上 下
4 / 37

異世界生活10日目:はじめてのにんむ

しおりを挟む
異世界に来て10日間森で生活した後、ようやく王国に入ることが出来た。だが、住む場所がなく宿屋暮しになるため金を稼がなくてはならない。
そのため、森で手に入れた魔物の素材を売りにギルドへ行ったが量が多すぎて今すぐは無理と言われたため任務を受けることになった。初の任務を上手くこなせるか不安だが精一杯やるしかない
先に心の中で謝っておきます。足引っ張ったらごめんなさい


「カズヤってここら辺の人?」


「ここには最近来たんだ」
(異世界から来たとは口が裂けても言えない)


「じゃあ、任務終わったら色々案内してあげるよ」


「ありがとう!」
(これはありがたい!ナリア優しい)


「そうだな。任務が終わったら俺たちが案内してやるよ」


「あぁ、歓迎会も含めてな」


このパーティーの人たち優しい。異世界に来て何も分からない状態だから色々と教えてくれるのはありがたい。それにしてもノリがいいな。今日来たばかりのやつのために歓迎会まで開こうとしてくれてる
気持ちだけでも十分嬉しいのに


「そんな歓迎会だなんて…」


「なんだ歓迎会嫌いか?」


「いや、そういうわけじゃないけど」


「ならやろうぜ!せっかく来てくれて、俺らみたいな底辺のパーティーの手伝いしてくれてるんだ」
(ロイスってガタイだけじゃなくて性格もゴツイ)


「別にいいけど、ロイスがパーティーしたいだけでしょ」


「そ、そんなわけ無いだろ」
(明らかに動揺してる。図星かよ)


「ロイスはパーティーとかの盛り上がるものが好きなんだ。だから、事ある毎にパーティーしたがる」(俺の世界じゃパーティーなんてことほとんどしたことなかった)


「今回のパーティーは俺も賛成だ。ナリアもそう言ってる。カズヤ、お前はどうだ?お前さえ良ければやらないか?」
(せっかく誘ってくれてるんだし行ってみようか)


「いいよ。やろう」


「よっしゃ!そうと決まればとっとと終わらせちまおう」


ロイスが先頭に立ってウキウキと歩いている。調子の良い奴だな。ケールとナリアもやれやれといった感じで呆れている。このパーティーは仲がとても良いんだな。こういう仲間がいることが正直羨ましい
俺にもこういう仲間できないかな……
異世界でも1人ってことないよね……


~森~


「ここはいつ来ても不気味だね」
(ここを慣れ親しんだ場所だと思ってるのは俺だけか)


「みんな気をつけろよ。いつ出てくるか分からないからな」カン


「痛っ。なんだよ」


「魔物10m前」
(カンちゃんの言う通り10m前に魔物がいる。肉眼では木々が邪魔で見えないが探知スキルのおかげだ)


「みんな。10m前に魔物がいる。気をつけて」


「え?ほんと?見えないけど」


「どこにいるんだ?」


「待って、後ろからも…横からも…囲まれてる」


これはまずい状況だな。前だけじゃなくて、後ろにも横にもいた。でも、不幸中の幸いなのは相手がまだ俺たちに気づいていないことだ。この隙に一匹ずつ片付けていきたい
かなりピンチな状況だと言うのにカンちゃんは呑気に寝ている。こいつ危機意識はないのか


「でも、その鳩寝てるよ」


「こいつはほっといて…勝手に付いてきてるだけだから」カン


「痛っ!起きてるじゃねぇか!」


「付いていきたくているんじゃない」
(あーあ、普通に喋っちゃったよ)


「「「え?」」」
(みんなカンちゃんのこと見てるんだけど……嫌な予感がする)


「「「鳩が喋った!!!」」」
(今の大声で魔物がこっちに気づいた!!)


「みんな魔物がこっちに気づいた!注意して!」


俺がそう言うとみんなが困惑しながらも戦闘態勢に入る。こうなったのカンちゃんのせいだからな。
今はカンちゃんは置いておいて、どうやって片付けるか。探知できるだけでも10体はいる………
森にいて学んだことを生かすべきだ。魔法を使うと他の魔物にバレる。暗殺術なら気づかれることはない。だが、近づく必要がある。近づくまでに気づかれれば、集団リンチされて終わりだ
どうする?どうすればいいんだ。俺の小さい脳みそで答えが出るのか?


「来てる!」


「ヴゥゥォル!」


「体術強化!一斬スラッシュ


「カズヤの言う通りゴブリンがいる!まだいるぞ!気をつけろ!」


「お前暗殺術ある」


「知ってるよ!」


「なぜ使わない?」


「1人で殺るには数が多すぎる…」


「お前1人じゃないだろ。他の奴らを頼れ」


俺はハッとした。確かにカンちゃんの言う通りだ。前までは1人でやらないといけなかったけど今は違う。頼れる人がいる
俺らはパーティーだ。みんなで協力しないと
みんなにゴブリンの注意を引いてもらって俺が後ろから暗殺術を使えばいける!


「みんな!ゴブリンの注意を引いて貰っていい?」


「あぁ、わかった!」


「ヴゥァァァ!」


「ケール危ない!」


「ロイス!」


「ナリア、回復頼む!」


ケールを庇ってロイスがダメージを受けてしてしまった。これはすぐに片付けよう
とりあえず、隠密スキルを使って気配を消して後ろから近づいて確実に始末する


グシャ(まず1匹。首が折れる音あんま好きじゃない)


グシャ(2匹目。あと8体)


グシャ   グシャ   グシャ(まとめて3匹)


グシャ
(これでここら辺にいるのはいなくなった。あとはケールたちのところか)


俺が戻って来るとゴブリンたちと戦っている最中だった。ケールが剣で魔物を倒し、攻撃をロイスが盾で守る。後ろからナリアが魔法でみんなのサポートをする。これがパーティーか

と、見とれている場合では無い。俺も援護しなくてはいけない
木の影から空気銃エアガンでゴブリンの頭を撃ち抜く
ゴブリンの頭から血が吹き出て一瞬で絶命した


「これで終わりだ!」


「全部倒した?」


「そいつで最後だよ」


「やったぁ!!」


「これくらい朝飯前だろ」


「とか言いながら、ダメージ受けて私が回復魔法かけてあげたの忘れたの?」


「ウッ…それは、ケールを守ったんだから仕方ないだろ!」


「2人ともそれくらいにして…早く素材を集めよう」


ケールが言うと2人ともゴブリンの死体を漁って、ゴブリンの肝やら臓器を取り出す。こんなのがなんの役に立つのだろうか
俺から見てみればただのゴミなんだが……


「これって何の役に立つの?」


「これは色んな素材と調合させることで薬になるんだ」
(この世界リサイクル技師を雇ってるのか)


「なるほど。あ、その素材俺が持つよ」


「いいの?」


「うん。じゃあここに入れて」


俺は空間に黒い穴を作り出す。この収納魔法すごい便利で何でも入るし、無制限に入る
この穴の中はカンちゃん曰く異空間に繋がっているらしい。入ったら二度と出てこれないんだとか……
カンちゃんの言ってることが嘘だとしても怖すぎるから俺は中を覗いたことはない


「これって…収納魔法!?!?」


「え?そうだけど。何か変?」


「変も何も収納魔法使える人なんて、まずいないよ!!」
(え?そうなの?俺、もしかしてすごい?)


「そうなんだ。初めて知った」


「ほんとに不思議!」
(ナリアが中めっちゃ覗いてるんだけど。後ろから押されたら落ちるよ!!)


「危ない!この穴の中は異空間だから、入ったら帰って来れないよ」


「そうなの?この中ってまだ、研究途中でなんなのかわかってないんじゃなかったけ?」


これ自分の首絞めたのでは?カンちゃんが言ったことをそのまま言っちゃったけど、まだ解明されてないらしい。俺に対する視線が厳しくなりそう
バレたらどうなるか分からないからバレたくないんだけどな


「そうかなーって思っただけだよ」


「な~んだ。そういう事か」


「みんな早くここを出よう。ゴブリンの臭いにつられて他にも魔物が寄ってくる」


「それもそうだな。早く行こうぜ」


「そうしましょうか」


ここはケールに助けられた。俺たちは森を抜け、王国に入った。森を抜けたこと頃には完全に日は落ちて夜に差し掛かっていた。そして、任務達成の報告をするためギルドへ戻ることになった
帰る途中カンちゃんについてすごい聞かれたけど、たまたまと言って何とか誤魔化した
俺が質問攻めにあってる時はカンちゃん知らん振りして、答えようとしなかった
面倒事ばっか俺に押し付けるんじゃないよ。鳩時計の鳩の方が仕事してる


「おぉ。戻ったか。どうだった?」


「無事達成出来ましたよ!」


「そうかそうか!なら、良かった。カズヤもありがとうな」


「いえいえ、僕は自分のできることやっただけですから」


「素材はどこだ?」


「ここにあります」


俺が収納魔法から素材を取り出すと、ライオスさんは「収納魔法使えんのか。ますます気になるな」と言われてしまった。これは目をつけられたという認識で間違いない。王国に来てそうそうに俺へのマークが厳しくなったかもしれない。気をつけないと


「あーそうだ。お前の素材の査定終わったぞ」


「ありがとうございます」


「全部で、10万アーツだ」
(それって高いのか?日本円なら10万ってだいぶ高いけど……この世界の貨幣の価値が分からない)


「「「10万アーツ!!!」」」


「めっちゃ稼いでる!」


「そんな高いの?」


「10万アーツあったら家買えるぞ!」


「あぁ。まさかとは思ったが、間違いはねぇ。俺が半日かかる量だ。10万アーツでも納得いく」


「カズヤってほんとに何者?」


ナリアが疑惑の眼差しを向けてきてるし、ライオスさんも不思議がってる
ますますマズイ方向に流れが傾いてる!!
これはほんとにバレる!!
どうにかしてくんないかなと思ってカンちゃんを見てみるとちゃんと寝てる
だよねー王国入ってから静かだなって思ってたもん


「一旦それは置いておいて、カズヤに王国を案内しよう」


「あと歓迎会もな」


「そうか。でも、もう日が落ちてるし案内は明日でいいんじゃねぇか?」


「それじゃあパーティーできないですよ」


「ここでやればいい」


「いいんですか?」


「この時間はもう人は来ない。自由に使ってくれ」


ギルドには俺たちと受付のお姉さんとライオスさんしかいない。パーティーをやるにはもってこいの場所だ。任務を終えた後だと達成感あるな。仕事終わりに乾杯するみたいだ


「せっかくだしライオスさんとエレーナさんも参加してくださいよ」


「人数多い方がいいしな」


「なら、参加させてもらうとしようか」


「私も。疲れた時には盛り上がるのが1番でしょ!」
(こんな大人数でパーティーやるのは初めてだ。ワクワクするな)


「そうと決まれば、酒と食料だな」


「食料は俺に任せて」
(ロイスが買いに行くとめちゃくちゃな量買ってきそうだけど)


「私も行くわ。ロイスだけだとどうなるか分からないからね」


「俺も付いてくよ」


「酒は俺に任せてくれ」
(ライオスさんは日頃から酒飲んでそうだもんな。
ん?俺酒飲まされるんじゃないか?20歳なってないけど?)


「俺まだ16ですよ?」


「16なら大丈夫だ。ここは16から飲酒いけるからな」


こんなところで酒デビューするとは。20歳まで飲めないと思ってたけど、まさかなこともあるんだな。いやーー酒いけるか???
俺の父さんめちゃくちゃ酒弱い。その父さんの遺伝子を強く受け継いでる俺が強いはずがない
話し合いの結果、ケール達は食料係、ライオスさんは酒係、エレーナさんはケール達が買ってきた食料を料理するための調理器具の準備をする
俺は何もしないニートになった。なんかすることがあるならしたいけど、ロイスから「これはお前の歓迎会なんだからお前は何もするな」と言われたのですることが無くなってしまった


「異世界でニート」


「うるせぇ」


「なんで起きてんだよ」


「我寝てない。話聞いてた」


「嘘つけ」


「それより、お前のクラスメートお前より大変」


「どういうこと?」


「城行けばわかる。それか、今日の夜」


カンちゃんは何を言ってるんだ?クラスメートが大変な目にあってることだよな??そう考えるとこんなパーティーをやっていていいのかと思ってしまう。詳しく聞こうとしたが、カンちゃんはもう寝ていた。やっぱ寝てないなんて嘘じゃねぇかよ

俺は胸騒ぎを抑えながらみんなの帰りをギルドで1人待っていた
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

異世界でスローライフを満喫

美鈴
ファンタジー
タイトル通り異世界に行った主人公が異世界でスローライフを満喫…。出来たらいいなというお話です! ※カクヨム様にも投稿しております ※イラストはAIアートイラストを使用

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

処理中です...