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20 晴天の霹靂
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私達を乗せた馬車は、王都の中心街を目指してガタゴトと進んで行く。
「そもそもどうして、オフィーリアとベアトリスが友達になったんだ?」
「この前、お茶会で一緒になったの。
アイザックに頼まれてたから、声を掛けてみたんだけど、話してみるととても楽しくて」
嬉しそうに応えるベアトリスを見ていると、こっちまで嬉しくなる。
楽しいと思ってくれていたのか。
「それで、オフィーリアを気に入って、無理矢理友達にしたのか?」
胡乱な視線でベアトリスを見るアイザックだけど、私から言わせれば貴方と友達になった時だってかなり強引だったからね?
「無理矢理だなんて、そんな事してない……………、わよ、ね?」
心外だといった感じで声を上げたベアトリスだが、途中で自信が無くなったのか最初の勢いを失い、不安そうに揺れる視線を私に送った。
普段は凛とした眉が僅かに下がってしまった顔はなんとも可愛らしくて、思わずフフッと笑みを零す。
「はい。私も望んでベアトリス様とお友達になりました」
『それ見たことか』と言わんばかりに、「フフン」と得意気に胸を張るベアトリス。
アイザックは「あ、そう」と、面白くもなさそうな顔で呟き、車窓に流れる街並みへと視線を移した。
中心街にある大きな広場の前で馬車を降りた私達は、取り敢えずウインドウショッピングを楽しむ事にした。
「オフィーリア。はぐれるといけないから、はい」
そう言って片手を差し出すアイザック。
「あ、いえ、私は大丈夫……」
「ズルいわ、アイザック。
オフィーリアは私と手を繋ぐのよ!」
私達が散策する予定のエリアは貴族向けの店が多い場所なので上品な雰囲気だし、警ら隊があちこちに居るから治安も良い。
今日は人通りも然程多くないし、護衛騎士も連れて来ているので、はぐれる心配はないと思うのだけど……。
私は二人に、迷子になる程の小さな子供だと思われているのだろうか?
そりゃあ二人に比べれば子供っぽく見えるかもしれないけど、一応同じ年齢よ?
結局、私を真ん中にして三人で手を繋ぐハメになった。
何故だ?
まあ、二人が満足そうだから、別に良いけどね。
モザイク模様の石畳の左右には、レンガ造りの瀟洒な建物が建ち並び、看板や街灯なんかもレトロ可愛い。
前世を思い出してから見る街並みは、まるでテーマパークの中にでも迷い込んだみたいで、歩いているだけでも気分が上がる。
通りかかったぬいぐる店のショーウィンドウには、なんだか見覚えのあるキャラクターが鎮座していて、懐かしさについ目を奪われた。
「何か気になるものがあった?」
ベアトリスの問いに『前世でお馴染みだったキャラがいたので』とは言えなくて、笑顔で「いいえ」と答える。
特に目的もなく、三人で街をブラブラ歩いて、気になった店を片っ端から覗いてみる。
ただそれだけなのに、彼等と一緒だと凄く楽しい。
友人になって間もないけれど、きっと私は二人の事が好きなのだ。
途中で入った雑貨屋では、花を象った可愛らしいヘアピンを見付けた。
アイザックが「今日の記念に」と、私とベアトリスに色違いでプレゼントしてくれた。
どうやら最近、ご令嬢達の間では、友人同士でお揃いの髪飾りを着ける事が流行っているらしい。
ベアトリスは「オフィーリアとお揃い!」と、瞳を輝かせながらはしゃいで、アイザックにお礼を言っている。
なんて可愛い生き物なんだ。
私もアイザックにお礼を言うと、照れ臭そうに笑ってくれた。
次に入った文具店では、レターセットを三種類購入した。
二種類はアイザックやベアトリスに手紙を書く際にでも使おうと思って。
そして、残りの一種類。「一番売れている」と店員に勧められたレターセットは、今後の断罪回避計画に必要な小道具になる予定だ。
文具店を後にした私達は、再び街歩きを始め、平和な時間を過ごしていたのだが……。
「……うわっ……」
不意にアイザックが呟いた。
どうやら近くの高級料理店から出て来た人物に目を留めたらしく、眉根を寄せて小さな溜息をつく。
彼の視線の先を追った私も「ゲッ」と令嬢らしくない呟きを漏らしそうになり、慌てて口をつぐんだ。
そこにいたのは、銀糸の髪に紺色の瞳を持つ美少年。
今世ではまだ会った事がないけれど、前世では、画面越しによく見ていた人物。
第二王子のクリスティアンだったのだ。
まさか、出掛けた先で一番会いたくないキャラクターに遭遇してしまうなんて。
(なんでこんなにタイミングが悪いのよぉ!?
お願いだから、コッチに気付かないで!)
そんな願いも虚しく……。
偶然こちらを向いたクリスティアンと、アイザックの視線が絡んだ。
ハッと驚いた顔をしたクリスティアンは、次の瞬間、不機嫌そうなオーラを放ちながらズンズンと大股で私達に近寄って来たのだ。
引き連れていた煌びやかな護衛騎士達が、少し慌てた様子でクリスティアンの後を追う。
(マジか。最悪だわ)
学園に入学するまでは、第二王子と顔を合わせる機会なんてないと思っていたのに……!!
「そもそもどうして、オフィーリアとベアトリスが友達になったんだ?」
「この前、お茶会で一緒になったの。
アイザックに頼まれてたから、声を掛けてみたんだけど、話してみるととても楽しくて」
嬉しそうに応えるベアトリスを見ていると、こっちまで嬉しくなる。
楽しいと思ってくれていたのか。
「それで、オフィーリアを気に入って、無理矢理友達にしたのか?」
胡乱な視線でベアトリスを見るアイザックだけど、私から言わせれば貴方と友達になった時だってかなり強引だったからね?
「無理矢理だなんて、そんな事してない……………、わよ、ね?」
心外だといった感じで声を上げたベアトリスだが、途中で自信が無くなったのか最初の勢いを失い、不安そうに揺れる視線を私に送った。
普段は凛とした眉が僅かに下がってしまった顔はなんとも可愛らしくて、思わずフフッと笑みを零す。
「はい。私も望んでベアトリス様とお友達になりました」
『それ見たことか』と言わんばかりに、「フフン」と得意気に胸を張るベアトリス。
アイザックは「あ、そう」と、面白くもなさそうな顔で呟き、車窓に流れる街並みへと視線を移した。
中心街にある大きな広場の前で馬車を降りた私達は、取り敢えずウインドウショッピングを楽しむ事にした。
「オフィーリア。はぐれるといけないから、はい」
そう言って片手を差し出すアイザック。
「あ、いえ、私は大丈夫……」
「ズルいわ、アイザック。
オフィーリアは私と手を繋ぐのよ!」
私達が散策する予定のエリアは貴族向けの店が多い場所なので上品な雰囲気だし、警ら隊があちこちに居るから治安も良い。
今日は人通りも然程多くないし、護衛騎士も連れて来ているので、はぐれる心配はないと思うのだけど……。
私は二人に、迷子になる程の小さな子供だと思われているのだろうか?
そりゃあ二人に比べれば子供っぽく見えるかもしれないけど、一応同じ年齢よ?
結局、私を真ん中にして三人で手を繋ぐハメになった。
何故だ?
まあ、二人が満足そうだから、別に良いけどね。
モザイク模様の石畳の左右には、レンガ造りの瀟洒な建物が建ち並び、看板や街灯なんかもレトロ可愛い。
前世を思い出してから見る街並みは、まるでテーマパークの中にでも迷い込んだみたいで、歩いているだけでも気分が上がる。
通りかかったぬいぐる店のショーウィンドウには、なんだか見覚えのあるキャラクターが鎮座していて、懐かしさについ目を奪われた。
「何か気になるものがあった?」
ベアトリスの問いに『前世でお馴染みだったキャラがいたので』とは言えなくて、笑顔で「いいえ」と答える。
特に目的もなく、三人で街をブラブラ歩いて、気になった店を片っ端から覗いてみる。
ただそれだけなのに、彼等と一緒だと凄く楽しい。
友人になって間もないけれど、きっと私は二人の事が好きなのだ。
途中で入った雑貨屋では、花を象った可愛らしいヘアピンを見付けた。
アイザックが「今日の記念に」と、私とベアトリスに色違いでプレゼントしてくれた。
どうやら最近、ご令嬢達の間では、友人同士でお揃いの髪飾りを着ける事が流行っているらしい。
ベアトリスは「オフィーリアとお揃い!」と、瞳を輝かせながらはしゃいで、アイザックにお礼を言っている。
なんて可愛い生き物なんだ。
私もアイザックにお礼を言うと、照れ臭そうに笑ってくれた。
次に入った文具店では、レターセットを三種類購入した。
二種類はアイザックやベアトリスに手紙を書く際にでも使おうと思って。
そして、残りの一種類。「一番売れている」と店員に勧められたレターセットは、今後の断罪回避計画に必要な小道具になる予定だ。
文具店を後にした私達は、再び街歩きを始め、平和な時間を過ごしていたのだが……。
「……うわっ……」
不意にアイザックが呟いた。
どうやら近くの高級料理店から出て来た人物に目を留めたらしく、眉根を寄せて小さな溜息をつく。
彼の視線の先を追った私も「ゲッ」と令嬢らしくない呟きを漏らしそうになり、慌てて口をつぐんだ。
そこにいたのは、銀糸の髪に紺色の瞳を持つ美少年。
今世ではまだ会った事がないけれど、前世では、画面越しによく見ていた人物。
第二王子のクリスティアンだったのだ。
まさか、出掛けた先で一番会いたくないキャラクターに遭遇してしまうなんて。
(なんでこんなにタイミングが悪いのよぉ!?
お願いだから、コッチに気付かないで!)
そんな願いも虚しく……。
偶然こちらを向いたクリスティアンと、アイザックの視線が絡んだ。
ハッと驚いた顔をしたクリスティアンは、次の瞬間、不機嫌そうなオーラを放ちながらズンズンと大股で私達に近寄って来たのだ。
引き連れていた煌びやかな護衛騎士達が、少し慌てた様子でクリスティアンの後を追う。
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