、胸糞悪い台詞が頭をよぎる。

トリシアをセレスティナと比べて、『ハズレ』だなどと陰口を叩く輩がいる事は、噂に聞いていた。
しかし、まさか、本人に直接そんな言葉を浴びせる愚か者が居るとは思わなかった。

トリシアの自己肯定感が低い事は、以前から気が付いていたのだが、前にもあの様な悪意をぶつけられた事があったのならば、無理からぬ事である。


確かにセレスティナは金髪碧眼の派手な美女であり、彼女を崇めている若い貴族男性はとても多い。
それに比べれば、トリシアは髪も瞳も落ち着いた色合いである。
しかし、姉妹だけあって、トリシアとセレスティナは顔立ちが似ている部分もある。
トリシアの方が、少し柔らかい雰囲気の美女なのだ。
それに加えて、穏やかで優しい性格も、ピアノや刺繍の才に秀でている事も、頭の回転が早い事も、全てが好ましく、劣っている部分など何も無いと言うのに・・・・・・。



「トリシア、今度の週末、一緒に舞台でも見に行かないか?」

「申し訳ありません。
次の週末は、お父様に会いに行こうかと思っているのです」

トリシアは少し考え込む様子を見せた後、困った様に微笑んで、そう言った。

「・・・そうか・・・」

やはり、元気が無い。
気の所為では無いみたいだ。
あの夜会から、彼女は自室に篭もりがちになり、私とあまり顔を合わせなくなった。
食事は毎日一緒に取るが、以前と比べて会話は少ない。

あの女に言われた事を気にしているのならば、なんとか慰めてやりたいが、何と声を掛ければ良いのか難しい。
下手に蒸し返して、あの言葉を思い出させたくは無かった。

ならば、せめて楽しませ、気を紛らわせてあげる事は出来ないかと遊びに誘うも、先程の様に、様々な理由を付けて断られてしまうのだ。

それにしても、彼女が実家を訪ねるのは珍しい。
夜会の時にセレスティナに顔を出せと言われた所為だろうか?
それとも、やはりエルミニオに会いたくなってしまったのか・・・。

沸々と湧き出る暗い感情に、支配されそうになる。
いつかトリシアが彼を忘れる日は来るのだろうか?



それからニか月以上が経っても、トリシアは元気が無いままだ。

「時間が解決してくれるかも知れません。
少し様子を見られては如何でしょう」

そう言っていた使用人達も、近頃は本気で心配している。
しかも、最初の頃よりも悪化している様に見える。
段々と、私と目を合わせなくなって、殆ど笑わなくなってきた。

そこまで来て、はたと気付いてしまった。

単に元気が無いだけで無く、私が避けられているのではないかと言う事に・・・・・・。

結婚式の直後も、ある意味避けられていた。
しかし、あの時は原因が明白であり、頬を染めたトリシアは可愛かったし、男性として意識されている様で嬉しくもあった。

だが、今回は全く状況が違う。
まず、原因に心当たりが無い。
あの夜会が切っ掛けであった事は間違いないと思うのだが・・・・・・。
私は何か、彼女を傷付ける事をしてしまったのだろうか?

原因が分からない以上、彼女に許しを乞う事すら出来ない。


私は途方に暮れた。
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