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164 死の真相《サディアス》
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ブリンドル伯爵一家には、『追って沙汰を下す』として帰宅させた。
「伯爵夫妻は要らないな」
独り言ちながら、サディアスは眉間を揉み解す。
娘を甘やかせて愚か者に育て、自分達にとって都合の悪い存在となったら、直ぐに切り捨てる。
そんな無責任な人間に、いつまでも領地を任せて置く訳にはいかない。
夫妻は娘が生きていると知っていて、虚偽の死亡届けを出した訳ではない様だ。
しかし、どちらにせよ、レイラとエイリーンが同一人物であれば、家族にも責を問わねばならないだろう。
ただ、あの嫡男だけは悪くない。
ブリンドル伯爵夫妻には子供達との縁を切らせた上で、一度爵位を王家預かりとし、嫡男が成人したら戻すのはどうだろうか?
レイラの罪は『王位簒奪の教唆』であるから、普通ならば連座で家族全員に罰を与えるべきだ。
しかし、今のこの国には無能な貴族が多過ぎる。
使えない者達はどんどん排除しているが、だからこそ、能力のありそうな者は出来るだけ残しておきたい。
恩赦を与える事により、サディアスに忠誠を誓ってくれれば尚良しである。
(他の貴族から不満が出ない様に、何か尤もらしい名目を付けて上手く処理しなければならんな)
考えを巡らせている内に、サディアスは我知らず溜息を零していたらしい。
「お疲れの様ですね。
茶を用意させましょうか?」
そう声を掛けたのは、少し離れた机で先程の事情聴取の内容を記録していた側近だった。
「ありがとう。だが、元施設長の尋問が先だ」
「では、取り調べ室を準備します」
取り調べ室で待つサディアスのもとへ、元施設長が連れて来られた。
銀縁の眼鏡をかけた、神経質そうな男である。
目の下には隈が出来ており、以前姿を見た時よりも窶れた印象を受けた。
勾留中の容疑者達は、基本的には人道的に扱われているが、それでも地下牢の居心地は良いとは言えないのだろう。
「今日はお前に確認したいことがある」
「……な、何でしょうか?」
元施設長は、これまでの取り調べ担当者ではなく、王太子自らが呼び出した事に怯えているらしく、ソワソワと落ち着かない様子であった。
「エイリーン・ブリンドルという貴族令嬢を覚えているか?」
「……いいえ。
その……、これまで療養施設に入った者はかなりの人数ですし、私は直接彼等と関わる立場ではありませんでしたので、残念ながら一人一人を覚えてはいないのです」
少し口籠もりながらそう答えつつ、元施設長は眼鏡のブリッジ部分をクイッと人差し指で押し上げた。
事前に聞いていた担当の取り調べ官の報告によれば、これは元施設長が嘘をつく時の癖であるらしい。
「そうか? だが、おかしいな。
私は、エイリーン・ブリンドルが療養施設に入所していたとは、一言も言っていないのだが」
サディアスが冷笑を浮かべながらそう言うと、元施設長は自分の失言に気付いてオロオロと視線を彷徨わせた。
「言っておくが、変に誤魔化そうとしない方が良いぞ。
どうせ嘘はいつかバレる物だし、その時に困るのはお前自身だ。
それとも、私がお前如きの嘘も見抜けないうつけ者にでも見えるか?」
「も、申し訳ございませんっっ!!!」
椅子から転げ落ちる様に床に座り込んだ元施設長は、両手をついてガバッと頭を下げた。
「……良いから、椅子に座って知っている事を全て話せ」
「…………はい」
表情が抜け落ちた元施設長は、椅子に再び腰を下ろすと、観念した様に訥々と語り始めた。
エイリーンを家に帰そうとした事が、そもそもの始まりだったという。
療養施設の経営は、入所者の家族が支払う毎月の費用によって賄われている。
それに加えて、高位貴族や金持ちの入所者の家族は、チップを弾んだり寄付をしてくれる事が多い。
それは入所している家族を優遇して貰いたいからと言う理由の場合と、口止め料代わりである場合に分かれるそうだ。
しかし、ブリンドル伯爵は月々の費用以外を出さなかった。
寄付金の一部を着服していた元施設長は、『高位貴族の癖に……』と、内心苦々しく思っていた。
そんな時、とある高位貴族のご隠居を入所させたいという打診を受けたという。
羽振りの良い貴族家だったので、多額の寄付が見込めるのではないかと期待したが、生憎当時は貴族用の部屋が満室だった。
だから元施設長は、エイリーンを家に帰そうとしたのだ。
元々、エイリーンは施設に連れてこられた時には既におかしな言動も落ち着いており、元施設長は『入所の必要は無いのでは?』と思っていたが、ブリンドル伯爵がどうしてもと頼み込むので受け入れたという経緯があった。
『エイリーン嬢の心の問題は既に完治している様に見られます。
後はご自宅で療養なさった方が、ご本人にとってもよろしいと思います』
元施設長は、ブリンドル伯爵夫妻を施設の応接室に呼び出してそう告げた。
当然伯爵夫妻は納得しなかったが、『入所待ちの方もいらっしゃるので、症状がない方をこれ以上置いておけません』と突っ撥ねた。
そして、夫妻をその場に残したまま、元施設長は部屋を出た。
その後、偶然応接室の前の廊下を通りかかったのが、たまたまボランティアとして施設を訪れていた、例の前マドック男爵夫人である。
扉がしっかりと閉まっていなかったせいか、そこで夫人はとんでもない会話を耳にした。
『どうしましょう?
気が触れた娘が家にいるなんて知られたら……』
とても母親とは思えないブリンドル伯爵夫人の酷い言葉に、マドック夫人は眉を顰めた。
『ああ、我々の社交界での立場はかなり悪くなるだろうな』
『こんな事なら、いっその事自殺でもしてくれれば良かったのに。
そうよ、家に戻る時に、盗賊にでも襲われた事にして……』
『シッ!!
誰が聞いているか分からないんだ。
こんな所でそんな事を話すもんじゃない!』
襲われた事にして……、何だと言うのか?
殺そうとでも言うのか?
妻を叱責した伯爵も、この話が洩れる事を危惧しているだけで、その悪魔の様な思い付きに対して憤っている様子は無い。
娘を亡くした過去があるマドック夫人はその娘に似た面影を持つエイリーンを哀れに思い、元施設長に多額の金を握らせて、死を偽装する手伝いをしろと依頼して来たという。
おりしも、王都では厄介な病が流行りつつあった。
ブリンドル夫妻に最後のチャンスを与えようというマドック夫人の指示で、『エイリーンがその病に罹った』と嘘の連絡をした。
酷い嘔吐や下痢で苦しみ、命を落とす事もある病である。
感染力は弱い病ではあるが、感染者の吐瀉物を浴びたりすれば流石に危険性は高まる。
そんな状態でも、娘に愛情があれば必ず見舞いに訪れるはず。
しかし、マドック夫人が定めた猶予期間を過ぎても、ブリンドル伯爵夫妻がエイリーンに面会に来る事はなかった。
「伯爵夫妻は要らないな」
独り言ちながら、サディアスは眉間を揉み解す。
娘を甘やかせて愚か者に育て、自分達にとって都合の悪い存在となったら、直ぐに切り捨てる。
そんな無責任な人間に、いつまでも領地を任せて置く訳にはいかない。
夫妻は娘が生きていると知っていて、虚偽の死亡届けを出した訳ではない様だ。
しかし、どちらにせよ、レイラとエイリーンが同一人物であれば、家族にも責を問わねばならないだろう。
ただ、あの嫡男だけは悪くない。
ブリンドル伯爵夫妻には子供達との縁を切らせた上で、一度爵位を王家預かりとし、嫡男が成人したら戻すのはどうだろうか?
レイラの罪は『王位簒奪の教唆』であるから、普通ならば連座で家族全員に罰を与えるべきだ。
しかし、今のこの国には無能な貴族が多過ぎる。
使えない者達はどんどん排除しているが、だからこそ、能力のありそうな者は出来るだけ残しておきたい。
恩赦を与える事により、サディアスに忠誠を誓ってくれれば尚良しである。
(他の貴族から不満が出ない様に、何か尤もらしい名目を付けて上手く処理しなければならんな)
考えを巡らせている内に、サディアスは我知らず溜息を零していたらしい。
「お疲れの様ですね。
茶を用意させましょうか?」
そう声を掛けたのは、少し離れた机で先程の事情聴取の内容を記録していた側近だった。
「ありがとう。だが、元施設長の尋問が先だ」
「では、取り調べ室を準備します」
取り調べ室で待つサディアスのもとへ、元施設長が連れて来られた。
銀縁の眼鏡をかけた、神経質そうな男である。
目の下には隈が出来ており、以前姿を見た時よりも窶れた印象を受けた。
勾留中の容疑者達は、基本的には人道的に扱われているが、それでも地下牢の居心地は良いとは言えないのだろう。
「今日はお前に確認したいことがある」
「……な、何でしょうか?」
元施設長は、これまでの取り調べ担当者ではなく、王太子自らが呼び出した事に怯えているらしく、ソワソワと落ち着かない様子であった。
「エイリーン・ブリンドルという貴族令嬢を覚えているか?」
「……いいえ。
その……、これまで療養施設に入った者はかなりの人数ですし、私は直接彼等と関わる立場ではありませんでしたので、残念ながら一人一人を覚えてはいないのです」
少し口籠もりながらそう答えつつ、元施設長は眼鏡のブリッジ部分をクイッと人差し指で押し上げた。
事前に聞いていた担当の取り調べ官の報告によれば、これは元施設長が嘘をつく時の癖であるらしい。
「そうか? だが、おかしいな。
私は、エイリーン・ブリンドルが療養施設に入所していたとは、一言も言っていないのだが」
サディアスが冷笑を浮かべながらそう言うと、元施設長は自分の失言に気付いてオロオロと視線を彷徨わせた。
「言っておくが、変に誤魔化そうとしない方が良いぞ。
どうせ嘘はいつかバレる物だし、その時に困るのはお前自身だ。
それとも、私がお前如きの嘘も見抜けないうつけ者にでも見えるか?」
「も、申し訳ございませんっっ!!!」
椅子から転げ落ちる様に床に座り込んだ元施設長は、両手をついてガバッと頭を下げた。
「……良いから、椅子に座って知っている事を全て話せ」
「…………はい」
表情が抜け落ちた元施設長は、椅子に再び腰を下ろすと、観念した様に訥々と語り始めた。
エイリーンを家に帰そうとした事が、そもそもの始まりだったという。
療養施設の経営は、入所者の家族が支払う毎月の費用によって賄われている。
それに加えて、高位貴族や金持ちの入所者の家族は、チップを弾んだり寄付をしてくれる事が多い。
それは入所している家族を優遇して貰いたいからと言う理由の場合と、口止め料代わりである場合に分かれるそうだ。
しかし、ブリンドル伯爵は月々の費用以外を出さなかった。
寄付金の一部を着服していた元施設長は、『高位貴族の癖に……』と、内心苦々しく思っていた。
そんな時、とある高位貴族のご隠居を入所させたいという打診を受けたという。
羽振りの良い貴族家だったので、多額の寄付が見込めるのではないかと期待したが、生憎当時は貴族用の部屋が満室だった。
だから元施設長は、エイリーンを家に帰そうとしたのだ。
元々、エイリーンは施設に連れてこられた時には既におかしな言動も落ち着いており、元施設長は『入所の必要は無いのでは?』と思っていたが、ブリンドル伯爵がどうしてもと頼み込むので受け入れたという経緯があった。
『エイリーン嬢の心の問題は既に完治している様に見られます。
後はご自宅で療養なさった方が、ご本人にとってもよろしいと思います』
元施設長は、ブリンドル伯爵夫妻を施設の応接室に呼び出してそう告げた。
当然伯爵夫妻は納得しなかったが、『入所待ちの方もいらっしゃるので、症状がない方をこれ以上置いておけません』と突っ撥ねた。
そして、夫妻をその場に残したまま、元施設長は部屋を出た。
その後、偶然応接室の前の廊下を通りかかったのが、たまたまボランティアとして施設を訪れていた、例の前マドック男爵夫人である。
扉がしっかりと閉まっていなかったせいか、そこで夫人はとんでもない会話を耳にした。
『どうしましょう?
気が触れた娘が家にいるなんて知られたら……』
とても母親とは思えないブリンドル伯爵夫人の酷い言葉に、マドック夫人は眉を顰めた。
『ああ、我々の社交界での立場はかなり悪くなるだろうな』
『こんな事なら、いっその事自殺でもしてくれれば良かったのに。
そうよ、家に戻る時に、盗賊にでも襲われた事にして……』
『シッ!!
誰が聞いているか分からないんだ。
こんな所でそんな事を話すもんじゃない!』
襲われた事にして……、何だと言うのか?
殺そうとでも言うのか?
妻を叱責した伯爵も、この話が洩れる事を危惧しているだけで、その悪魔の様な思い付きに対して憤っている様子は無い。
娘を亡くした過去があるマドック夫人はその娘に似た面影を持つエイリーンを哀れに思い、元施設長に多額の金を握らせて、死を偽装する手伝いをしろと依頼して来たという。
おりしも、王都では厄介な病が流行りつつあった。
ブリンドル夫妻に最後のチャンスを与えようというマドック夫人の指示で、『エイリーンがその病に罹った』と嘘の連絡をした。
酷い嘔吐や下痢で苦しみ、命を落とす事もある病である。
感染力は弱い病ではあるが、感染者の吐瀉物を浴びたりすれば流石に危険性は高まる。
そんな状態でも、娘に愛情があれば必ず見舞いに訪れるはず。
しかし、マドック夫人が定めた猶予期間を過ぎても、ブリンドル伯爵夫妻がエイリーンに面会に来る事はなかった。
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