103 / 200
103 嵐の前の静けさ
しおりを挟むぐっちゅぐっちゅと激しい後ろと前の同時攻撃にもう頭の中はぐっちゃぐちゃ。
今日のクライスはやけに色々聞いてくるから頑張って答えるのだけど、イきすぎてもぅ眠い。自分が何を言ってるのか、ちょっとわかんなくなってきた。
「俺も一番キルナが好きなんだ。お前だけを愛している」
「ふあっ……ぼ…くも…くらいしゅ…らけ。くらいしゅらけあいしてう…んぅ」
顎をつかんで振り向かされ、唇ににまたキスが落とされる。
与えられた唾液をごくんと飲み込んだら、彼の魔力がまた体に広がって染み渡っていく。身体にいっぱいの彼の魔力とキスマークによって、僕は物理的なかんじで彼のものになっていく気がした。
「なのに、お前は俺をユジンにくれてやるつもりなのか?」
「ふぁああん。ちょ、…ああ…っ」
「どうなんだ?」
室内が冷蔵庫みたいにひえっひえになっている。ゴリゴリと内壁を擦られ「ひぁああ」とまた中だけで盛大にイった。
「だってだって」
ああ、言っちゃダメ。これはナイショの話でしょ。とちょこっとだけ残った理性が止めようとするのに、口が勝手に気持ちを言葉にしていく。
「ぼく…だとクライスを…しあわせに…できないから」
「そんなはずがない!!」
クライスが怒っている。
ああ違う、泣いている?
彼の表情は見えないけど、辛そうな声に僕まで悲しくなってくる。
「くらいしゅ、なかないれ……んぁあ!?」
彼は(入れたまま)くるんと僕の向きを変え、向かい合わせになると僕の体を抱きしめた。
「俺は、お前以外の他の誰と結婚しても幸せになんてなれない。俺はお前を愛している。お前と一緒に生きていきたい。それがお前の信じる運命じゃなくても」
「……うんめいじゃ…なくても?」
彼の言葉の意味を考える。
(僕の信じる運命って、クライスとそんな話したことあったかな?)
「ひああちょっと、とまって…。いま、かんがえてぅとこだからあ!」
揺さぶる彼の動きが止まると、思い浮かんだ言葉があった。
ああ、もしかしてあれかな。ファーストキスにびっくりして、うっかりゲームの未来を喋っちゃったやつ。
『ぼくたちは結婚なんてしない。君は、えぐえぐっ、ユジンと結婚するのにぃ』
ーークライスとユジンが結婚する。
それが二人のハッピーエンドで、絶対正しい未来なのだと僕は信じていた。優斗から彼らの愛の素晴らしさを聞いていたし、ゲームの二人は結ばれて、真実幸せそうだったから。
悪役令息はそれを実現するための駒にすぎない。二人の邪魔をして恋をいいかんじに燃え上がらせ、卒業パーティーで断罪され、婚約破棄されて役目を終える。
それでいいのだと思っていた。
それが僕の運命なのだから。
クライスとユジンが幸せになれるなら構わない。むしろ、そうなるべきだと思っていたのに。
「俺はユジンではなく、お前と結婚する」
僕の信じる未来をひっくり返す彼の言葉。
抱きしめる腕の力は強い。アイスブルーの瞳は真っ直ぐに僕の瞳を見つめている。
「ぼくと、くらいすが、けっこん……」
そうすることができたらどんなにいいだろ。
だけど、
「ぼくは…くらいすに、しあわせになってほしぃの……」
「ああ。俺はキルナと結婚したら間違いなく幸せになれる」
「でも…ぼく、やみぞくせいだし」
「知ってる、黒い髪が綺麗だものな。見せてくれ」
え?
左手のフィンガーブレスレットはお父様の指示でずっとつけっぱなしにしている。それを外すと、魔法で藍色に染まっていた髪が黒色へと変わる。自分でもこの色になった髪をみるのは久しぶりだ。
僕はこの髪色が全然好きじゃない。闇属性って一発でバレるし、バケモノとか悪魔だと言われてきた。なのにクライスはこの髪を一房掬い、キスをした。
「綺麗な漆黒の髪だな」
「きもちわるくない?」
「綺麗だ。お前の金の瞳によく合う」
「めのいろも、やっぱへんじゃない?」
最初は青かったのに途中で金に変わった変な瞳。使用人たちにキモチワルイと言われ続けたそれ。
「変じゃない。好きだと言ったろう? 月の光を集めたような、美しい瞳だ」
ちゅっと瞳にもキスをされる。こんな見た目を好きと言ってくれるなんて。でも中身は? 外見だけでなく、中身もしっかり悪役令息な僕。こんなに性格が悪いと嫌なんじゃ。
「えと、ぼく…わがままでたかびしゃで、てのつけられないわるいこらしいのだけど、いい?」
「その噂は間違っていると思うが、お前の我儘ならいくらでも聞いてやる。もっと我儘になってほしいくらいだ」
クライスったら。優しすぎるよ。ああ、胸がぽかぽかする。自分が否定してきた何もかもを、彼は受け入れてくれる。
でも本当にいいの?
「僕は、」
『あなたはいらないのーー』
『七海なんていなければーー』
「いらないこだけど……」
言いかけた口が彼の唇に塞がれた。
「いらない子なんかじゃない。俺にはお前が必要だ、キルナ」
今日のクライスはやけに色々聞いてくるから頑張って答えるのだけど、イきすぎてもぅ眠い。自分が何を言ってるのか、ちょっとわかんなくなってきた。
「俺も一番キルナが好きなんだ。お前だけを愛している」
「ふあっ……ぼ…くも…くらいしゅ…らけ。くらいしゅらけあいしてう…んぅ」
顎をつかんで振り向かされ、唇ににまたキスが落とされる。
与えられた唾液をごくんと飲み込んだら、彼の魔力がまた体に広がって染み渡っていく。身体にいっぱいの彼の魔力とキスマークによって、僕は物理的なかんじで彼のものになっていく気がした。
「なのに、お前は俺をユジンにくれてやるつもりなのか?」
「ふぁああん。ちょ、…ああ…っ」
「どうなんだ?」
室内が冷蔵庫みたいにひえっひえになっている。ゴリゴリと内壁を擦られ「ひぁああ」とまた中だけで盛大にイった。
「だってだって」
ああ、言っちゃダメ。これはナイショの話でしょ。とちょこっとだけ残った理性が止めようとするのに、口が勝手に気持ちを言葉にしていく。
「ぼく…だとクライスを…しあわせに…できないから」
「そんなはずがない!!」
クライスが怒っている。
ああ違う、泣いている?
彼の表情は見えないけど、辛そうな声に僕まで悲しくなってくる。
「くらいしゅ、なかないれ……んぁあ!?」
彼は(入れたまま)くるんと僕の向きを変え、向かい合わせになると僕の体を抱きしめた。
「俺は、お前以外の他の誰と結婚しても幸せになんてなれない。俺はお前を愛している。お前と一緒に生きていきたい。それがお前の信じる運命じゃなくても」
「……うんめいじゃ…なくても?」
彼の言葉の意味を考える。
(僕の信じる運命って、クライスとそんな話したことあったかな?)
「ひああちょっと、とまって…。いま、かんがえてぅとこだからあ!」
揺さぶる彼の動きが止まると、思い浮かんだ言葉があった。
ああ、もしかしてあれかな。ファーストキスにびっくりして、うっかりゲームの未来を喋っちゃったやつ。
『ぼくたちは結婚なんてしない。君は、えぐえぐっ、ユジンと結婚するのにぃ』
ーークライスとユジンが結婚する。
それが二人のハッピーエンドで、絶対正しい未来なのだと僕は信じていた。優斗から彼らの愛の素晴らしさを聞いていたし、ゲームの二人は結ばれて、真実幸せそうだったから。
悪役令息はそれを実現するための駒にすぎない。二人の邪魔をして恋をいいかんじに燃え上がらせ、卒業パーティーで断罪され、婚約破棄されて役目を終える。
それでいいのだと思っていた。
それが僕の運命なのだから。
クライスとユジンが幸せになれるなら構わない。むしろ、そうなるべきだと思っていたのに。
「俺はユジンではなく、お前と結婚する」
僕の信じる未来をひっくり返す彼の言葉。
抱きしめる腕の力は強い。アイスブルーの瞳は真っ直ぐに僕の瞳を見つめている。
「ぼくと、くらいすが、けっこん……」
そうすることができたらどんなにいいだろ。
だけど、
「ぼくは…くらいすに、しあわせになってほしぃの……」
「ああ。俺はキルナと結婚したら間違いなく幸せになれる」
「でも…ぼく、やみぞくせいだし」
「知ってる、黒い髪が綺麗だものな。見せてくれ」
え?
左手のフィンガーブレスレットはお父様の指示でずっとつけっぱなしにしている。それを外すと、魔法で藍色に染まっていた髪が黒色へと変わる。自分でもこの色になった髪をみるのは久しぶりだ。
僕はこの髪色が全然好きじゃない。闇属性って一発でバレるし、バケモノとか悪魔だと言われてきた。なのにクライスはこの髪を一房掬い、キスをした。
「綺麗な漆黒の髪だな」
「きもちわるくない?」
「綺麗だ。お前の金の瞳によく合う」
「めのいろも、やっぱへんじゃない?」
最初は青かったのに途中で金に変わった変な瞳。使用人たちにキモチワルイと言われ続けたそれ。
「変じゃない。好きだと言ったろう? 月の光を集めたような、美しい瞳だ」
ちゅっと瞳にもキスをされる。こんな見た目を好きと言ってくれるなんて。でも中身は? 外見だけでなく、中身もしっかり悪役令息な僕。こんなに性格が悪いと嫌なんじゃ。
「えと、ぼく…わがままでたかびしゃで、てのつけられないわるいこらしいのだけど、いい?」
「その噂は間違っていると思うが、お前の我儘ならいくらでも聞いてやる。もっと我儘になってほしいくらいだ」
クライスったら。優しすぎるよ。ああ、胸がぽかぽかする。自分が否定してきた何もかもを、彼は受け入れてくれる。
でも本当にいいの?
「僕は、」
『あなたはいらないのーー』
『七海なんていなければーー』
「いらないこだけど……」
言いかけた口が彼の唇に塞がれた。
「いらない子なんかじゃない。俺にはお前が必要だ、キルナ」
2,033
お気に入りに追加
6,320
あなたにおすすめの小説

[完結]本当にバカね
シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。
この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。
貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。
入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。
私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。
【完結】恋は、終わったのです
楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。
今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。
『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』
身長を追い越してしまった時からだろうか。
それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。
あるいは――あの子に出会った時からだろうか。
――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。

ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のキャリーヌは、婚約者で王太子のジェイデンから、婚約を解消して欲しいと告げられた。聞けば視察で来ていたディステル王国の王女、ラミアを好きになり、彼女と結婚したいとの事。
ラミアは非常に美しく、お色気むんむんの女性。ジェイデンが彼女の美しさの虜になっている事を薄々気が付いていたキャリーヌは、素直に婚約解消に応じた。
しかし、ジェイデンの要求はそれだけでは終わらなかったのだ。なんとキャリーヌに、自分の側妃になれと言い出したのだ。そもそも側妃は非常に問題のある制度だったことから、随分昔に廃止されていた。
もちろん、キャリーヌは側妃を拒否したのだが…
そんなキャリーヌをジェイデンは権力を使い、地下牢に閉じ込めてしまう。薄暗い地下牢で、食べ物すら与えられないキャリーヌ。
“側妃になるくらいなら、この場で息絶えた方がマシだ”
死を覚悟したキャリーヌだったが、なぜか地下牢から出され、そのまま家族が見守る中馬車に乗せられた。
向かった先は、実の姉の嫁ぎ先、大国カリアン王国だった。
深い傷を負ったキャリーヌを、カリアン王国で待っていたのは…
※恋愛要素よりも、友情要素が強く出てしまった作品です。
他サイトでも同時投稿しています。
どうぞよろしくお願いしますm(__)m
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる