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3 王太子の愚行
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ミシェルが立ち去った、すぐ後の事。
国王が夜会の会場に足を踏み入れると、いつもと違う奇妙な空気が漂っていた。
大きな人集りに近付くと、国王に気付いた者達がサッと横に避け、中心部への道が開ける。
そこには王太子であるアルフォンスが、聖女の一人であるステファニーを侍らせて、幸せそうにニヤニヤと笑っていた。
「……おめでとうございます」
戸惑いの表情を浮かべながらも、口々にアルフォンスとステファニーに祝いの言葉を述べている貴族達。
「……一体、何がめでたいのだ?」
状況が掴めないでいる国王の呟きに気付いた者達は、ハッとこちらを振り返る。
「父上!! いらしてたのですか?」
アルフォンスは満面の笑みだが、周囲の貴族達の戸惑いの色は濃くなるばかり。
「アルフォンス、何がめでたいと聞いている。
ミシェルは……、ミシェルは何処だ!?」
「聞いてください、父上。
僕はとうとう、悪虐聖女との婚約を破棄してやりました!」
それを聞いた瞬間、国王はクラッと眩暈がした。
「は? ……婚約、破棄?
ミシェルとの婚約を、勝手に破棄したと申すのかっ!?」
数ヶ月前からミシェルに対する事実無根の噂が流れ始め、影で『悪虐聖女』などと言う不名誉な名で呼ばれている事は、国王の耳にも入っていた。
しかし、何も対策をしなかった。
『この件については、アルフォンスとミシェルの二人で解決すべきだ』などと言い訳をして、面倒な事から目を逸らしていた。
しかし、この程度の噂を二人で静められぬ様では、これから先やって行けないと思ったのも事実だ。
まさかアルフォンスが、その馬鹿馬鹿しい噂を一番に信じ、勝手に婚約を破棄してしまうなどとは露ほども思わなかった。
(馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、これほどまでとは……)
国王にはなかなか子が出来なくて、とうとう『種無し説』まで囁かれ始めた頃、漸く授かったのがアルフォンスだった。
そんな一人息子のアルフォンスを、つい甘やかせ過ぎてしまった事を、国王は心から後悔した。
「今すぐ城門に指令を出し、ミシェルを止めろ!!」
彼女はきっと、すぐさま王宮を出ようとするに違いない。
近くにいた侍従に、大声で指示を出す。
(どうか間に合ってくれ……っっ!!)
「な……!? 父上!?!?
ご心配には及びません。
ミシェルなど居なくとも、このステファニーが、立派に筆頭聖女としての役割を果たしてくれます!」
「うるさいっっ!!」
苛立ちを露わにした国王が一喝すると、アルフォンスの肩がビクッと跳ねた。
ステファニーは高位貴族らしく、そこそこの魔力量を持ってはいるが、努力が嫌いな彼女は、光魔法をあまり上手く扱えないと聞く。
その実力は、勿論ミシェルの足元にも及ばないし、ミシェルを除いた十二人の中でも一番とは言い難いだろう。
「陛下、ここでは人目が多すぎます。
詳しい話は別室でお伺いしましょう」
激昂してしまいそうな国王を、側近の一人が宥める。
「そうだな。
アルフォンス、ステファニー、一緒に来い」
有無を言わさぬ一言を残し、国王は背を向けた。
国王の怒りに触れた二人は、先程までの幸せそうな表情を消し、トボトボと国王の後をついて行った。
別室にて、二人の話を聞いた国王は、益々頭を抱えた。
(ミシェルを罵って、聖女を解任しただと……!?)
あんなに大勢が見守る中で宣言した事を、今更撤回してしまえば、王家の威信に関わる。
婚約破棄をなかった事にするのも、ミシェルを聖女に戻すのも、直ぐには難しい。
だが、このままにしておけば、ミシェルは他国に逃げてしまうかも知れない。
直ぐには聖女に戻せなくても、いざという時の為に、せめて彼女を国内に留めて置きたい。
(どうする!? どうすれば良い?)
国王が夜会の会場に足を踏み入れると、いつもと違う奇妙な空気が漂っていた。
大きな人集りに近付くと、国王に気付いた者達がサッと横に避け、中心部への道が開ける。
そこには王太子であるアルフォンスが、聖女の一人であるステファニーを侍らせて、幸せそうにニヤニヤと笑っていた。
「……おめでとうございます」
戸惑いの表情を浮かべながらも、口々にアルフォンスとステファニーに祝いの言葉を述べている貴族達。
「……一体、何がめでたいのだ?」
状況が掴めないでいる国王の呟きに気付いた者達は、ハッとこちらを振り返る。
「父上!! いらしてたのですか?」
アルフォンスは満面の笑みだが、周囲の貴族達の戸惑いの色は濃くなるばかり。
「アルフォンス、何がめでたいと聞いている。
ミシェルは……、ミシェルは何処だ!?」
「聞いてください、父上。
僕はとうとう、悪虐聖女との婚約を破棄してやりました!」
それを聞いた瞬間、国王はクラッと眩暈がした。
「は? ……婚約、破棄?
ミシェルとの婚約を、勝手に破棄したと申すのかっ!?」
数ヶ月前からミシェルに対する事実無根の噂が流れ始め、影で『悪虐聖女』などと言う不名誉な名で呼ばれている事は、国王の耳にも入っていた。
しかし、何も対策をしなかった。
『この件については、アルフォンスとミシェルの二人で解決すべきだ』などと言い訳をして、面倒な事から目を逸らしていた。
しかし、この程度の噂を二人で静められぬ様では、これから先やって行けないと思ったのも事実だ。
まさかアルフォンスが、その馬鹿馬鹿しい噂を一番に信じ、勝手に婚約を破棄してしまうなどとは露ほども思わなかった。
(馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、これほどまでとは……)
国王にはなかなか子が出来なくて、とうとう『種無し説』まで囁かれ始めた頃、漸く授かったのがアルフォンスだった。
そんな一人息子のアルフォンスを、つい甘やかせ過ぎてしまった事を、国王は心から後悔した。
「今すぐ城門に指令を出し、ミシェルを止めろ!!」
彼女はきっと、すぐさま王宮を出ようとするに違いない。
近くにいた侍従に、大声で指示を出す。
(どうか間に合ってくれ……っっ!!)
「な……!? 父上!?!?
ご心配には及びません。
ミシェルなど居なくとも、このステファニーが、立派に筆頭聖女としての役割を果たしてくれます!」
「うるさいっっ!!」
苛立ちを露わにした国王が一喝すると、アルフォンスの肩がビクッと跳ねた。
ステファニーは高位貴族らしく、そこそこの魔力量を持ってはいるが、努力が嫌いな彼女は、光魔法をあまり上手く扱えないと聞く。
その実力は、勿論ミシェルの足元にも及ばないし、ミシェルを除いた十二人の中でも一番とは言い難いだろう。
「陛下、ここでは人目が多すぎます。
詳しい話は別室でお伺いしましょう」
激昂してしまいそうな国王を、側近の一人が宥める。
「そうだな。
アルフォンス、ステファニー、一緒に来い」
有無を言わさぬ一言を残し、国王は背を向けた。
国王の怒りに触れた二人は、先程までの幸せそうな表情を消し、トボトボと国王の後をついて行った。
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(ミシェルを罵って、聖女を解任しただと……!?)
あんなに大勢が見守る中で宣言した事を、今更撤回してしまえば、王家の威信に関わる。
婚約破棄をなかった事にするのも、ミシェルを聖女に戻すのも、直ぐには難しい。
だが、このままにしておけば、ミシェルは他国に逃げてしまうかも知れない。
直ぐには聖女に戻せなくても、いざという時の為に、せめて彼女を国内に留めて置きたい。
(どうする!? どうすれば良い?)
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