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12 本当の気持ち
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混乱する私をよそに、ミゲルは再び口を開く。
「・・・それは、違うんだ。
あの言葉は、特定の人物を思い浮かべて言った訳じゃない。
大体アレは、只の子供の頃の憧れであって、今の僕の好きな人とは全く違うんだよ」
「・・・・・・」
ーーーそっか。ミゲルの好きな人はクリスティナ様じゃなかった。
他に好きな人がいたんだ・・・・・・。
全然、気付かなかった。
クリスティナ様への想いが私の勘違いだったと分かり、一瞬だけ浮上しかけた心が、再び闇の底へと深く沈む。
視界がぼんやりと滲んでいく。
「・・・・・・丁度良いと思った?」
俯いたミゲルがポツリと零した言葉の意味がわからず、彼を見つめた。
「・・・え?」
「僕がクリスティナに告白して、もしも上手く行ったら、ナディアはサムディオ様の元に行けるって・・・、そう、思った?」
違うよ、ミゲル。
だって、私が好きなのはーーー。
ミゲルの顔がどんどん苦しそうに歪んでいく。
「ごめんね、ナディア。
手放してあげられない。
君を、自由にしてあげられないんだ。
だって、僕が好きな人は・・・・・・
ナディアなんだ」
震える声で伝えられた、その意味を理解するのに、少し時間がかかった。
だって、絶対にありえない事だと、ずっと思って来たから。
驚きに目を見開くと、潤んでいた私の瞳から、涙が一筋溢れた。
それを目にしたミゲルの顔が、益々歪む。
「ナディアが、サムディオ様の事を好きなのは知ってるけど・・・」
「・・・っっ!?そうじゃ無いわ!
リカルド様には憧れているだけだって言ったじゃない!
・・・・・・いいえ。憧れてすらいない。
アレは、・・・全部、嘘なの」
慌てて首を振り、紡いだ言葉は段々小さくなっていく。
「え?・・・・・・嘘?
どういう意味?」
困惑する彼を見て、申し訳なさが湧き上がる。
ああ、私が憧れるフリなんてしたから、余計に拗れてしまったんだ。
「あのね、私、ずっと勘違いしていたの。
ミゲルは、クリスティナ様の事が好きなんだって。
ミゲルが言っていた理想の女性像が、余りにもクリスティナ様にピッタリだったから」
「そうか・・・、それは僕が悪かったね」
私は緩く首を横に振る。
「だから、私がミゲルの事を好きだなんて知られたら、ミゲルに気を遣わせてしまうんじゃ無いかって思って、気付かれない様にしなきゃって・・・」
「今、なんて言った?」
「だから、ミゲルが気を遣って・・・」
「違う。その前」
「ミゲルの事を 好 き・・・・・・・・・?
あ、あぁっ・・・!」
ああぁぁぁっっ!!
嘘でしょ!?
うっかり告白してしまったじゃない!!
信じられない!なんて馬鹿なの!?
「ナディア」
席を立ったミゲルが、私に近付く。
「それって、そういう意味の〝好き〟で良いんだよね?」
私の両手を握ったミゲルは、見た事も無いほど嬉しそうに微笑んだ。
「・・・それは、違うんだ。
あの言葉は、特定の人物を思い浮かべて言った訳じゃない。
大体アレは、只の子供の頃の憧れであって、今の僕の好きな人とは全く違うんだよ」
「・・・・・・」
ーーーそっか。ミゲルの好きな人はクリスティナ様じゃなかった。
他に好きな人がいたんだ・・・・・・。
全然、気付かなかった。
クリスティナ様への想いが私の勘違いだったと分かり、一瞬だけ浮上しかけた心が、再び闇の底へと深く沈む。
視界がぼんやりと滲んでいく。
「・・・・・・丁度良いと思った?」
俯いたミゲルがポツリと零した言葉の意味がわからず、彼を見つめた。
「・・・え?」
「僕がクリスティナに告白して、もしも上手く行ったら、ナディアはサムディオ様の元に行けるって・・・、そう、思った?」
違うよ、ミゲル。
だって、私が好きなのはーーー。
ミゲルの顔がどんどん苦しそうに歪んでいく。
「ごめんね、ナディア。
手放してあげられない。
君を、自由にしてあげられないんだ。
だって、僕が好きな人は・・・・・・
ナディアなんだ」
震える声で伝えられた、その意味を理解するのに、少し時間がかかった。
だって、絶対にありえない事だと、ずっと思って来たから。
驚きに目を見開くと、潤んでいた私の瞳から、涙が一筋溢れた。
それを目にしたミゲルの顔が、益々歪む。
「ナディアが、サムディオ様の事を好きなのは知ってるけど・・・」
「・・・っっ!?そうじゃ無いわ!
リカルド様には憧れているだけだって言ったじゃない!
・・・・・・いいえ。憧れてすらいない。
アレは、・・・全部、嘘なの」
慌てて首を振り、紡いだ言葉は段々小さくなっていく。
「え?・・・・・・嘘?
どういう意味?」
困惑する彼を見て、申し訳なさが湧き上がる。
ああ、私が憧れるフリなんてしたから、余計に拗れてしまったんだ。
「あのね、私、ずっと勘違いしていたの。
ミゲルは、クリスティナ様の事が好きなんだって。
ミゲルが言っていた理想の女性像が、余りにもクリスティナ様にピッタリだったから」
「そうか・・・、それは僕が悪かったね」
私は緩く首を横に振る。
「だから、私がミゲルの事を好きだなんて知られたら、ミゲルに気を遣わせてしまうんじゃ無いかって思って、気付かれない様にしなきゃって・・・」
「今、なんて言った?」
「だから、ミゲルが気を遣って・・・」
「違う。その前」
「ミゲルの事を 好 き・・・・・・・・・?
あ、あぁっ・・・!」
ああぁぁぁっっ!!
嘘でしょ!?
うっかり告白してしまったじゃない!!
信じられない!なんて馬鹿なの!?
「ナディア」
席を立ったミゲルが、私に近付く。
「それって、そういう意味の〝好き〟で良いんだよね?」
私の両手を握ったミゲルは、見た事も無いほど嬉しそうに微笑んだ。
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