91 / 200
91 玉座に相応しい者
しおりを挟む
三人の間に流れる微妙な空気を振り払う様に、アイザックは小さく咳払いをしてから再び口を開いた。
「ところで、まだサディアス殿下に伝えていない予知夢はあるのかな?」
真剣な表情に戻ったアイザックに、私も改めて背筋を伸ばす。
「次の手紙には、街道沿いの崖崩れについて書くつもりでした」
「場所と時期は分かる?」
「ミラリア王国側の国境から、王都方面へ馬車を二日程走らせた辺りという事しか……。
時期についても、来年の年末近く、大雨が降った後としか分かりません」
曖昧な情報しか分からない申し訳なさから瞳を伏せた私の頭に、アイザックは大きな手をポンと乗せた。
「うん、それだけでもかなり絞られるから大丈夫だろう。
調査して補強工事の手配をしておく」
「もう予言の手紙は出さなくて良いのですか?
どうやって崖が脆くなっている事に気付いたのかと追及されたらどうするのです?」
そう言った私を止めたのはジョエルだった。
「ここからはアイザック様にお任せした方が良いですよ。
姉上が予言者だと知られては危険です」
ジョエルが示した懸念に、アイザックも深く頷く。
「適当な言い訳を考えるから、僕の事は心配しなくて良い。
六つ目の予言にしてしまえばサディアス殿下も動いてくれるだろうけど、殿下がこれ以上予言者に興味を持つのは避けたい。
まあ、バレてしまっても僕が守るけど」
私はホッと安堵の息を吐いた。
アイザックの言葉はまるで安定剤でも含まれているかの様に、不思議と私の心を和らげてくれる。
「ありがとうございます」
「他にも何かある?」
後は恋愛絡みのイベントばかりなので、一般市民の命が危険に晒される事件や災害は、私が知っている限りはそれだけだった。
だが、もう一つ。
一番重要な事柄について、ここでアイザックに話してしまうべきなのか、私は決心が付かずにいた。
「もう一つだけ、聞いていただきたい事があるのですが……。
それをお話しする前に、一つだけ質問しても良いでしょうか?」
「何かな?」
私はコクリと喉を鳴らしてから、徐に口を開いた。
「アイザック様から見て、サディアス殿下は清廉潔白な方ですか?」
質問の意図を汲み取りきれずに、一瞬瞳を瞬かせたアイザックだったが、直ぐに思案顔になった。
「清廉潔白……、では無いな。寧ろ清濁併せ呑むというか……。
目的の為には手段を選ばないお方だ」
少なくとも優しいだけの王子様じゃないみたい。だけど、王になるなら冷酷さだって必要だよね。
「例え話ですが、もしも殿下が罪を犯すとしたら、どの様な場合だと思いますか?」
「…………その罪という奴の大きさや種類にもよるが……、妃殿下か姫殿下のお命が危機に晒されている時。
それか、国自体に大きな危機が迫っている時かな」
アイザックの答えを聞いて決意を固めた私は、高まっていた緊張を緩める様に胸元に手を当てて大きく息を吐き出し、再び話し始めた。
「私の夢の中では、小麦不足による暴動が収まった少し後、サディアス殿下は犯罪組織との癒着が発覚して投獄されます。
そして第二王子が立太子し、ベアトリスとの婚約が破棄され、新しい婚約者には聖女になったウェブスター嬢が選ばれる」
「「…………はぁっっ!?!?」」
私の告白に二人は瞠目し、驚きの声を上げた。
「この話をサディアス殿下本人に警告するかどうか、ずっと決心がつかなかったのです。
私は殿下がどんな人物なのかを知る立場にはありませんし、もしも私欲の為に犯罪者と手を組む様なお方なのであれば、助ける訳には行かないですから」
頷きを返すアイザックの顔には、まだ戸惑いが色濃く浮かんでいる。
「……それは、そうだよな。
でも、腹黒くて厄介な人ではあるが、そういう心配は無いと思う。
もしも本当に犯罪組織と関わったなら、何か深い事情があるとしか……。
若しくは誰かに嵌められるのだろうな」
眉間に深い皺を寄せて、ブツブツと呟くアイザック。
証拠も何も無い未来の話を当たり前に信じてくれるのが、とても嬉しいし心強い。
「アイザック様から見た印象を聞いて、私もそう思いました。
例によって具体的な内容はあまり分からないのですが、国庫のお金が犯罪組織に流れます。
禁止されている奴隷の売買に関わる組織らしいです。
多分、別の誰かが行った罪をなすり付けられるとか、犯罪者から情報を買わざるを得ない状況に陥るとか……」
「うん。
財務に関わる者を中心に、王宮内で働く人間を調査し直してみる」
「念の為、妃殿下と姫殿下の警護も強化した方が良いのではないですか?」
ジョエルが発言すると、アイザックもその意見に同意を示す。
「ああ。そうしよう。
それで、もう他には無いかな?」
「…………ええ、私が知っている事は以上です」
そう答えた私は、冷め切った紅茶に口をつけ、カラカラに乾いた喉を潤した。
自分の処刑について話すかどうかは少し迷ったが、二人が苦悩する顔が脳裏に浮かんだら、どうしても言葉には出来なかった。
いずれにしても、クリスティアンが王太子位に着かなければ私の断罪の可能性はほぼ消えるのだから、敢えて話す必要もないかも。
「良かった。
思った以上に重い情報だったから、正直言うと、もうお腹いっぱいだよ」
アイザックがフッと小さく笑ったのを切っ掛けに、重苦しかった場の空気が少しだけ和らいだ。
「また何か夢を見たら教えて」
「もし見たら勿論直ぐにお知らせしますが…………多分、もう見ないのでは無いかと思っています。
実は、ここ数年は何も見ていないのです。
サディアス殿下に送った手紙も、昔の日記に記録してあった内容を抜粋して書いた物なので」
「そうなのか。いや、見なくなったなら良かった」
アイザックの言葉にジョエルもブンブンと首を縦に振る。
「姉上が怖い夢を見ずに、面倒事にも巻き込まれないで済むなら、その方が良いです。
…………ところで、緊張が解れたら、ちょっと小腹が空きました」
呑気な弟の台詞に、私は小さく笑みを零した。
「フフッ、そうね。
ちょっと喉も乾いたし、リーザ達を呼んで何か用意してもらいましょう」
「あ。僕、姉上が剥いたウサギの林檎が食べたいです」
「ええ良いわよ。少し待っててね」
そう言い残して応接室を後にする。
(……上手く嘘をつけたかな?)
上手に嘘をつくには、本当の話の中に紛れ込ませると良いって聞いた事がある。
私の話は9割方本当だが、それでも上手く誤魔化せたかどうか自信は無い。
アイザックもジョエルも結構鋭いから。
(でも……、きっと二人は私の嘘に気付いたとしても、それが本当に私が隠したい事であれば、無理やり暴こうとはしないんじゃないかな?)
何の根拠もないが、私はそんな風に思った。
「ところで、まだサディアス殿下に伝えていない予知夢はあるのかな?」
真剣な表情に戻ったアイザックに、私も改めて背筋を伸ばす。
「次の手紙には、街道沿いの崖崩れについて書くつもりでした」
「場所と時期は分かる?」
「ミラリア王国側の国境から、王都方面へ馬車を二日程走らせた辺りという事しか……。
時期についても、来年の年末近く、大雨が降った後としか分かりません」
曖昧な情報しか分からない申し訳なさから瞳を伏せた私の頭に、アイザックは大きな手をポンと乗せた。
「うん、それだけでもかなり絞られるから大丈夫だろう。
調査して補強工事の手配をしておく」
「もう予言の手紙は出さなくて良いのですか?
どうやって崖が脆くなっている事に気付いたのかと追及されたらどうするのです?」
そう言った私を止めたのはジョエルだった。
「ここからはアイザック様にお任せした方が良いですよ。
姉上が予言者だと知られては危険です」
ジョエルが示した懸念に、アイザックも深く頷く。
「適当な言い訳を考えるから、僕の事は心配しなくて良い。
六つ目の予言にしてしまえばサディアス殿下も動いてくれるだろうけど、殿下がこれ以上予言者に興味を持つのは避けたい。
まあ、バレてしまっても僕が守るけど」
私はホッと安堵の息を吐いた。
アイザックの言葉はまるで安定剤でも含まれているかの様に、不思議と私の心を和らげてくれる。
「ありがとうございます」
「他にも何かある?」
後は恋愛絡みのイベントばかりなので、一般市民の命が危険に晒される事件や災害は、私が知っている限りはそれだけだった。
だが、もう一つ。
一番重要な事柄について、ここでアイザックに話してしまうべきなのか、私は決心が付かずにいた。
「もう一つだけ、聞いていただきたい事があるのですが……。
それをお話しする前に、一つだけ質問しても良いでしょうか?」
「何かな?」
私はコクリと喉を鳴らしてから、徐に口を開いた。
「アイザック様から見て、サディアス殿下は清廉潔白な方ですか?」
質問の意図を汲み取りきれずに、一瞬瞳を瞬かせたアイザックだったが、直ぐに思案顔になった。
「清廉潔白……、では無いな。寧ろ清濁併せ呑むというか……。
目的の為には手段を選ばないお方だ」
少なくとも優しいだけの王子様じゃないみたい。だけど、王になるなら冷酷さだって必要だよね。
「例え話ですが、もしも殿下が罪を犯すとしたら、どの様な場合だと思いますか?」
「…………その罪という奴の大きさや種類にもよるが……、妃殿下か姫殿下のお命が危機に晒されている時。
それか、国自体に大きな危機が迫っている時かな」
アイザックの答えを聞いて決意を固めた私は、高まっていた緊張を緩める様に胸元に手を当てて大きく息を吐き出し、再び話し始めた。
「私の夢の中では、小麦不足による暴動が収まった少し後、サディアス殿下は犯罪組織との癒着が発覚して投獄されます。
そして第二王子が立太子し、ベアトリスとの婚約が破棄され、新しい婚約者には聖女になったウェブスター嬢が選ばれる」
「「…………はぁっっ!?!?」」
私の告白に二人は瞠目し、驚きの声を上げた。
「この話をサディアス殿下本人に警告するかどうか、ずっと決心がつかなかったのです。
私は殿下がどんな人物なのかを知る立場にはありませんし、もしも私欲の為に犯罪者と手を組む様なお方なのであれば、助ける訳には行かないですから」
頷きを返すアイザックの顔には、まだ戸惑いが色濃く浮かんでいる。
「……それは、そうだよな。
でも、腹黒くて厄介な人ではあるが、そういう心配は無いと思う。
もしも本当に犯罪組織と関わったなら、何か深い事情があるとしか……。
若しくは誰かに嵌められるのだろうな」
眉間に深い皺を寄せて、ブツブツと呟くアイザック。
証拠も何も無い未来の話を当たり前に信じてくれるのが、とても嬉しいし心強い。
「アイザック様から見た印象を聞いて、私もそう思いました。
例によって具体的な内容はあまり分からないのですが、国庫のお金が犯罪組織に流れます。
禁止されている奴隷の売買に関わる組織らしいです。
多分、別の誰かが行った罪をなすり付けられるとか、犯罪者から情報を買わざるを得ない状況に陥るとか……」
「うん。
財務に関わる者を中心に、王宮内で働く人間を調査し直してみる」
「念の為、妃殿下と姫殿下の警護も強化した方が良いのではないですか?」
ジョエルが発言すると、アイザックもその意見に同意を示す。
「ああ。そうしよう。
それで、もう他には無いかな?」
「…………ええ、私が知っている事は以上です」
そう答えた私は、冷め切った紅茶に口をつけ、カラカラに乾いた喉を潤した。
自分の処刑について話すかどうかは少し迷ったが、二人が苦悩する顔が脳裏に浮かんだら、どうしても言葉には出来なかった。
いずれにしても、クリスティアンが王太子位に着かなければ私の断罪の可能性はほぼ消えるのだから、敢えて話す必要もないかも。
「良かった。
思った以上に重い情報だったから、正直言うと、もうお腹いっぱいだよ」
アイザックがフッと小さく笑ったのを切っ掛けに、重苦しかった場の空気が少しだけ和らいだ。
「また何か夢を見たら教えて」
「もし見たら勿論直ぐにお知らせしますが…………多分、もう見ないのでは無いかと思っています。
実は、ここ数年は何も見ていないのです。
サディアス殿下に送った手紙も、昔の日記に記録してあった内容を抜粋して書いた物なので」
「そうなのか。いや、見なくなったなら良かった」
アイザックの言葉にジョエルもブンブンと首を縦に振る。
「姉上が怖い夢を見ずに、面倒事にも巻き込まれないで済むなら、その方が良いです。
…………ところで、緊張が解れたら、ちょっと小腹が空きました」
呑気な弟の台詞に、私は小さく笑みを零した。
「フフッ、そうね。
ちょっと喉も乾いたし、リーザ達を呼んで何か用意してもらいましょう」
「あ。僕、姉上が剥いたウサギの林檎が食べたいです」
「ええ良いわよ。少し待っててね」
そう言い残して応接室を後にする。
(……上手く嘘をつけたかな?)
上手に嘘をつくには、本当の話の中に紛れ込ませると良いって聞いた事がある。
私の話は9割方本当だが、それでも上手く誤魔化せたかどうか自信は無い。
アイザックもジョエルも結構鋭いから。
(でも……、きっと二人は私の嘘に気付いたとしても、それが本当に私が隠したい事であれば、無理やり暴こうとはしないんじゃないかな?)
何の根拠もないが、私はそんな風に思った。
2,370
お気に入りに追加
6,319
あなたにおすすめの小説

[完結]本当にバカね
シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。
この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。
貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。
入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。
私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。
【完結】恋は、終わったのです
楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。
今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。
『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』
身長を追い越してしまった時からだろうか。
それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。
あるいは――あの子に出会った時からだろうか。
――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。

ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のキャリーヌは、婚約者で王太子のジェイデンから、婚約を解消して欲しいと告げられた。聞けば視察で来ていたディステル王国の王女、ラミアを好きになり、彼女と結婚したいとの事。
ラミアは非常に美しく、お色気むんむんの女性。ジェイデンが彼女の美しさの虜になっている事を薄々気が付いていたキャリーヌは、素直に婚約解消に応じた。
しかし、ジェイデンの要求はそれだけでは終わらなかったのだ。なんとキャリーヌに、自分の側妃になれと言い出したのだ。そもそも側妃は非常に問題のある制度だったことから、随分昔に廃止されていた。
もちろん、キャリーヌは側妃を拒否したのだが…
そんなキャリーヌをジェイデンは権力を使い、地下牢に閉じ込めてしまう。薄暗い地下牢で、食べ物すら与えられないキャリーヌ。
“側妃になるくらいなら、この場で息絶えた方がマシだ”
死を覚悟したキャリーヌだったが、なぜか地下牢から出され、そのまま家族が見守る中馬車に乗せられた。
向かった先は、実の姉の嫁ぎ先、大国カリアン王国だった。
深い傷を負ったキャリーヌを、カリアン王国で待っていたのは…
※恋愛要素よりも、友情要素が強く出てしまった作品です。
他サイトでも同時投稿しています。
どうぞよろしくお願いしますm(__)m
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる