176 / 200
176 逃亡者《レイラ?》
しおりを挟む
大量に購入したビールの栓を抜き、洗面器へ注いで並々と満たす。
仮住まいとしている集合住宅の部屋に設置された小さな浴室に、シュワシュワと炭酸が弾ける音がして、濃い酒の臭いが広がり、彼女は少し顔を顰めた。
背凭れの低い椅子に腰を下ろし、背中を預けて天井を仰ぎ見るように上半身を反らす。
背後の台の上に設置した洗面器の中に、ポチャンと後頭部を浸した状態で、そっと目を閉じた。
この体制はかなりキツいが、何度もやっているのでもう慣れた。
最初は浴室に寝そべってみたり、色々と試したが、これが一番満遍なく髪を浸す事が出来る。
(エイリーンの身体は意外と柔軟性が高いみたいなのよね)
だが、頭皮にビールが染みてピリピリと痛い感覚には、なかなか慣れない。
痛みを我慢して暫くそのまま髪を浸した彼女は、ビールの成分を洗い流さず、軽くタオルドライしただけで、魔道具のドライヤーを使って髪に熱を加えた。
揮発したアルコールの成分により、頭がクラクラする。
これは、前世の職場で利用者の婆さんが教えてくれた、古い時代に流行したという髪の脱色方法だ。
ビールに髪を浸し、熱か太陽光を当てる。
最初は効果がかなり弱くて、ガセネタかと疑ったが、何度も繰り返す事で徐々に髪色が明るくなった。
デイサービスの施設では、嫌々ながら老人達のくだらない話に耳を傾けていたが、何が役に立つか分からない物である。
髪全体が乾いてきたら、ここで漸く普通にシャンプーをする。
洗い終わってしまえば、不思議なくらい髪にアルコール臭は残らない。
だが、傷み切った髪がキシキシと指に絡まる感覚は酷く不快だ。
手触りの悪い髪を乾かしながら、彼女は重い溜息を吐き出す。
「何で私だけが、こんな目に……」
彼女は昼間の出来事を思い出していた。
街を歩いていたら、風で飛ばされてきた新聞が、彼女の足に絡み付いた。
それを拾い上げると、幸せそうに微笑む王太子夫妻の姿絵が大きく印刷されているのが目に入る。
最近、街を歩けば、何処もかしこもお祝いムード一色で、彼女の神経を容赦なく逆撫でした。
王太子妃の第二子懐妊が発表されたのだ。
更に、片隅に掲載された小さな記事に、悪役令嬢オフィーリア・エヴァレットの名前を見付け、彼女は人目も憚らず大きく顔を歪めた。
フォーガス伯爵領の感染症蔓延を終息させる為に、大きな役割を果たしたとして、オフィーリアは王家から褒賞を授かる事になったのだとか。
自分は苦労して逃亡を続けるハメになっているのに。
自分の推しであるヴィクターだって、このままでは死罪は免れないだろうに。
ヒロインを完璧に模倣した筈の自分がこんなに不幸になり、悪役令嬢が幸せを掴むなんて……。
酷い。
狡い。
有り得ない。
何がいけなかったのか?
何処で間違ったのか?
枯れたススキの穂みたいに変貌してしまった髪を梳りながら、彼女はこれまでの自分の行動を思い返した。
前世の記憶を思い出し、この世界がゲームの中なのだと確信した時、初めに違和感を持ったのは、その少し前にアイザックからぶつけられた言葉であった。
『君は以前、茶会で僕のオフィーリアに変な言い掛かりを付けたっていうご令嬢だよね?』
確かに彼は、エイリーンに向かってそう言ったのだ。
『僕のオフィーリア』
嫌っている筈の婚約者に対して使う表現ではない。
たが、アイザックとオフィーリアの間に本格的な溝が生まれるのは、学園入学の直前である。
それまでアイザックは、オフィーリアへの愛情が無くても、婚約者として誠実に接していたという設定だったので、あの言葉も『婚約予定の相手』に対する誠意から出た物なのだろうと、勝手に解釈した。
しかし、今にして思えば、この時点で既に彼女の考えは大きく間違えていたのかもしれない。
プリシラとヴィクターに接触するのは簡単だった。
先ずは『幻の裏設定』がこの世界にも反映されているのかを確認したかった。
どうにかしてヴィクターの手に星型の痣があるか確認しようとしたが、それはなかなか叶わなかった。
だから彼から『実は教皇の隠し子なのだ』と告白された時には、裏設定が生きていると分かり歓喜した。
裏設定を詳しく知っている自分なら、より上手く立ち回る事が出来ると思ったから。
学園に入学したプリシラから、アイザックが未だに婚約していない事と、クリスティアンの側近候補を降りた事を聞いた時には驚いた。
でもそれも、自分がシナリオと違う行動をしているからだと思った。
確か、バタフライなんとかっていう奴だ。
小さな出来事が、全く関係なさそうな場所で大きな出来事を引き起こす……みたいな事を、何かの漫画で読んだ気がする。
ゲームの中では、主であるクリスティアンを優先させるアイザックに、オフィーリアがブチ切れるというエピソードがあったので、クリスティアンの側近候補を降りたのは、オフィーリアの我儘なんじゃないかと思った。
『レイラもそう思う?
クリスティアン殿下もエヴァレット嬢と仲良くなってからヘーゼルダイン様が変わってしまったと言っていたわ!』
プリシラにそう言われて、やっぱり自分の予想が正しいのだと自信を持った。
サディアスが失脚した原因については裏設定にも出てこないので知らなかったが、変な薬を作らされた事をヴィクターから相談されて、教皇の企みなのだとピンと来た。
どちらにしても、最終的にサディアスが失脚してから教皇を引き摺り下ろせば良いだけの話だと考えて、ヴィクターを上手く唆した。
だけど、クリスティアンルートの完璧なハッピーエンドをプリシラに迎えさせる為には、アイザックがクリスティアンの側近候補である事が不可欠なのだ。
だから、邪魔な存在であるオフィーリアと引き離そうと、色々画策したのだが……。
どの行動も裏目に出てしまった。
もしも……、もしも、最初から間違っていたのだとしたら?
あのアイザックの言葉が、誠意からなんかじゃなく、単純に愛情から出た物だとしたら?
彼が悪役令嬢に対して、ゲームのシナリオとは違う感情を持っていたのなら、あの時点で既にシナリオと違う行動を取っている人間がいたのではないだろうか?
(もしかして、オフィーリアも転生者?)
遅れ馳せながらその可能性に辿り着いた彼女は、フルフルと体が震え出すのを止められなかった。
あの女のせいで、全てが上手く行かなかった。
あの女のせいで、幸せになれなかった。
あの女のせいで、自分の人生が滅茶苦茶になった。
そう思うと、腹の底から激しい憎悪が込み上げる。
何処に向ければ良いか分からなかった怒りの矛先が、漸く定まった気がした。
仮住まいとしている集合住宅の部屋に設置された小さな浴室に、シュワシュワと炭酸が弾ける音がして、濃い酒の臭いが広がり、彼女は少し顔を顰めた。
背凭れの低い椅子に腰を下ろし、背中を預けて天井を仰ぎ見るように上半身を反らす。
背後の台の上に設置した洗面器の中に、ポチャンと後頭部を浸した状態で、そっと目を閉じた。
この体制はかなりキツいが、何度もやっているのでもう慣れた。
最初は浴室に寝そべってみたり、色々と試したが、これが一番満遍なく髪を浸す事が出来る。
(エイリーンの身体は意外と柔軟性が高いみたいなのよね)
だが、頭皮にビールが染みてピリピリと痛い感覚には、なかなか慣れない。
痛みを我慢して暫くそのまま髪を浸した彼女は、ビールの成分を洗い流さず、軽くタオルドライしただけで、魔道具のドライヤーを使って髪に熱を加えた。
揮発したアルコールの成分により、頭がクラクラする。
これは、前世の職場で利用者の婆さんが教えてくれた、古い時代に流行したという髪の脱色方法だ。
ビールに髪を浸し、熱か太陽光を当てる。
最初は効果がかなり弱くて、ガセネタかと疑ったが、何度も繰り返す事で徐々に髪色が明るくなった。
デイサービスの施設では、嫌々ながら老人達のくだらない話に耳を傾けていたが、何が役に立つか分からない物である。
髪全体が乾いてきたら、ここで漸く普通にシャンプーをする。
洗い終わってしまえば、不思議なくらい髪にアルコール臭は残らない。
だが、傷み切った髪がキシキシと指に絡まる感覚は酷く不快だ。
手触りの悪い髪を乾かしながら、彼女は重い溜息を吐き出す。
「何で私だけが、こんな目に……」
彼女は昼間の出来事を思い出していた。
街を歩いていたら、風で飛ばされてきた新聞が、彼女の足に絡み付いた。
それを拾い上げると、幸せそうに微笑む王太子夫妻の姿絵が大きく印刷されているのが目に入る。
最近、街を歩けば、何処もかしこもお祝いムード一色で、彼女の神経を容赦なく逆撫でした。
王太子妃の第二子懐妊が発表されたのだ。
更に、片隅に掲載された小さな記事に、悪役令嬢オフィーリア・エヴァレットの名前を見付け、彼女は人目も憚らず大きく顔を歪めた。
フォーガス伯爵領の感染症蔓延を終息させる為に、大きな役割を果たしたとして、オフィーリアは王家から褒賞を授かる事になったのだとか。
自分は苦労して逃亡を続けるハメになっているのに。
自分の推しであるヴィクターだって、このままでは死罪は免れないだろうに。
ヒロインを完璧に模倣した筈の自分がこんなに不幸になり、悪役令嬢が幸せを掴むなんて……。
酷い。
狡い。
有り得ない。
何がいけなかったのか?
何処で間違ったのか?
枯れたススキの穂みたいに変貌してしまった髪を梳りながら、彼女はこれまでの自分の行動を思い返した。
前世の記憶を思い出し、この世界がゲームの中なのだと確信した時、初めに違和感を持ったのは、その少し前にアイザックからぶつけられた言葉であった。
『君は以前、茶会で僕のオフィーリアに変な言い掛かりを付けたっていうご令嬢だよね?』
確かに彼は、エイリーンに向かってそう言ったのだ。
『僕のオフィーリア』
嫌っている筈の婚約者に対して使う表現ではない。
たが、アイザックとオフィーリアの間に本格的な溝が生まれるのは、学園入学の直前である。
それまでアイザックは、オフィーリアへの愛情が無くても、婚約者として誠実に接していたという設定だったので、あの言葉も『婚約予定の相手』に対する誠意から出た物なのだろうと、勝手に解釈した。
しかし、今にして思えば、この時点で既に彼女の考えは大きく間違えていたのかもしれない。
プリシラとヴィクターに接触するのは簡単だった。
先ずは『幻の裏設定』がこの世界にも反映されているのかを確認したかった。
どうにかしてヴィクターの手に星型の痣があるか確認しようとしたが、それはなかなか叶わなかった。
だから彼から『実は教皇の隠し子なのだ』と告白された時には、裏設定が生きていると分かり歓喜した。
裏設定を詳しく知っている自分なら、より上手く立ち回る事が出来ると思ったから。
学園に入学したプリシラから、アイザックが未だに婚約していない事と、クリスティアンの側近候補を降りた事を聞いた時には驚いた。
でもそれも、自分がシナリオと違う行動をしているからだと思った。
確か、バタフライなんとかっていう奴だ。
小さな出来事が、全く関係なさそうな場所で大きな出来事を引き起こす……みたいな事を、何かの漫画で読んだ気がする。
ゲームの中では、主であるクリスティアンを優先させるアイザックに、オフィーリアがブチ切れるというエピソードがあったので、クリスティアンの側近候補を降りたのは、オフィーリアの我儘なんじゃないかと思った。
『レイラもそう思う?
クリスティアン殿下もエヴァレット嬢と仲良くなってからヘーゼルダイン様が変わってしまったと言っていたわ!』
プリシラにそう言われて、やっぱり自分の予想が正しいのだと自信を持った。
サディアスが失脚した原因については裏設定にも出てこないので知らなかったが、変な薬を作らされた事をヴィクターから相談されて、教皇の企みなのだとピンと来た。
どちらにしても、最終的にサディアスが失脚してから教皇を引き摺り下ろせば良いだけの話だと考えて、ヴィクターを上手く唆した。
だけど、クリスティアンルートの完璧なハッピーエンドをプリシラに迎えさせる為には、アイザックがクリスティアンの側近候補である事が不可欠なのだ。
だから、邪魔な存在であるオフィーリアと引き離そうと、色々画策したのだが……。
どの行動も裏目に出てしまった。
もしも……、もしも、最初から間違っていたのだとしたら?
あのアイザックの言葉が、誠意からなんかじゃなく、単純に愛情から出た物だとしたら?
彼が悪役令嬢に対して、ゲームのシナリオとは違う感情を持っていたのなら、あの時点で既にシナリオと違う行動を取っている人間がいたのではないだろうか?
(もしかして、オフィーリアも転生者?)
遅れ馳せながらその可能性に辿り着いた彼女は、フルフルと体が震え出すのを止められなかった。
あの女のせいで、全てが上手く行かなかった。
あの女のせいで、幸せになれなかった。
あの女のせいで、自分の人生が滅茶苦茶になった。
そう思うと、腹の底から激しい憎悪が込み上げる。
何処に向ければ良いか分からなかった怒りの矛先が、漸く定まった気がした。
1,530
お気に入りに追加
6,320
あなたにおすすめの小説

[完結]本当にバカね
シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。
この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。
貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。
入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。
私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。
【完結】恋は、終わったのです
楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。
今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。
『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』
身長を追い越してしまった時からだろうか。
それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。
あるいは――あの子に出会った時からだろうか。
――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。

ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のキャリーヌは、婚約者で王太子のジェイデンから、婚約を解消して欲しいと告げられた。聞けば視察で来ていたディステル王国の王女、ラミアを好きになり、彼女と結婚したいとの事。
ラミアは非常に美しく、お色気むんむんの女性。ジェイデンが彼女の美しさの虜になっている事を薄々気が付いていたキャリーヌは、素直に婚約解消に応じた。
しかし、ジェイデンの要求はそれだけでは終わらなかったのだ。なんとキャリーヌに、自分の側妃になれと言い出したのだ。そもそも側妃は非常に問題のある制度だったことから、随分昔に廃止されていた。
もちろん、キャリーヌは側妃を拒否したのだが…
そんなキャリーヌをジェイデンは権力を使い、地下牢に閉じ込めてしまう。薄暗い地下牢で、食べ物すら与えられないキャリーヌ。
“側妃になるくらいなら、この場で息絶えた方がマシだ”
死を覚悟したキャリーヌだったが、なぜか地下牢から出され、そのまま家族が見守る中馬車に乗せられた。
向かった先は、実の姉の嫁ぎ先、大国カリアン王国だった。
深い傷を負ったキャリーヌを、カリアン王国で待っていたのは…
※恋愛要素よりも、友情要素が強く出てしまった作品です。
他サイトでも同時投稿しています。
どうぞよろしくお願いしますm(__)m
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる