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161 その正体は?《アイザック》
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「急に大声出すなよ。驚いたじゃないか」
チラリと後ろを見て苦言を呈したアイザックに、侍従は悪びれもせずに「スンマセン」と謝った。
「で、どうした?」
「この若い方の女性、アレですよ。ほらっ、あの御令嬢」
アイザックの問いに、侍従は顔の横で両手をクルクルと捩る動作をして見せた。
その仕草で、アイザックの頭に漸く一人の令嬢の姿が浮かぶ。
「……ああっ、パンかっ!?」
「そうですっ! パンですっっ!!」
やっと話が通じたとでも言う様に、侍従は何度も頷く。
「確かに顔は似ている気がするな。
だが、そうだとすると、パンの実家は虚偽の届けを出したという事になるが……」
アイザックは誰に問うでもなく呟き、考え込んだ。
目の前で繰り広げられる謎の会話に、男爵夫妻は首を傾げる。
「「……パン?」」
男爵夫妻が思わず零した疑問の声で、アイザックは我に返った。
「あぁ、いや、以前、クロワッサンみたいな髪型をしていた令嬢がいましてね」
「「……はぁ」」
アイザックの説明に曖昧な反応を返した男爵夫妻だが、『クロワッサン』と『髪型』がどうしても結びつかず、謎は深まるばかりであった。
二人の頭の中はクエスチョンマークで一杯になっている。
その後、おかしな方向へ向かいかけていた会話の流れをどうにか軌道修正し、前男爵夫人が女性を保護した経緯について、夫妻が知っている範囲内で話をしてもらった。
現男爵には十二歳で亡くなった妹がいた。
母が少し目を話した隙に道に飛び出し、馬車に轢かれたという痛ましい事故だったそうだ。
母はそれを生涯後悔し続けていたと言う。
死んだ娘との思い出が深い領地にいるのが辛かったのか、男爵位を息子が継いで引退してからは、父母は王都に小さな邸を購入して暮らし始めた。
そして夫に先立たれてからも、母はそのまま一人暮らしをしていた。
母方の実家も資産家だったし、母自身も投資が成功して多額の個人資産を有していたので、金銭的には困らなかった。
そして、不幸な境遇の子供達が少しでも良い環境で過ごせる様にと、孤児院や療養施設や治療院などで、熱心にボランティア活動をしていたのだとか。
そんな王都の邸に、母はある時から一人の若い女性を置く様になった。
『パン』こと、エイリーン・ブリンドルも過去に療養施設に入っていたので、もしもその女性の正体がエイリーンであるなら、そこで前男爵夫人と知り合ったのかもしれない。
息子夫妻には側仕えとして紹介したが、その身元についてはどんなに問い質しても明確な答えは返って来なかった。
母も身元を知らなかったのか、それとも何か訳ありで匿っていたのかは不明である。
一応『側仕え』という名目だったが、亡くなった娘に少し似た顔立ちの彼女を、母は随分と可愛がっていたらしい。
男爵夫妻はその存在を胡散臭く思っていたが、彼女が来てから母が明るく元気になった事についてはありがたく思っていた。
母が病に臥してからは短期間ではあるが献身的に介護をしてくれていたのもあって、葬儀の後、お礼として母の遺産の一部を彼女に譲ったそうだ。
一部と言っても相当な額だったのだが、金持ちのマドック男爵家にとっては端金である。
彼女が『レイラ』と同一人物なら、お金に困っていなかった事にも納得である。
しかし、男爵夫妻はその女性との交流を続けておらず、現在彼女がどうしているのかは知らないと言う。
一通り話を聞いたアイザック達は、例の肖像画を貸してもらい、丁寧に礼を述べて王都へ帰還した。
往路よりは余裕を持っていた一行は、夜の移動を避けて途中の街に一泊した。
そこでアイザックは、その街の特産品である桃を使ったジャムを、自分の家族とエヴァレット家用に。そして銀細工の髪飾りをオフィーリア用の土産に購入した。
翌日の昼過ぎに王宮に到着したアイザックは、そのままサディアスに男爵夫妻から聞いた話を報告した。
「なるほど。
エイリーン・ブリンドルである可能性か……。
その件については、私がブリンドル家に確認しておくよ。
ところでさぁ、マドック男爵領に行ったなら、当然土産があるんだろう?」
サディアスの期待を込めた眼差しを、アイザックは華麗にスルーした。
「なんの事でしょう?
僕達は遊びに行ったのではないのですから、土産など買う余裕はありません」
「そんな事言って、エヴァレット嬢には土産を買って来たんじゃないか?」
「そりゃあ当然です」
「ならば私にだって……」
「無いです」
「マジかよっ!?
マドック領まで行って、ワインの一本も買ってこなかったのか?」
ショックを受けた様子のサディアスを見て、アイザックはニヤリと笑った。
「冗談です」
扉の外に控えていた侍従からワインの瓶を受け取り、サディアスに手渡した。
「おおっ、凄いなっっ! 限定生産のレアモノじゃないか!」
(意外と単純なんだよな)
途端に上機嫌になったサディアスに、アイザックは密かに苦笑する。
正確に言えばアイザックはサディアスへの土産を買うつもりなど毛頭無かったのだが、優秀な侍従がエヴァレット家とヘーゼルダイン家の分を買うついでに、勝手に用意してくれていたのだ。
まあ、横暴な上司に恩を売るのも悪くはない。
早速賄賂の効果が出たのか、「疲れただろうから、今日はもう帰って良いぞ」と言われ、サディアスの気が変わらない内にと素早く帰宅した。
今日もヘーゼルダイン公爵邸にはオフィーリアが家政を手伝いに来ていた。
邪魔する訳にはいかないが、三時にはティータイムを兼ねた休憩を取るはずである。
その時間は共に過ごしたいと、執事に伝言を頼む。
彼女の休憩時間を待つ間、移動で汗をかいていたアイザックは湯浴みを済ませた。
愛する彼女に「汗臭い」とか言われたら、生きていけない。
汗を洗い流して、身支度を整えた頃、丁度オフィーリアの休憩時間になった。
先日と同じく談話室に茶を用意してもらい、暫しの逢瀬を楽しむ事にする。
「お帰りなさい。ご無事で何よりです」
そう言って迎えてくれたオフィーリアにハグをする。
湯浴みをしておいて大正解だった。
お茶を飲みながら、男爵夫妻に聞いた話をオフィーリアにも報告した。
勿論、肖像画についても。
「では、エイリーン・ブリンドル伯爵令嬢が、その保護されていた女性の可能性があるって事ですか?」
「いや……。だが、そうだとすると、一つ大きな問題があるんだよ」
煮え切らない返事をしたアイザックに、オフィーリアは首を傾げる。
「問題って、なんですか?」
「実は、エイリーン・ブリンドルは、四年前に死亡しているんだ」
チラリと後ろを見て苦言を呈したアイザックに、侍従は悪びれもせずに「スンマセン」と謝った。
「で、どうした?」
「この若い方の女性、アレですよ。ほらっ、あの御令嬢」
アイザックの問いに、侍従は顔の横で両手をクルクルと捩る動作をして見せた。
その仕草で、アイザックの頭に漸く一人の令嬢の姿が浮かぶ。
「……ああっ、パンかっ!?」
「そうですっ! パンですっっ!!」
やっと話が通じたとでも言う様に、侍従は何度も頷く。
「確かに顔は似ている気がするな。
だが、そうだとすると、パンの実家は虚偽の届けを出したという事になるが……」
アイザックは誰に問うでもなく呟き、考え込んだ。
目の前で繰り広げられる謎の会話に、男爵夫妻は首を傾げる。
「「……パン?」」
男爵夫妻が思わず零した疑問の声で、アイザックは我に返った。
「あぁ、いや、以前、クロワッサンみたいな髪型をしていた令嬢がいましてね」
「「……はぁ」」
アイザックの説明に曖昧な反応を返した男爵夫妻だが、『クロワッサン』と『髪型』がどうしても結びつかず、謎は深まるばかりであった。
二人の頭の中はクエスチョンマークで一杯になっている。
その後、おかしな方向へ向かいかけていた会話の流れをどうにか軌道修正し、前男爵夫人が女性を保護した経緯について、夫妻が知っている範囲内で話をしてもらった。
現男爵には十二歳で亡くなった妹がいた。
母が少し目を話した隙に道に飛び出し、馬車に轢かれたという痛ましい事故だったそうだ。
母はそれを生涯後悔し続けていたと言う。
死んだ娘との思い出が深い領地にいるのが辛かったのか、男爵位を息子が継いで引退してからは、父母は王都に小さな邸を購入して暮らし始めた。
そして夫に先立たれてからも、母はそのまま一人暮らしをしていた。
母方の実家も資産家だったし、母自身も投資が成功して多額の個人資産を有していたので、金銭的には困らなかった。
そして、不幸な境遇の子供達が少しでも良い環境で過ごせる様にと、孤児院や療養施設や治療院などで、熱心にボランティア活動をしていたのだとか。
そんな王都の邸に、母はある時から一人の若い女性を置く様になった。
『パン』こと、エイリーン・ブリンドルも過去に療養施設に入っていたので、もしもその女性の正体がエイリーンであるなら、そこで前男爵夫人と知り合ったのかもしれない。
息子夫妻には側仕えとして紹介したが、その身元についてはどんなに問い質しても明確な答えは返って来なかった。
母も身元を知らなかったのか、それとも何か訳ありで匿っていたのかは不明である。
一応『側仕え』という名目だったが、亡くなった娘に少し似た顔立ちの彼女を、母は随分と可愛がっていたらしい。
男爵夫妻はその存在を胡散臭く思っていたが、彼女が来てから母が明るく元気になった事についてはありがたく思っていた。
母が病に臥してからは短期間ではあるが献身的に介護をしてくれていたのもあって、葬儀の後、お礼として母の遺産の一部を彼女に譲ったそうだ。
一部と言っても相当な額だったのだが、金持ちのマドック男爵家にとっては端金である。
彼女が『レイラ』と同一人物なら、お金に困っていなかった事にも納得である。
しかし、男爵夫妻はその女性との交流を続けておらず、現在彼女がどうしているのかは知らないと言う。
一通り話を聞いたアイザック達は、例の肖像画を貸してもらい、丁寧に礼を述べて王都へ帰還した。
往路よりは余裕を持っていた一行は、夜の移動を避けて途中の街に一泊した。
そこでアイザックは、その街の特産品である桃を使ったジャムを、自分の家族とエヴァレット家用に。そして銀細工の髪飾りをオフィーリア用の土産に購入した。
翌日の昼過ぎに王宮に到着したアイザックは、そのままサディアスに男爵夫妻から聞いた話を報告した。
「なるほど。
エイリーン・ブリンドルである可能性か……。
その件については、私がブリンドル家に確認しておくよ。
ところでさぁ、マドック男爵領に行ったなら、当然土産があるんだろう?」
サディアスの期待を込めた眼差しを、アイザックは華麗にスルーした。
「なんの事でしょう?
僕達は遊びに行ったのではないのですから、土産など買う余裕はありません」
「そんな事言って、エヴァレット嬢には土産を買って来たんじゃないか?」
「そりゃあ当然です」
「ならば私にだって……」
「無いです」
「マジかよっ!?
マドック領まで行って、ワインの一本も買ってこなかったのか?」
ショックを受けた様子のサディアスを見て、アイザックはニヤリと笑った。
「冗談です」
扉の外に控えていた侍従からワインの瓶を受け取り、サディアスに手渡した。
「おおっ、凄いなっっ! 限定生産のレアモノじゃないか!」
(意外と単純なんだよな)
途端に上機嫌になったサディアスに、アイザックは密かに苦笑する。
正確に言えばアイザックはサディアスへの土産を買うつもりなど毛頭無かったのだが、優秀な侍従がエヴァレット家とヘーゼルダイン家の分を買うついでに、勝手に用意してくれていたのだ。
まあ、横暴な上司に恩を売るのも悪くはない。
早速賄賂の効果が出たのか、「疲れただろうから、今日はもう帰って良いぞ」と言われ、サディアスの気が変わらない内にと素早く帰宅した。
今日もヘーゼルダイン公爵邸にはオフィーリアが家政を手伝いに来ていた。
邪魔する訳にはいかないが、三時にはティータイムを兼ねた休憩を取るはずである。
その時間は共に過ごしたいと、執事に伝言を頼む。
彼女の休憩時間を待つ間、移動で汗をかいていたアイザックは湯浴みを済ませた。
愛する彼女に「汗臭い」とか言われたら、生きていけない。
汗を洗い流して、身支度を整えた頃、丁度オフィーリアの休憩時間になった。
先日と同じく談話室に茶を用意してもらい、暫しの逢瀬を楽しむ事にする。
「お帰りなさい。ご無事で何よりです」
そう言って迎えてくれたオフィーリアにハグをする。
湯浴みをしておいて大正解だった。
お茶を飲みながら、男爵夫妻に聞いた話をオフィーリアにも報告した。
勿論、肖像画についても。
「では、エイリーン・ブリンドル伯爵令嬢が、その保護されていた女性の可能性があるって事ですか?」
「いや……。だが、そうだとすると、一つ大きな問題があるんだよ」
煮え切らない返事をしたアイザックに、オフィーリアは首を傾げる。
「問題って、なんですか?」
「実は、エイリーン・ブリンドルは、四年前に死亡しているんだ」
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