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180 最終登校日
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卒業式を明日に控え、今日は最終登校日。
授業は既に全て終了しており、明日の式典に関する説明を受けるだけなので、午前中で終わる予定だ。
今は、担任教師から卒業式の後のパーティーについての説明が延々とされている。
既に概要が書かれた書面は各家に配られていたが、毎年何人か『聞いていない』とゴネる馬鹿が出るので念の為の措置である。
卒業式後、卒業生とその家族は一旦自邸に戻り、身支度を整えてから、各自、王宮のパーティー会場へと向かう。
学園内にも模擬夜会などに使用するホールがあるが、何故わざわざ王宮に会場を借りるのか?
それは、この学園が王家の管理下にあるという以外に、もう一つ理由があった。
この国では、王家主催の夜会などに下位貴族が呼ばれる事は殆ど無い。
とはいえ、皆無という訳ではなく、立太子の際や新王の即位など、国にとって重要な式典の場合には、全ての貴族家に招待状が届く。
その際、王宮の夜会を初めて経験する下位貴族が緊張や高揚感から大失態を演じてしまうという事象が、過去に多発したらしい。
当然、そこまでの大規模な夜会であれば、国外の要人も招待される訳で、一度の失敗が致命傷になるケースも。
そんな場にぶっつけ本番で挑ませるよりは、学園卒業時に一度、王宮のパーティーという物を経験させておこう。という配慮がなされたのだ。
また、学園卒業と同時に成人と見做されるこの国において、卒業パーティーは社交界へのお披露目でもあるので、有力貴族の殆どが出席する。
故に、学園主催のパーティーであるにも拘らず、成人していない在校生は基本的には参加しない。
例外は卒業生の弟妹と婚約者。
未成年を参加させる場合は、保護者が付き添い、無礼な振る舞いをしない様に目を光らせるのが条件となっている。
まあ、それは建前であって、ずっと保護者が付き添っているケースは少ないらしいが、子供が問題を起こしたりすれば、王家主催の夜会の場合と同等の処罰がくだるのだから、礼儀が身に付いてない子を連れてくる者は滅多にいない。
当然ながら、処罰の対象は未成年だけではない。
なので、卒業生にとっては、このパーティーが最後の関門であるとも言えるのだ。
───と、担任教師が懇切丁寧に説明してくれいてるのだが……。
ここはAクラスの教室だ。
配られた書類を読まない馬鹿なんて、このクラスにはいない。
皆、『知ってます』と言わんばかりの顔で、話を聞き流している。
教師だって、何も好きでこんな無駄な事をしている訳では無いだろう。
決まり事だとはいえ、ご苦労様である。
私も勿論、配られた書類を隅々まで読んだが、殆どが乙女ゲームにより既知の内容であった。
それにしても、そんな大事な卒業パーティーで婚約破棄イベントを起こしたゲームの中のクリスティアンって、一体……。
改めて考えると、いくら王太子と聖女になっているとはいえ、かなりヤバいカップルだよね。
あれは乙女ゲームだからギリギリ成り立っていたのであって、現実に起こったら大問題どころの騒ぎじゃない。
本当に、阻止出来て良かったよ。
教室の窓から外をボンヤリと眺めながら、そんなとりとめの無い事を考えている内に、いつの間にかパーティーの説明が終了していた。
「カフェテラスで軽食を食べて、お茶をしてから帰らない?」
ベアトリスに誘われて、私もアイザックも頷いた。
明日の卒業式は学園の講堂で行われるが、その後のパーティーの支度もあるので他の場所に立ち入る時間は多分無いだろう。
だから、学園内を彷徨けるのも今日が最後だと思うと感慨深くて、なんとなく帰るのが惜しい様な気持ちになる。
同じ事を考える卒業生は多いらしく、食堂もカフェテラスも大勢の人で賑わっていた。
乙女ゲームのメイン舞台となっている学園だから、良い思い出ばかりの場所ではないけれど、楽しい事も沢山あった。
「明日のパーティーには、キッシンジャー様もいらっしゃるのですか?」
そう聞いたら、ベアトリスは嬉しそうに頬を緩ませた。
「来てくださる予定よ。
今夜こちらに到着なさるの」
「それは楽しみですね」
「ええ。初めてパートナーとして参加するのだもの!」
卒業したら、生活環境がガラッと変わる。
婚約者がいる場合は、直ぐに婚姻を結ぶケースも多い。
私もそうだが、ベアトリスも例に漏れず、半年後には辺境の地へ旅立ってしまうのだ。
その事については、あまり考えない様にしていたけど、不意に淋しさが襲って来た。
「オフィーリア、そんな湿っぽい顔をしないで。
永遠のお別れじゃないのよ?」
「そうですよね。
遊びに行っても良いですか?」
「勿論、大歓迎するに決まってるじゃない!
それに、私が嫁ぐまでには、もう少し時間があるわ。
まだクリスティアン殿下も殴ってないしね」
フフッと悪戯っぽく笑うベアトリス。
「アレって冗談だったのでは?」
「半分冗談だったみたいだけど、一応本人とサディアス殿下に確認してみたら、あっさり許可が取れたんだよ」
アイザックったら、余計な事を!
「秘密特訓もしてるのよ。
辺境に嫁ぐなら、護身術くらい使えた方が良いから、そのついでに」
「ニコラス様に教わってるのですか?」
「いいえ。
通信魔道具で、ハロルド様にその話をしたら、『女性同士の方が、小柄な体格を活かした戦い方を上手く教えられるだろう』って仰って、お知り合いの女性騎士の方を紹介して下さったの」
おやおや、辺境伯様。意外と独占欲が強かったのね。
「良かったですね」
「んー。
でも、その騎士様がまた素敵な方で、ハロルド様とどんな関係なのかなって邪推しちゃったり……。
ダメね、私」
いや、コッチも要らん嫉妬しちゃってるじゃん。
あっという間に婚約までした癖に、なんだろう? この両片想いみたいな状態は。
授業は既に全て終了しており、明日の式典に関する説明を受けるだけなので、午前中で終わる予定だ。
今は、担任教師から卒業式の後のパーティーについての説明が延々とされている。
既に概要が書かれた書面は各家に配られていたが、毎年何人か『聞いていない』とゴネる馬鹿が出るので念の為の措置である。
卒業式後、卒業生とその家族は一旦自邸に戻り、身支度を整えてから、各自、王宮のパーティー会場へと向かう。
学園内にも模擬夜会などに使用するホールがあるが、何故わざわざ王宮に会場を借りるのか?
それは、この学園が王家の管理下にあるという以外に、もう一つ理由があった。
この国では、王家主催の夜会などに下位貴族が呼ばれる事は殆ど無い。
とはいえ、皆無という訳ではなく、立太子の際や新王の即位など、国にとって重要な式典の場合には、全ての貴族家に招待状が届く。
その際、王宮の夜会を初めて経験する下位貴族が緊張や高揚感から大失態を演じてしまうという事象が、過去に多発したらしい。
当然、そこまでの大規模な夜会であれば、国外の要人も招待される訳で、一度の失敗が致命傷になるケースも。
そんな場にぶっつけ本番で挑ませるよりは、学園卒業時に一度、王宮のパーティーという物を経験させておこう。という配慮がなされたのだ。
また、学園卒業と同時に成人と見做されるこの国において、卒業パーティーは社交界へのお披露目でもあるので、有力貴族の殆どが出席する。
故に、学園主催のパーティーであるにも拘らず、成人していない在校生は基本的には参加しない。
例外は卒業生の弟妹と婚約者。
未成年を参加させる場合は、保護者が付き添い、無礼な振る舞いをしない様に目を光らせるのが条件となっている。
まあ、それは建前であって、ずっと保護者が付き添っているケースは少ないらしいが、子供が問題を起こしたりすれば、王家主催の夜会の場合と同等の処罰がくだるのだから、礼儀が身に付いてない子を連れてくる者は滅多にいない。
当然ながら、処罰の対象は未成年だけではない。
なので、卒業生にとっては、このパーティーが最後の関門であるとも言えるのだ。
───と、担任教師が懇切丁寧に説明してくれいてるのだが……。
ここはAクラスの教室だ。
配られた書類を読まない馬鹿なんて、このクラスにはいない。
皆、『知ってます』と言わんばかりの顔で、話を聞き流している。
教師だって、何も好きでこんな無駄な事をしている訳では無いだろう。
決まり事だとはいえ、ご苦労様である。
私も勿論、配られた書類を隅々まで読んだが、殆どが乙女ゲームにより既知の内容であった。
それにしても、そんな大事な卒業パーティーで婚約破棄イベントを起こしたゲームの中のクリスティアンって、一体……。
改めて考えると、いくら王太子と聖女になっているとはいえ、かなりヤバいカップルだよね。
あれは乙女ゲームだからギリギリ成り立っていたのであって、現実に起こったら大問題どころの騒ぎじゃない。
本当に、阻止出来て良かったよ。
教室の窓から外をボンヤリと眺めながら、そんなとりとめの無い事を考えている内に、いつの間にかパーティーの説明が終了していた。
「カフェテラスで軽食を食べて、お茶をしてから帰らない?」
ベアトリスに誘われて、私もアイザックも頷いた。
明日の卒業式は学園の講堂で行われるが、その後のパーティーの支度もあるので他の場所に立ち入る時間は多分無いだろう。
だから、学園内を彷徨けるのも今日が最後だと思うと感慨深くて、なんとなく帰るのが惜しい様な気持ちになる。
同じ事を考える卒業生は多いらしく、食堂もカフェテラスも大勢の人で賑わっていた。
乙女ゲームのメイン舞台となっている学園だから、良い思い出ばかりの場所ではないけれど、楽しい事も沢山あった。
「明日のパーティーには、キッシンジャー様もいらっしゃるのですか?」
そう聞いたら、ベアトリスは嬉しそうに頬を緩ませた。
「来てくださる予定よ。
今夜こちらに到着なさるの」
「それは楽しみですね」
「ええ。初めてパートナーとして参加するのだもの!」
卒業したら、生活環境がガラッと変わる。
婚約者がいる場合は、直ぐに婚姻を結ぶケースも多い。
私もそうだが、ベアトリスも例に漏れず、半年後には辺境の地へ旅立ってしまうのだ。
その事については、あまり考えない様にしていたけど、不意に淋しさが襲って来た。
「オフィーリア、そんな湿っぽい顔をしないで。
永遠のお別れじゃないのよ?」
「そうですよね。
遊びに行っても良いですか?」
「勿論、大歓迎するに決まってるじゃない!
それに、私が嫁ぐまでには、もう少し時間があるわ。
まだクリスティアン殿下も殴ってないしね」
フフッと悪戯っぽく笑うベアトリス。
「アレって冗談だったのでは?」
「半分冗談だったみたいだけど、一応本人とサディアス殿下に確認してみたら、あっさり許可が取れたんだよ」
アイザックったら、余計な事を!
「秘密特訓もしてるのよ。
辺境に嫁ぐなら、護身術くらい使えた方が良いから、そのついでに」
「ニコラス様に教わってるのですか?」
「いいえ。
通信魔道具で、ハロルド様にその話をしたら、『女性同士の方が、小柄な体格を活かした戦い方を上手く教えられるだろう』って仰って、お知り合いの女性騎士の方を紹介して下さったの」
おやおや、辺境伯様。意外と独占欲が強かったのね。
「良かったですね」
「んー。
でも、その騎士様がまた素敵な方で、ハロルド様とどんな関係なのかなって邪推しちゃったり……。
ダメね、私」
いや、コッチも要らん嫉妬しちゃってるじゃん。
あっという間に婚約までした癖に、なんだろう? この両片想いみたいな状態は。
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