162 / 200
162 メイクの魔法
しおりを挟む
エイリーン・ブリンドルは、子供の頃のお茶会で、その頃私がアイザックと親しいと噂になっていた事に嫉妬して、理不尽に突っ掛かって来たご令嬢だ。
とは言っても、悪役よりも目立つ縦ロールだった事と、軽いジャブ程度の嫌味を言われて倍返ししてしまった事くらいしか覚えていない。
いやぁ、我ながらあの頃は大人げなかったわ。
その後は何度かお茶会とかで顔を合わせたが、返り討ちを警戒したのか不自然なまでに距離を保たれていたし、そうこうしている内にいつの間にか全く姿を見かけなくなっていた。
だから、今日アイザックの口から名前を聞くまで、すっかりその存在を忘れ去っていたのだけど、そう言えば彼女は蜂蜜みたいな琥珀色の瞳にライトブラウンの髪だった気がする。
「まさか、死んでいたなんて……」
考えてみれば、フレデリカの森のお茶会に参加したりベアトリスの取り巻きになろうとしていたり、結構上昇志向が強そうなタイプだったのに、学園内で一度も見かけた事がないなんて変よね?
「実は、彼女はオフィーリアに迷惑をかけてから一年ちょっと経った頃、秘密裏に療養施設へと入れられていたらしいんだ。
症状が落ち着いて実家に戻れることになり、手続きをしていた所で、流行り病によって命を落としたとされている」
療養施設といえば、教会が運営している。
またしても教会が絡んでくるのか。
それに、あそこは精神的な問題を抱えた人が入る施設である。
私が前世の記憶を思い出した当時、家族にさえもその話をしなかったのは、おかしくなったと思われてしまうのではないかと危惧したからだ。
もしかしたらエイリーンが転生者で、前世の記憶に関する事をうっかり口走ってしまったとしたら……。
療養施設に入ることになったのも頷ける。
だとすると、やはりレイラがエイリーンである可能性も出て来るのではないだろうか?
レイラはプリシラに前世の知識を踏まえてアドバイスをしていた節があるのだから。
「アイザックは、そのエイリーンが生きている可能性があると思いますか?」
「無いとは言い切れない。
だが、エイリーンがたった一人で多くの人を騙すのは不可能だろう。
協力者の力を借りて自ら別人になりすましているのか、それとも両親が死を偽装して娘を捨てたのか……」
「いずれにしても、関係者に話を聞く必要がありますね」
「うん。
ブリンドル伯爵夫妻には、サディアス殿下が話を聞くって言ってた。
後は施設長だな」
療養施設の施設長は、例の感染症を蔓延させた実行犯の妹さんを人質にしていた罪により、処遇が決まるまで王宮の地下牢に勾留されている。
なんか、叩けばどんどん埃が出そうである。
「だが、そもそも前男爵夫人の邸にいた女性がエイリーン・ブリンドルだったとしても、彼女がヴィクターの恋人のレイラだという確証は無いんだよな。
男爵夫妻の間でも、似顔絵と同一人物であるかどうか、意見が分かれていたし」
その肖像画は、現在サディアス殿下の手に渡っているらしいので、私が見せて貰うのは難しい。
その代わりと言ってはなんだが、アイザックの感想を聞いてみる事にした。
「アイザックはご覧になってみて、どう思いました?」
「どちらとも言えない。
肖像画の女性とエイリーンはとても似ていると思うが、レイラの似顔絵はそれに比べると大人しそうと言うか……。
マドック男爵が言う様に、印象が違う気もするんだ」
「その程度の違いであれば、化粧でなんとでもなりそうです」
「ああ。男爵夫人もそう言ってた」
だとすると、やっぱり女性の意見の方が正しい気がする。
「じゃあ、この場で実演して見せましょうか。
リーザ、お願い出来るかしら?」
部屋の隅に控えていたリーザに声を掛けると、彼女は「お任せください」と腕捲りをした。
リーザの手により、テーブルの上にメイク道具がズラリと並べられていく。
「化粧って、こんなに色々な道具を使うのか?」
「ええ、殿方には馴染みがないでしょうけど。
お化粧直し用にリーザが持ち歩いてくれている物なので、これでもほんの一部ですよ」
「女性は大変だな」
「でも、化粧で雰囲気を変えるのは、ちょっと楽しくもあるんです。
リーザ、優しそうな顔にしてくれる?」
「かしこまりました」
今日の私はいつも通りの薄化粧である。
私はベアトリスみたいに派手な美人では無いが、悪役なだけあって、かなり気が強そうな顔立ちをしている。
下手に大人しそうに見せても、舐められて絡まれたりしたら面倒なので、普段は素材を活かしたメイクにしてもらっていた。
リーザの手により、メイク落とし用のオイルで眉と目元のポイントメイクだけを落とされる。
その後、化粧水を染み込ませたコットンで、優しくオイルを拭き取ってもらった。
「へえ、そうやって化粧を落とすのか。
オフィーリアは化粧をしてなくても変わらないね」
「あんまりジッと見ないでください」
自分で言い出した事とはいえ、メイクの過程を間近で真剣に見られるのは、思った以上に恥ずかしい。
眉毛は剃ると後々面倒なので、コンシーラーで余分な部分を塗り潰しつつ、少し垂れ気味にして気が弱そうな印象に。
アイラインは目尻を下方向に少し長めに引いて、下瞼の目尻側にはピンクブラウンのシャドウを軽く入れた。
流石はリーザである。
注文通り、優しく柔らかい顔立ちに仕上げてくれた。
見慣れないから何か落ち着かないけど、我ながらなかなか可愛らしいと思う。
「こんな感じで如何でしょう」
やり切ったという得意げな顔で、リーザがアイザックに感想を求めた。
「個人的にはいつもの方が好きだけど、こっちも凄く愛らしいよね。
オフィーリアは何でも似合うんだな」
リーザはアイザックの言葉を聞いて、とても満足そうに頷いている。
「ええ、ええ。そうでしょうとも。
お嬢様はどんなメイクをしてもお美しいのです」
いや、今聞きたいのは、そういう感想じゃないんですけど?
「そうじゃなく!
少し化粧をいじっただけで、かなり印象が変わりましたでしょう? と、お聞きしているんですよ」
「ああ、そうだった。つい見惚れてしまった。
うん、確かに全然印象が違うね」
「でしょう?
全部の化粧を落とすと大変なので、今回は目元だけを変えましたが、ハイライトやシャドウを使えば顔の輪郭や、鼻の高さも若干違って見えます。
頬紅を乗せる位置を変えるだけでも、かなり印象が変わるんですよ」
「成る程なぁ。
化粧というのは奥深いのだな。
実際に見てみると、肖像画の女性が『レイラ』である可能性が高い気がしてきた」
アイザックが納得してくれたなら、態々目の前で化粧を落とした甲斐があった。
私とリーザは視線を交わして頷き合った。
その後、アイザックの膝に抱き上げられ、「可愛い可愛い」と何度も過剰に褒められてグッタリしたのは、また別の話である。
とは言っても、悪役よりも目立つ縦ロールだった事と、軽いジャブ程度の嫌味を言われて倍返ししてしまった事くらいしか覚えていない。
いやぁ、我ながらあの頃は大人げなかったわ。
その後は何度かお茶会とかで顔を合わせたが、返り討ちを警戒したのか不自然なまでに距離を保たれていたし、そうこうしている内にいつの間にか全く姿を見かけなくなっていた。
だから、今日アイザックの口から名前を聞くまで、すっかりその存在を忘れ去っていたのだけど、そう言えば彼女は蜂蜜みたいな琥珀色の瞳にライトブラウンの髪だった気がする。
「まさか、死んでいたなんて……」
考えてみれば、フレデリカの森のお茶会に参加したりベアトリスの取り巻きになろうとしていたり、結構上昇志向が強そうなタイプだったのに、学園内で一度も見かけた事がないなんて変よね?
「実は、彼女はオフィーリアに迷惑をかけてから一年ちょっと経った頃、秘密裏に療養施設へと入れられていたらしいんだ。
症状が落ち着いて実家に戻れることになり、手続きをしていた所で、流行り病によって命を落としたとされている」
療養施設といえば、教会が運営している。
またしても教会が絡んでくるのか。
それに、あそこは精神的な問題を抱えた人が入る施設である。
私が前世の記憶を思い出した当時、家族にさえもその話をしなかったのは、おかしくなったと思われてしまうのではないかと危惧したからだ。
もしかしたらエイリーンが転生者で、前世の記憶に関する事をうっかり口走ってしまったとしたら……。
療養施設に入ることになったのも頷ける。
だとすると、やはりレイラがエイリーンである可能性も出て来るのではないだろうか?
レイラはプリシラに前世の知識を踏まえてアドバイスをしていた節があるのだから。
「アイザックは、そのエイリーンが生きている可能性があると思いますか?」
「無いとは言い切れない。
だが、エイリーンがたった一人で多くの人を騙すのは不可能だろう。
協力者の力を借りて自ら別人になりすましているのか、それとも両親が死を偽装して娘を捨てたのか……」
「いずれにしても、関係者に話を聞く必要がありますね」
「うん。
ブリンドル伯爵夫妻には、サディアス殿下が話を聞くって言ってた。
後は施設長だな」
療養施設の施設長は、例の感染症を蔓延させた実行犯の妹さんを人質にしていた罪により、処遇が決まるまで王宮の地下牢に勾留されている。
なんか、叩けばどんどん埃が出そうである。
「だが、そもそも前男爵夫人の邸にいた女性がエイリーン・ブリンドルだったとしても、彼女がヴィクターの恋人のレイラだという確証は無いんだよな。
男爵夫妻の間でも、似顔絵と同一人物であるかどうか、意見が分かれていたし」
その肖像画は、現在サディアス殿下の手に渡っているらしいので、私が見せて貰うのは難しい。
その代わりと言ってはなんだが、アイザックの感想を聞いてみる事にした。
「アイザックはご覧になってみて、どう思いました?」
「どちらとも言えない。
肖像画の女性とエイリーンはとても似ていると思うが、レイラの似顔絵はそれに比べると大人しそうと言うか……。
マドック男爵が言う様に、印象が違う気もするんだ」
「その程度の違いであれば、化粧でなんとでもなりそうです」
「ああ。男爵夫人もそう言ってた」
だとすると、やっぱり女性の意見の方が正しい気がする。
「じゃあ、この場で実演して見せましょうか。
リーザ、お願い出来るかしら?」
部屋の隅に控えていたリーザに声を掛けると、彼女は「お任せください」と腕捲りをした。
リーザの手により、テーブルの上にメイク道具がズラリと並べられていく。
「化粧って、こんなに色々な道具を使うのか?」
「ええ、殿方には馴染みがないでしょうけど。
お化粧直し用にリーザが持ち歩いてくれている物なので、これでもほんの一部ですよ」
「女性は大変だな」
「でも、化粧で雰囲気を変えるのは、ちょっと楽しくもあるんです。
リーザ、優しそうな顔にしてくれる?」
「かしこまりました」
今日の私はいつも通りの薄化粧である。
私はベアトリスみたいに派手な美人では無いが、悪役なだけあって、かなり気が強そうな顔立ちをしている。
下手に大人しそうに見せても、舐められて絡まれたりしたら面倒なので、普段は素材を活かしたメイクにしてもらっていた。
リーザの手により、メイク落とし用のオイルで眉と目元のポイントメイクだけを落とされる。
その後、化粧水を染み込ませたコットンで、優しくオイルを拭き取ってもらった。
「へえ、そうやって化粧を落とすのか。
オフィーリアは化粧をしてなくても変わらないね」
「あんまりジッと見ないでください」
自分で言い出した事とはいえ、メイクの過程を間近で真剣に見られるのは、思った以上に恥ずかしい。
眉毛は剃ると後々面倒なので、コンシーラーで余分な部分を塗り潰しつつ、少し垂れ気味にして気が弱そうな印象に。
アイラインは目尻を下方向に少し長めに引いて、下瞼の目尻側にはピンクブラウンのシャドウを軽く入れた。
流石はリーザである。
注文通り、優しく柔らかい顔立ちに仕上げてくれた。
見慣れないから何か落ち着かないけど、我ながらなかなか可愛らしいと思う。
「こんな感じで如何でしょう」
やり切ったという得意げな顔で、リーザがアイザックに感想を求めた。
「個人的にはいつもの方が好きだけど、こっちも凄く愛らしいよね。
オフィーリアは何でも似合うんだな」
リーザはアイザックの言葉を聞いて、とても満足そうに頷いている。
「ええ、ええ。そうでしょうとも。
お嬢様はどんなメイクをしてもお美しいのです」
いや、今聞きたいのは、そういう感想じゃないんですけど?
「そうじゃなく!
少し化粧をいじっただけで、かなり印象が変わりましたでしょう? と、お聞きしているんですよ」
「ああ、そうだった。つい見惚れてしまった。
うん、確かに全然印象が違うね」
「でしょう?
全部の化粧を落とすと大変なので、今回は目元だけを変えましたが、ハイライトやシャドウを使えば顔の輪郭や、鼻の高さも若干違って見えます。
頬紅を乗せる位置を変えるだけでも、かなり印象が変わるんですよ」
「成る程なぁ。
化粧というのは奥深いのだな。
実際に見てみると、肖像画の女性が『レイラ』である可能性が高い気がしてきた」
アイザックが納得してくれたなら、態々目の前で化粧を落とした甲斐があった。
私とリーザは視線を交わして頷き合った。
その後、アイザックの膝に抱き上げられ、「可愛い可愛い」と何度も過剰に褒められてグッタリしたのは、また別の話である。
1,771
お気に入りに追加
6,320
あなたにおすすめの小説

[完結]本当にバカね
シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。
この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。
貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。
入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。
私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。
【完結】恋は、終わったのです
楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。
今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。
『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』
身長を追い越してしまった時からだろうか。
それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。
あるいは――あの子に出会った時からだろうか。
――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。

ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のキャリーヌは、婚約者で王太子のジェイデンから、婚約を解消して欲しいと告げられた。聞けば視察で来ていたディステル王国の王女、ラミアを好きになり、彼女と結婚したいとの事。
ラミアは非常に美しく、お色気むんむんの女性。ジェイデンが彼女の美しさの虜になっている事を薄々気が付いていたキャリーヌは、素直に婚約解消に応じた。
しかし、ジェイデンの要求はそれだけでは終わらなかったのだ。なんとキャリーヌに、自分の側妃になれと言い出したのだ。そもそも側妃は非常に問題のある制度だったことから、随分昔に廃止されていた。
もちろん、キャリーヌは側妃を拒否したのだが…
そんなキャリーヌをジェイデンは権力を使い、地下牢に閉じ込めてしまう。薄暗い地下牢で、食べ物すら与えられないキャリーヌ。
“側妃になるくらいなら、この場で息絶えた方がマシだ”
死を覚悟したキャリーヌだったが、なぜか地下牢から出され、そのまま家族が見守る中馬車に乗せられた。
向かった先は、実の姉の嫁ぎ先、大国カリアン王国だった。
深い傷を負ったキャリーヌを、カリアン王国で待っていたのは…
※恋愛要素よりも、友情要素が強く出てしまった作品です。
他サイトでも同時投稿しています。
どうぞよろしくお願いしますm(__)m
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる