147 / 200
147 巻き込まれる運命
しおりを挟む
「アイザックも、捜索や捕縛に立ち会うのですか?」
少し心配になってしまい、つい握った手に力が入る。
捕縛については王宮騎士が行うのだと思うが、現場に赴くのであれば、危険がないとも限らない。
そんな心中を察したのか、アイザックは私の髪を優しく撫でた。
「サディアス殿下は中央教会の方へ行くけど、僕は療養施設の方の捜索に立ち会う予定だ。
事情を知らない職員が多いから、そんなに危険は無いと思うよ。
でも、多分今日の帰りは迎えに行けないから、エヴァレット家の馬車を出す様に手配しておいた」
「私の事はお気になさらず。
そんな事よりも、無茶はなさらないでくださいね」
「僕は君の方が心配だよ。
絶対に、危険には近付かないで」
そう言った彼は、ゆったりとした動作で私の額に口付けを落とした。
それは、まるで大切な人の無事を願う、神聖な儀式みたいで───。
今日ばかりは、向かい側の席に座る侍従さんの生温かい眼差しも、全く気にはならなかった。
登校した私は教室へと足を向ける。
廊下ですれ違う生徒達の話題は、専ら間近に控えている夏季休暇の過ごし方であった。
学園内には普段と変わらぬ日常が流れているのに、私の心だけは日常と乖離していてソワソワと落ち着かない。
なんだか自分がこの場にいてはならない異質な物にでもなってしまった様な心地であった。
それは、自分が転生者であり、この世界がゲームと酷似しているのだと気付いた頃の、忘れかけていた疎外感を思い起こさせ、余計に私の心を騒めかせた。
教室へ入ると、既に登校していたベアトリスは自席に着いていた。
「ベアトリス様、」
声を潜めて名を呼ぶと、彼女は小さく首を横に振る。
きっと彼女も宰相閣下から話を聞いているのだろう。
『普段通りに』というベアトリスの無言の指示を察した私は、何気無い風を装って彼女の隣の席に座り、当たり障りの無い話題を口にした。
「夏季休暇の予定は、もうお決まりになりました?」
「領地に混乱が残っているから、メイナードと一緒に行って来ようかと思って。
ほら、お父様はあまり王都を離れられないから」
「でも、思ったより早く感染拡大が終息しそうで良かったですね。
ご婚約者様も、まだアディンセル侯爵領にいらっしゃるのでしょう?」
「ええ。
まだ暫くは後処理を手伝ってくださるらしくて。久し振りにお会い出来そうよ」
そう言ったベアトリスは、仄かに頬を染めて幸せそうに微笑んだ。
それが起こったのは、一限目の授業の最中であった。
廊下の方が明らかに騒がしくなり、教室内にも動揺が広がる。
「何? 何かあったの?」
「なんか、叫び声が聞こえるぞ」
数人の生徒が立ち上がり、座ったままの生徒もキョロキョロとしている。
訝し気な顔をした教師は様子を確認しようと扉を開けた途端、「ゲホッ、コホッ!」と口元を手で覆って咳き込んだ。
目や鼻などの粘膜が、微かにピリピリと痛む。
(なんか空気が辛い気がする。もしかして、催涙系の何か?)
私は咄嗟に換気をしようと窓際へ向かった。
嫌な予感がした。
リンメル先生が、例えば唐辛子みたいな催涙効果がある素材を扱っている時に、騎士が踏み込んだのだとしたら……。
悪役令嬢の私は、どうしても事件に巻き込まれてしまう運命でも背負っているのだろうか?
そんな事を考えている間にも、バタバタと忙しない複数の足音と、「逃げるな」「捕まえろ!」などの怒鳴り声が近付いて来る。
入り口に立つ教師がドンッと押し退けられ、姿を現したのは、やはりリンメル先生だった。
調薬の時に使う物なのだろうか? ゴーグルみたいな眼鏡とマスクを着用している。
彼は教室の最前列に座るベアトリスを視界に捉えた。
(まずい)
そう思うと同時に、勝手に足が動いていた。
「オフィーリア様っっ!?」
いつの間にか隣に出現していた制服姿のユーニスが、悲鳴の様な声で私を引き留める。
分かっている。
いくら護衛が優秀でも、警護対象が無謀な行動をしたら守り切れないって事くらいは。
それでも、じっとしていられなかったのだ。
リンメル先生とベアトリスの間に立ち塞がると、彼は迷わず私へとターゲットを変更した。
背後から抱き締める様に肩の辺りを拘束し、片手に持った小さな注射器を、私の首筋に突き付ける。
(ひぃっっ!! 何が入ってるのよ!?)
キャーーッとか、ウワァッとか、複数の悲鳴やら叫び声やらが響き、教室に居た生徒達が蜘蛛の子を散らす様に逃げ出した。
ベアトリスとユーニスだけは、私に手を伸ばそうとしてくれたけど、リンメル先生の「退がれ」の声にピタリと動きを止め、少しずつ後退る。
リンメル先生は私を抱えたまま、ジリジリと窓際へ向かう。
三年Aクラスの教室は一階にあるので、窓から逃げようとしているのかも。
鼻水と涙を流した王宮騎士や、騒ぎを聞きつけた騎士科の生徒が教室に入って来たけど、私を人質にした先生に「動くな」と命じられれば、それ以上無闇に近付く事など出来ない。
入り口付近に固まる騎士達を警戒しながら、後ろ向きにゆっくりと動いていた先生は、どうやら机に行く手を阻まれたらしい。
ほんの一瞬注意が逸れた隙に、私は素早く腰の短剣を引き抜き、先生の太腿に振り下ろした。
ザクッと肉を突き刺す嫌な感触が手に伝わってくる。
「ぐあっっ!!」
呻き声が上がり、拘束が少し弱まったのを見て取ったユーニスが、私の手を強く引っ張り腕の中に囲い込んだ。
その瞬間、
───ドゴッ!!
派手な音が響き、そこに居たはずのリンメル先生が吹っ飛んだ。
死角から忍び寄っていたニコラスが、リンメル先生の腹に強烈な蹴りをお見舞いしたのだ。
蹴り飛ばされたリンメル先生は、床に崩れ落ちたまま動かなくなった。
まさか、ニコラスに助けられるとは思わなかった。
「オフィーリア様、ご無事ですか!?」
「オフィーリア!!」
今頃になって震えが止まらなくなった私の体を、ユーニスとベアトリスが泣きそうな顔で摩り続ける。
力が抜けた手の中から血塗れの短剣が滑り落ち、カシャンと小さな音を立てた。
床に転がっていた注射器の中身は、最初から空だった様だ。
リンメル先生は、捕縛の気配を感じて事前に逃亡準備をしていた訳ではなく、手近にあった脅しに使えそうな物を咄嗟に手に取って逃げただけなのだろう。
少し心配になってしまい、つい握った手に力が入る。
捕縛については王宮騎士が行うのだと思うが、現場に赴くのであれば、危険がないとも限らない。
そんな心中を察したのか、アイザックは私の髪を優しく撫でた。
「サディアス殿下は中央教会の方へ行くけど、僕は療養施設の方の捜索に立ち会う予定だ。
事情を知らない職員が多いから、そんなに危険は無いと思うよ。
でも、多分今日の帰りは迎えに行けないから、エヴァレット家の馬車を出す様に手配しておいた」
「私の事はお気になさらず。
そんな事よりも、無茶はなさらないでくださいね」
「僕は君の方が心配だよ。
絶対に、危険には近付かないで」
そう言った彼は、ゆったりとした動作で私の額に口付けを落とした。
それは、まるで大切な人の無事を願う、神聖な儀式みたいで───。
今日ばかりは、向かい側の席に座る侍従さんの生温かい眼差しも、全く気にはならなかった。
登校した私は教室へと足を向ける。
廊下ですれ違う生徒達の話題は、専ら間近に控えている夏季休暇の過ごし方であった。
学園内には普段と変わらぬ日常が流れているのに、私の心だけは日常と乖離していてソワソワと落ち着かない。
なんだか自分がこの場にいてはならない異質な物にでもなってしまった様な心地であった。
それは、自分が転生者であり、この世界がゲームと酷似しているのだと気付いた頃の、忘れかけていた疎外感を思い起こさせ、余計に私の心を騒めかせた。
教室へ入ると、既に登校していたベアトリスは自席に着いていた。
「ベアトリス様、」
声を潜めて名を呼ぶと、彼女は小さく首を横に振る。
きっと彼女も宰相閣下から話を聞いているのだろう。
『普段通りに』というベアトリスの無言の指示を察した私は、何気無い風を装って彼女の隣の席に座り、当たり障りの無い話題を口にした。
「夏季休暇の予定は、もうお決まりになりました?」
「領地に混乱が残っているから、メイナードと一緒に行って来ようかと思って。
ほら、お父様はあまり王都を離れられないから」
「でも、思ったより早く感染拡大が終息しそうで良かったですね。
ご婚約者様も、まだアディンセル侯爵領にいらっしゃるのでしょう?」
「ええ。
まだ暫くは後処理を手伝ってくださるらしくて。久し振りにお会い出来そうよ」
そう言ったベアトリスは、仄かに頬を染めて幸せそうに微笑んだ。
それが起こったのは、一限目の授業の最中であった。
廊下の方が明らかに騒がしくなり、教室内にも動揺が広がる。
「何? 何かあったの?」
「なんか、叫び声が聞こえるぞ」
数人の生徒が立ち上がり、座ったままの生徒もキョロキョロとしている。
訝し気な顔をした教師は様子を確認しようと扉を開けた途端、「ゲホッ、コホッ!」と口元を手で覆って咳き込んだ。
目や鼻などの粘膜が、微かにピリピリと痛む。
(なんか空気が辛い気がする。もしかして、催涙系の何か?)
私は咄嗟に換気をしようと窓際へ向かった。
嫌な予感がした。
リンメル先生が、例えば唐辛子みたいな催涙効果がある素材を扱っている時に、騎士が踏み込んだのだとしたら……。
悪役令嬢の私は、どうしても事件に巻き込まれてしまう運命でも背負っているのだろうか?
そんな事を考えている間にも、バタバタと忙しない複数の足音と、「逃げるな」「捕まえろ!」などの怒鳴り声が近付いて来る。
入り口に立つ教師がドンッと押し退けられ、姿を現したのは、やはりリンメル先生だった。
調薬の時に使う物なのだろうか? ゴーグルみたいな眼鏡とマスクを着用している。
彼は教室の最前列に座るベアトリスを視界に捉えた。
(まずい)
そう思うと同時に、勝手に足が動いていた。
「オフィーリア様っっ!?」
いつの間にか隣に出現していた制服姿のユーニスが、悲鳴の様な声で私を引き留める。
分かっている。
いくら護衛が優秀でも、警護対象が無謀な行動をしたら守り切れないって事くらいは。
それでも、じっとしていられなかったのだ。
リンメル先生とベアトリスの間に立ち塞がると、彼は迷わず私へとターゲットを変更した。
背後から抱き締める様に肩の辺りを拘束し、片手に持った小さな注射器を、私の首筋に突き付ける。
(ひぃっっ!! 何が入ってるのよ!?)
キャーーッとか、ウワァッとか、複数の悲鳴やら叫び声やらが響き、教室に居た生徒達が蜘蛛の子を散らす様に逃げ出した。
ベアトリスとユーニスだけは、私に手を伸ばそうとしてくれたけど、リンメル先生の「退がれ」の声にピタリと動きを止め、少しずつ後退る。
リンメル先生は私を抱えたまま、ジリジリと窓際へ向かう。
三年Aクラスの教室は一階にあるので、窓から逃げようとしているのかも。
鼻水と涙を流した王宮騎士や、騒ぎを聞きつけた騎士科の生徒が教室に入って来たけど、私を人質にした先生に「動くな」と命じられれば、それ以上無闇に近付く事など出来ない。
入り口付近に固まる騎士達を警戒しながら、後ろ向きにゆっくりと動いていた先生は、どうやら机に行く手を阻まれたらしい。
ほんの一瞬注意が逸れた隙に、私は素早く腰の短剣を引き抜き、先生の太腿に振り下ろした。
ザクッと肉を突き刺す嫌な感触が手に伝わってくる。
「ぐあっっ!!」
呻き声が上がり、拘束が少し弱まったのを見て取ったユーニスが、私の手を強く引っ張り腕の中に囲い込んだ。
その瞬間、
───ドゴッ!!
派手な音が響き、そこに居たはずのリンメル先生が吹っ飛んだ。
死角から忍び寄っていたニコラスが、リンメル先生の腹に強烈な蹴りをお見舞いしたのだ。
蹴り飛ばされたリンメル先生は、床に崩れ落ちたまま動かなくなった。
まさか、ニコラスに助けられるとは思わなかった。
「オフィーリア様、ご無事ですか!?」
「オフィーリア!!」
今頃になって震えが止まらなくなった私の体を、ユーニスとベアトリスが泣きそうな顔で摩り続ける。
力が抜けた手の中から血塗れの短剣が滑り落ち、カシャンと小さな音を立てた。
床に転がっていた注射器の中身は、最初から空だった様だ。
リンメル先生は、捕縛の気配を感じて事前に逃亡準備をしていた訳ではなく、手近にあった脅しに使えそうな物を咄嗟に手に取って逃げただけなのだろう。
1,620
お気に入りに追加
6,320
あなたにおすすめの小説

[完結]本当にバカね
シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。
この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。
貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。
入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。
私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。
【完結】恋は、終わったのです
楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。
今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。
『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』
身長を追い越してしまった時からだろうか。
それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。
あるいは――あの子に出会った時からだろうか。
――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。

ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のキャリーヌは、婚約者で王太子のジェイデンから、婚約を解消して欲しいと告げられた。聞けば視察で来ていたディステル王国の王女、ラミアを好きになり、彼女と結婚したいとの事。
ラミアは非常に美しく、お色気むんむんの女性。ジェイデンが彼女の美しさの虜になっている事を薄々気が付いていたキャリーヌは、素直に婚約解消に応じた。
しかし、ジェイデンの要求はそれだけでは終わらなかったのだ。なんとキャリーヌに、自分の側妃になれと言い出したのだ。そもそも側妃は非常に問題のある制度だったことから、随分昔に廃止されていた。
もちろん、キャリーヌは側妃を拒否したのだが…
そんなキャリーヌをジェイデンは権力を使い、地下牢に閉じ込めてしまう。薄暗い地下牢で、食べ物すら与えられないキャリーヌ。
“側妃になるくらいなら、この場で息絶えた方がマシだ”
死を覚悟したキャリーヌだったが、なぜか地下牢から出され、そのまま家族が見守る中馬車に乗せられた。
向かった先は、実の姉の嫁ぎ先、大国カリアン王国だった。
深い傷を負ったキャリーヌを、カリアン王国で待っていたのは…
※恋愛要素よりも、友情要素が強く出てしまった作品です。
他サイトでも同時投稿しています。
どうぞよろしくお願いしますm(__)m

ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる