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79 元婚約者の末路
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クレイグとの再婚約問題は、アイザックのお陰で拍子抜けするくらいアッサリと解決した。
とは言え、学園内でクレイグと顔を合わせたら憎々し気に睨まれたりするのかもしれないと、私はまだ少し警戒していたのだが……。
それから数日が経っても、奴の姿を見る事すらなかった。
「オフィーリア。難しそうな顔をして、何を考えているの?」
ベアトリスの問い掛けに、顔を上げる。
今日は、ベアトリスとアイザックだけでなく、普段一緒にご飯を食べているお友達がお休みしているというハリエットも加え、四人でお昼を食べていた。
「いや、ボルトン子爵令息を最近見ないなぁと思いまして。
確か、ハリエットは同じクラスよね?」
「ああ、あのナルシ……クレイグ・ボルトンですか?」
今、ナルシストって言おうとしたよね?
……ハリエットったら、正直な子。
「そうよ。彼、学園に来てるのかしら?」
クレイグと同じクラスで、尚且つ情報通なハリエットならば何か知ってるだろうと予想して聞いてみると、彼女は嬉々として話し始めた。
「なんかボルトン子爵家、かなりヤバい状況らしいですよ?
ご当主が酒場で知り合った相手から持ち掛けられた、怪し気な投資話に手を出しちゃったみたいで。
領地もかなり切り売りして、このままだと爵位を返上するのも時間の問題だって聞きました。
そんな状態なので、息子の方も金策で忙しいんじゃないですかね?
まだ辛うじて自主退学はしてないみたいですけど、そっちも時間の問題かと」
「……」
もしかして、ボルトン子爵が妙に焦ってたのって、そのせいだった?
だとすると、それを仕組んだのは───。
アイザックに胡乱な眼差しを向けると、彼はハリエットにニッコリと微笑みかけていた。
「ハリエット・ブリュー嬢。
君の情報収集能力は称賛に値するね。
だが、口は災いの元って異国の諺を覚えておいた方が良い」
妙な圧を感じたのか、ハリエットはギュッと唇を引き結んで、コクコクと首を上下に振った。
「無闇に威圧するのはおやめなさいよ。
可哀想に、すっかり怯えてるじゃないの」
見兼ねたベアトリスがアイザックを咎めながら、「大丈夫よ。コレはオフィーリアと敵対しない限りは無害な生き物だから」とハリエットを慰めている。
……それもどうかと思うけど。
アイザックは『コレ』とか『無害な生き物』とか呼ばれてるし、私に至ってはまるで影の支配者みたいな言われ様だ。
とっても心外である。
ハリエットも頷いてるけど、何を納得しているの?
いかんいかん。ベアトリスが変な事言うから、つい思考が脱線してしまったわ。
「あの男が消えたのは、アイザック様の策略って事でよろしいでしょうか?」
冷たい眼差しをアイザックに向けると、彼は小さく肩を振るわせた。
「そんなに大した事はしてないよ?
ただちょっとだけ、最近問題になってきている投資詐欺の情報を『うまい儲け話』に見せかけて子爵の耳に入れただけ」
「それを『だけ』って言います?」
「詐欺グループを捕縛する良い切っ掛けになるかなと思って」
「囮に使ってるじゃないですか!」
「嫌いになった?」
呆れて溜息をつくと、アイザックが心配そうに問いかけてくる。
私だってかなりの覚悟を持ってアイザックの気持ちを受け入れたのに、あんまりそれを軽くみないで欲しいわ。
大体にして、そんなに簡単に嫌いになれるなら、もうとっくに離れてるわよ。
「なりませんよ。
情報の精査は貴族の基本ですし、それを怠って怪し気な話に飛び付いたのなら、ボルトン子爵の自業自得でもありますから。
それだけ無能なら、どうせ放って置いても遅かれ早かれ没落したでしょうし。
本当に、再婚約しないで済んで良かったですよ」
私のその言葉にアイザックは安堵の表情を浮かべ、彼の機嫌が直った事にハリエットもホッと胸を撫で下ろしている。
「どうせ再婚約の打診があった直後から仕掛けていたんでしょう?」
「ベアトリスも、ちょっと黙ろうか?」
アイザックがベアトリスの言葉を遮った。
「だって、あの状況で何の対策もせずにアイザックがオフィーリアから離れるはずが無いもの。
実際、留守にしていた期間中もボルトン子爵令息の姿はほとんど見かけなかったし。
その頃から学園にはあまり来ていなかったんじゃない?」
ベアトリスがアイザックの制止を無視してハリエットに尋ねると、彼女は無言で頷いた。
『口は災いの元』は理解したみたいだけど、黙っていても頷いたら意味が無いのでは?
「そもそも、身の程も弁えないで再婚約だなんて愚かな計画を立てた奴等を、アイザックが許すと思う?」
「……そうなのですか? アイザック様」
ベアトリスの言葉を受けて私が尋ねると、アイザックも隠すのを諦めたらしく、渋々といった表情で口を開いた。
「……まあ、大体合ってるよ。
金に困らせた上で、あちこちから支援の可能性をチラつかせれば、忙しく動き回ってオフィーリアに構ってる暇はなくなるだろ。
エヴァレット伯爵には、再婚約の打診を断るのを少しの間だけ待って貰っていたから、そっちの件は問題ないと思い込んでいただろうし」
まさかのお父様もグルだった。
支援の可能性を仄めかされて奔走したけど、結局お金は集まらなかったのでしょうね。
それでも、例の王子からの要求を叶えられれば援助を頼めるかもって期待していたのに、婚約の話も断られてしまって、その線も絶望的になった。
だからボルトン子爵はあんなに慌ててたんだわ。
「本当は元凶の馬鹿の方をサッサと片付けられれば良かったんだけどな。
そうすれば、ベアトリスも楽になったんだが……。
あれでも一応は王族の端くれだから、そんなに簡単には行かないな。
面倒な仕事を与えて一ヶ月間動きを止める事くらいしか出来なかった」
『元凶の馬鹿』とか、『王族の端くれ』って、多分クリスティアンの事だよね?
もう王子とすら呼ばれていない。
そういえば、アイザックがいない間はクリスティアンの姿も見なかったけど、学園に来ない様にアイザックが手を打っていたのか。
「良いわよ。自分でなんとかするから。
どうせまた陛下が庇っているんでしょ?
まあ、罪悪感のせいなのだろうけど、迷惑な話よね」
うんざり顔で呟くベアトリス。
え~?
国王陛下、クリスティアンを庇う様な人だったの?
納得いかないわぁ。
陛下のアレルギーの件、放置して苦しませとけば良かったかしら?
いや、ダメダメ。どうせプリシラが治癒するんだから、余計にクリスティアン達の味方になっちゃう。
それにしても、気になる単語が出てきたな。
『罪悪感』って何だ?
国王陛下は息子であるクリスティアンに何らかの弱みがあるって事?
でも……、気にはなるけど、王族の事情なんて、下手に首を突っ込まない方が良い気もする。
ふと見れば、ハリエットも何か嫌な予感がするのか、窓の外を眺めながら素知らぬ顔で黙々とプリンを口に運んでいた。
私は胸の奥に湧いた微かな好奇心にそっと蓋をした。
とは言え、学園内でクレイグと顔を合わせたら憎々し気に睨まれたりするのかもしれないと、私はまだ少し警戒していたのだが……。
それから数日が経っても、奴の姿を見る事すらなかった。
「オフィーリア。難しそうな顔をして、何を考えているの?」
ベアトリスの問い掛けに、顔を上げる。
今日は、ベアトリスとアイザックだけでなく、普段一緒にご飯を食べているお友達がお休みしているというハリエットも加え、四人でお昼を食べていた。
「いや、ボルトン子爵令息を最近見ないなぁと思いまして。
確か、ハリエットは同じクラスよね?」
「ああ、あのナルシ……クレイグ・ボルトンですか?」
今、ナルシストって言おうとしたよね?
……ハリエットったら、正直な子。
「そうよ。彼、学園に来てるのかしら?」
クレイグと同じクラスで、尚且つ情報通なハリエットならば何か知ってるだろうと予想して聞いてみると、彼女は嬉々として話し始めた。
「なんかボルトン子爵家、かなりヤバい状況らしいですよ?
ご当主が酒場で知り合った相手から持ち掛けられた、怪し気な投資話に手を出しちゃったみたいで。
領地もかなり切り売りして、このままだと爵位を返上するのも時間の問題だって聞きました。
そんな状態なので、息子の方も金策で忙しいんじゃないですかね?
まだ辛うじて自主退学はしてないみたいですけど、そっちも時間の問題かと」
「……」
もしかして、ボルトン子爵が妙に焦ってたのって、そのせいだった?
だとすると、それを仕組んだのは───。
アイザックに胡乱な眼差しを向けると、彼はハリエットにニッコリと微笑みかけていた。
「ハリエット・ブリュー嬢。
君の情報収集能力は称賛に値するね。
だが、口は災いの元って異国の諺を覚えておいた方が良い」
妙な圧を感じたのか、ハリエットはギュッと唇を引き結んで、コクコクと首を上下に振った。
「無闇に威圧するのはおやめなさいよ。
可哀想に、すっかり怯えてるじゃないの」
見兼ねたベアトリスがアイザックを咎めながら、「大丈夫よ。コレはオフィーリアと敵対しない限りは無害な生き物だから」とハリエットを慰めている。
……それもどうかと思うけど。
アイザックは『コレ』とか『無害な生き物』とか呼ばれてるし、私に至ってはまるで影の支配者みたいな言われ様だ。
とっても心外である。
ハリエットも頷いてるけど、何を納得しているの?
いかんいかん。ベアトリスが変な事言うから、つい思考が脱線してしまったわ。
「あの男が消えたのは、アイザック様の策略って事でよろしいでしょうか?」
冷たい眼差しをアイザックに向けると、彼は小さく肩を振るわせた。
「そんなに大した事はしてないよ?
ただちょっとだけ、最近問題になってきている投資詐欺の情報を『うまい儲け話』に見せかけて子爵の耳に入れただけ」
「それを『だけ』って言います?」
「詐欺グループを捕縛する良い切っ掛けになるかなと思って」
「囮に使ってるじゃないですか!」
「嫌いになった?」
呆れて溜息をつくと、アイザックが心配そうに問いかけてくる。
私だってかなりの覚悟を持ってアイザックの気持ちを受け入れたのに、あんまりそれを軽くみないで欲しいわ。
大体にして、そんなに簡単に嫌いになれるなら、もうとっくに離れてるわよ。
「なりませんよ。
情報の精査は貴族の基本ですし、それを怠って怪し気な話に飛び付いたのなら、ボルトン子爵の自業自得でもありますから。
それだけ無能なら、どうせ放って置いても遅かれ早かれ没落したでしょうし。
本当に、再婚約しないで済んで良かったですよ」
私のその言葉にアイザックは安堵の表情を浮かべ、彼の機嫌が直った事にハリエットもホッと胸を撫で下ろしている。
「どうせ再婚約の打診があった直後から仕掛けていたんでしょう?」
「ベアトリスも、ちょっと黙ろうか?」
アイザックがベアトリスの言葉を遮った。
「だって、あの状況で何の対策もせずにアイザックがオフィーリアから離れるはずが無いもの。
実際、留守にしていた期間中もボルトン子爵令息の姿はほとんど見かけなかったし。
その頃から学園にはあまり来ていなかったんじゃない?」
ベアトリスがアイザックの制止を無視してハリエットに尋ねると、彼女は無言で頷いた。
『口は災いの元』は理解したみたいだけど、黙っていても頷いたら意味が無いのでは?
「そもそも、身の程も弁えないで再婚約だなんて愚かな計画を立てた奴等を、アイザックが許すと思う?」
「……そうなのですか? アイザック様」
ベアトリスの言葉を受けて私が尋ねると、アイザックも隠すのを諦めたらしく、渋々といった表情で口を開いた。
「……まあ、大体合ってるよ。
金に困らせた上で、あちこちから支援の可能性をチラつかせれば、忙しく動き回ってオフィーリアに構ってる暇はなくなるだろ。
エヴァレット伯爵には、再婚約の打診を断るのを少しの間だけ待って貰っていたから、そっちの件は問題ないと思い込んでいただろうし」
まさかのお父様もグルだった。
支援の可能性を仄めかされて奔走したけど、結局お金は集まらなかったのでしょうね。
それでも、例の王子からの要求を叶えられれば援助を頼めるかもって期待していたのに、婚約の話も断られてしまって、その線も絶望的になった。
だからボルトン子爵はあんなに慌ててたんだわ。
「本当は元凶の馬鹿の方をサッサと片付けられれば良かったんだけどな。
そうすれば、ベアトリスも楽になったんだが……。
あれでも一応は王族の端くれだから、そんなに簡単には行かないな。
面倒な仕事を与えて一ヶ月間動きを止める事くらいしか出来なかった」
『元凶の馬鹿』とか、『王族の端くれ』って、多分クリスティアンの事だよね?
もう王子とすら呼ばれていない。
そういえば、アイザックがいない間はクリスティアンの姿も見なかったけど、学園に来ない様にアイザックが手を打っていたのか。
「良いわよ。自分でなんとかするから。
どうせまた陛下が庇っているんでしょ?
まあ、罪悪感のせいなのだろうけど、迷惑な話よね」
うんざり顔で呟くベアトリス。
え~?
国王陛下、クリスティアンを庇う様な人だったの?
納得いかないわぁ。
陛下のアレルギーの件、放置して苦しませとけば良かったかしら?
いや、ダメダメ。どうせプリシラが治癒するんだから、余計にクリスティアン達の味方になっちゃう。
それにしても、気になる単語が出てきたな。
『罪悪感』って何だ?
国王陛下は息子であるクリスティアンに何らかの弱みがあるって事?
でも……、気にはなるけど、王族の事情なんて、下手に首を突っ込まない方が良い気もする。
ふと見れば、ハリエットも何か嫌な予感がするのか、窓の外を眺めながら素知らぬ顔で黙々とプリンを口に運んでいた。
私は胸の奥に湧いた微かな好奇心にそっと蓋をした。
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