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9 ファンの暴走
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「ナディア・プレシアド様はいらっしゃいますか?」
お昼休み、5人の令嬢が連れ立って、私を訪ねて来た。
知り合いでは無いが、なんか見覚えがある。
ミゲルの周りによく居る子達かもしれない。
「私がプレシアドですが?」
名乗り出ると、中心にいた気が強そうな女性が、不機嫌そうに目を細めて私を見る。
「お話がございますの。
少々お時間よろしいでしょうか?」
よろしくは無いが、逆らっても余計に面倒な事になりそうだ。
「ナディア、大丈夫?」
「ええ。ちょっと行ってくるわ」
心配そうなマリソルにそう言うと、彼女は頷き、足早に教室を出て行った。
ミゲルを呼びに行ってくれたのだろう。
5人組は、私を空き教室に連れて行く。
「貴女のような平凡な女が、ミゲル様のような素敵な方を婚約者に持っている癖に、何故他の殿方のファンクラブになんか入っているのですか?」
彼女の気持ちは分からないでも無いが、私だって好きでこんな事をしている訳では無い。
「それを貴女に説明する義務は無いと思うのですが」
私の言葉に、彼女は益々瞳に怒りを宿す。
「今の立場に不満があるのでしたら、ミゲル様の婚約者を降りて下さい」
「それは、両家の当主が決めた事ですので、私達の気持ちだけでは、何とも・・・」
「貴女の態度は不誠実です。
ミゲル様がお可哀想だと思わないのですか!?」
その時、突然扉が開いた。
「僕が、何だって?」
「ミゲル様!?」
ミゲルは走ってこの場所を探してくれたのか、少し乱れた息を整えながら、無表情に令嬢達を見据えた。
「僕の気持ちを勝手に代弁するのは止めてくれないか?
それは、僕とナディアだけの問題であって、君達にはナディアを責める権利なんて無い筈だ」
「ですが・・・・・・」
「大体、君達の中にも婚約者が居る人も居るよね?
ナディアがやってる事と、どう違うの?
それに、僕は君達の存在を承認した覚えは無いし、こんな事望んでもいないんだけど」
彼女達は、もう涙目だ。
流石にこれは少し可哀想になってくる。
「ミゲル、もう行こう」
私はミゲルの腕を掴み、空き教室を出た。
この国は近年、急速に女性の地位が向上し、社会進出も進みつつある。
それに伴い、自由恋愛を推奨する風潮も出て来た。
しかし、一方では、まだまだ政略結婚が多く、理想と現実の狭間で揺れているのだ。
彼女達も、自分の好きな人を結婚相手に選べないもどかしさを感じているのだろう。
そして、彼女達が好きなミゲルの婚約者という、幸運な立場にいるにも関わらず、彼を蔑ろにしているように見える私に怒りを覚えているのだ。
その気持ちは理解できるのだが、私には私の事情がある。
お昼休み、5人の令嬢が連れ立って、私を訪ねて来た。
知り合いでは無いが、なんか見覚えがある。
ミゲルの周りによく居る子達かもしれない。
「私がプレシアドですが?」
名乗り出ると、中心にいた気が強そうな女性が、不機嫌そうに目を細めて私を見る。
「お話がございますの。
少々お時間よろしいでしょうか?」
よろしくは無いが、逆らっても余計に面倒な事になりそうだ。
「ナディア、大丈夫?」
「ええ。ちょっと行ってくるわ」
心配そうなマリソルにそう言うと、彼女は頷き、足早に教室を出て行った。
ミゲルを呼びに行ってくれたのだろう。
5人組は、私を空き教室に連れて行く。
「貴女のような平凡な女が、ミゲル様のような素敵な方を婚約者に持っている癖に、何故他の殿方のファンクラブになんか入っているのですか?」
彼女の気持ちは分からないでも無いが、私だって好きでこんな事をしている訳では無い。
「それを貴女に説明する義務は無いと思うのですが」
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「今の立場に不満があるのでしたら、ミゲル様の婚約者を降りて下さい」
「それは、両家の当主が決めた事ですので、私達の気持ちだけでは、何とも・・・」
「貴女の態度は不誠実です。
ミゲル様がお可哀想だと思わないのですか!?」
その時、突然扉が開いた。
「僕が、何だって?」
「ミゲル様!?」
ミゲルは走ってこの場所を探してくれたのか、少し乱れた息を整えながら、無表情に令嬢達を見据えた。
「僕の気持ちを勝手に代弁するのは止めてくれないか?
それは、僕とナディアだけの問題であって、君達にはナディアを責める権利なんて無い筈だ」
「ですが・・・・・・」
「大体、君達の中にも婚約者が居る人も居るよね?
ナディアがやってる事と、どう違うの?
それに、僕は君達の存在を承認した覚えは無いし、こんな事望んでもいないんだけど」
彼女達は、もう涙目だ。
流石にこれは少し可哀想になってくる。
「ミゲル、もう行こう」
私はミゲルの腕を掴み、空き教室を出た。
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それに伴い、自由恋愛を推奨する風潮も出て来た。
しかし、一方では、まだまだ政略結婚が多く、理想と現実の狭間で揺れているのだ。
彼女達も、自分の好きな人を結婚相手に選べないもどかしさを感じているのだろう。
そして、彼女達が好きなミゲルの婚約者という、幸運な立場にいるにも関わらず、彼を蔑ろにしているように見える私に怒りを覚えているのだ。
その気持ちは理解できるのだが、私には私の事情がある。
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