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4 学園生活
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それから暫くして、私達は無事に学園に入学することが出来た。
学園生活が始まり、一か月が過ぎようという頃。
教室に入ると、なにやらいつもより騒がしい。
数人の女生徒が集まって、ワイワイと話に花を咲かせているようだ。
「楽しそうね。なんの話?」
話の輪の中にいた友人、マリソルに声を掛ける。
「あら、ナディア。おはよう!
昨日、女生徒の何人かが、放課後の騎士科の個人鍛錬を見学しに行ったんですって。
それで、今日私達も行ってみようかって」
騎士科の屋外訓練場は、放課後、個人鍛錬をしたい生徒達の為に開放されている。
「いいわね。私も見学したいわ」
「そう言えば、ナディアも騎士に憧れてるって言ってたわよね。
一緒に行きましょうよ。
あ・・・でも、ミゲル様に怒られない?」
マリソルが少し声を潜めた。
「何言ってるのよ。
私達の関係は政略なんだから、憧れるだけなら問題無いわよ」
政略の婚約者がいたとしても、他の異性に熱を上げる人は多い。
流石に恋人を作るような大胆な人は少数派だが、ファンになって応援したり見守ったりする程度ならば、正式に婚姻を結ぶ迄は黙認されるのが一般的だ。
「それにミゲルだって、ご令嬢達に囲まれてるんだから、お互い様でしょ」
ミゲルは自分のファンクラブを公認したりはしていないが、よくファンを自称するご令嬢達に囲まれている。
「えぇー?また、そんな事言って。
今日だってミゲル様に貰った、サファイアの髪飾りを付けているじゃないの」
揶揄う様にニヤリと笑われて、少し顔が火照ってしまう。
「こ、これは、デザインが気に入っているのよっ!」
放課後、マリソルと共に訓練場に向かってみると、既に女生徒の人集りが出来ていた。
「凄い盛況ね」
人波を掻き分けて、なんとか見物出来るスペースを確保する。
青空の下にご令嬢達の声援が響く。
懸命に鍛錬に励む未来の騎士達。
彼らが、これから国を護ってくれるのだ。
真剣な表情に、しなやかな筋肉。
飛び散る汗さえも素敵に見えて、私のささやかな胸が高鳴る。
「ほら、あのお方が一番人気よ」
マリソルが指差した先に居たのは、一際見事な剣捌きを見せる、逞しい男性。
赤髪が凛々しいそのお方は、リカルド・サムディオ侯爵令息だった。
ーーーなんてカッコいい!!
服の上からでも分かる、彫刻の様な完璧な体型。
靡く赤髪に、吸い込まれそうな漆黒の瞳。
その容姿は、完全に私の理想形だった。
リカルド様には、特定の恋人や婚約者はいらっしゃらないらしい(マリソル談)。
よし、この人に憧れよう。決定。
そうすれば、きっとミゲルへの想いに気付かれないで済むはず。
私は、迷わずリカルド様のファンクラブに入会した。
その日も私は放課後の鍛錬を見学していた。
マリソルは、今日はピアノのレッスンがあるからと、帰ってしまったので、一人で見ていると、突然、赤髪の彼と目が合った。
彼は、真っ直ぐに私を見て、ゆっくりとこちらに近づいて来た。
ご令嬢達が騒然となる。
「君、可愛いね。
あまり見覚えがないけど、新しく俺のファンクラブに入った子かな?」
リカルド様は王子様みたいにキラキラした笑顔で、私の手を取り、指先に軽くキスをした。
周囲から黄色い悲鳴が上がる。
ーーーめっっちゃチャラい。
どうしよう。
なんだろう、この人。
相容れない人種だわ。
憧れる人の人選、間違ったかしら?
えぇ~。でも、もうファンクラブ入っちゃったしなぁ。
そう思いながらも、男性との親密な距離感に慣れていない私の頬は、じんわりと熱を持ち始める。
指先の口付けなんて、貴族にとっては只の挨拶に過ぎないと分かっているのに・・・。
「ナディア!!」
微かに怒気が混じった声で呼ばれ、振り返ると、ミゲルにガシっと腕を掴まれて、引っ張られる。
「サムディオ様、この子は僕の婚約者です。
気軽に触れられては困ります!」
「悪かったよ」
リカルド様は肩をすくめてフッと笑った。
学園生活が始まり、一か月が過ぎようという頃。
教室に入ると、なにやらいつもより騒がしい。
数人の女生徒が集まって、ワイワイと話に花を咲かせているようだ。
「楽しそうね。なんの話?」
話の輪の中にいた友人、マリソルに声を掛ける。
「あら、ナディア。おはよう!
昨日、女生徒の何人かが、放課後の騎士科の個人鍛錬を見学しに行ったんですって。
それで、今日私達も行ってみようかって」
騎士科の屋外訓練場は、放課後、個人鍛錬をしたい生徒達の為に開放されている。
「いいわね。私も見学したいわ」
「そう言えば、ナディアも騎士に憧れてるって言ってたわよね。
一緒に行きましょうよ。
あ・・・でも、ミゲル様に怒られない?」
マリソルが少し声を潜めた。
「何言ってるのよ。
私達の関係は政略なんだから、憧れるだけなら問題無いわよ」
政略の婚約者がいたとしても、他の異性に熱を上げる人は多い。
流石に恋人を作るような大胆な人は少数派だが、ファンになって応援したり見守ったりする程度ならば、正式に婚姻を結ぶ迄は黙認されるのが一般的だ。
「それにミゲルだって、ご令嬢達に囲まれてるんだから、お互い様でしょ」
ミゲルは自分のファンクラブを公認したりはしていないが、よくファンを自称するご令嬢達に囲まれている。
「えぇー?また、そんな事言って。
今日だってミゲル様に貰った、サファイアの髪飾りを付けているじゃないの」
揶揄う様にニヤリと笑われて、少し顔が火照ってしまう。
「こ、これは、デザインが気に入っているのよっ!」
放課後、マリソルと共に訓練場に向かってみると、既に女生徒の人集りが出来ていた。
「凄い盛況ね」
人波を掻き分けて、なんとか見物出来るスペースを確保する。
青空の下にご令嬢達の声援が響く。
懸命に鍛錬に励む未来の騎士達。
彼らが、これから国を護ってくれるのだ。
真剣な表情に、しなやかな筋肉。
飛び散る汗さえも素敵に見えて、私のささやかな胸が高鳴る。
「ほら、あのお方が一番人気よ」
マリソルが指差した先に居たのは、一際見事な剣捌きを見せる、逞しい男性。
赤髪が凛々しいそのお方は、リカルド・サムディオ侯爵令息だった。
ーーーなんてカッコいい!!
服の上からでも分かる、彫刻の様な完璧な体型。
靡く赤髪に、吸い込まれそうな漆黒の瞳。
その容姿は、完全に私の理想形だった。
リカルド様には、特定の恋人や婚約者はいらっしゃらないらしい(マリソル談)。
よし、この人に憧れよう。決定。
そうすれば、きっとミゲルへの想いに気付かれないで済むはず。
私は、迷わずリカルド様のファンクラブに入会した。
その日も私は放課後の鍛錬を見学していた。
マリソルは、今日はピアノのレッスンがあるからと、帰ってしまったので、一人で見ていると、突然、赤髪の彼と目が合った。
彼は、真っ直ぐに私を見て、ゆっくりとこちらに近づいて来た。
ご令嬢達が騒然となる。
「君、可愛いね。
あまり見覚えがないけど、新しく俺のファンクラブに入った子かな?」
リカルド様は王子様みたいにキラキラした笑顔で、私の手を取り、指先に軽くキスをした。
周囲から黄色い悲鳴が上がる。
ーーーめっっちゃチャラい。
どうしよう。
なんだろう、この人。
相容れない人種だわ。
憧れる人の人選、間違ったかしら?
えぇ~。でも、もうファンクラブ入っちゃったしなぁ。
そう思いながらも、男性との親密な距離感に慣れていない私の頬は、じんわりと熱を持ち始める。
指先の口付けなんて、貴族にとっては只の挨拶に過ぎないと分かっているのに・・・。
「ナディア!!」
微かに怒気が混じった声で呼ばれ、振り返ると、ミゲルにガシっと腕を掴まれて、引っ張られる。
「サムディオ様、この子は僕の婚約者です。
気軽に触れられては困ります!」
「悪かったよ」
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