愛していると言ってくれ

平和

この所幸せな日々が続いている。
蒼は緑茶を入れるのが上手い。
朝起きたら、朝食が出来ていたりする。
「ごめんな。まだ卵焼きが巻けない。」
「うーん？上手いよ！しっかり美味しい。ありがとう。」
蒼はにこにこする。
「有栖ちゃんは元気？」
「うん。LINEで繋がってる。よく絵を送ってくれる。めっちゃ上手。」
蒼は宝物をみせるようにスマホに写った、相変わらずゴツイ絵を見せてくれる。
兎が、怪獣に人参をお見舞していた。
黒木は、笑ってしまった。
「蒼も上手くなってきたな。」
反対に蒼は、まるで女性が描いたような柔らかいタッチで絵を描く。
梅ちゃんや黒木がたくさん描かれていた。
まぎれもない幸福だ。
「えへへ。俺はまだまだ。でも楽しいからね。」
「それが才能だよ。楽しい、続けられる、このふたつがあれば確実になにかにはなる。」
黒木は、まめに蒼にほしいものはないか聞くのだが、まさがほしいといって誤魔化される。
「心療内科の先生も俺の絵褒めてくれたんだよ！」
蒼が得意げに言った。
「画材を見に行こうか。他にしてみたいことはない？」
「えへへ。」
「蒼？家族だから、遠慮はなし。」
「はい。…画材を買ってみたい。」
「よし、見に行こう。なんでも買っちゃる。」
蒼と黒木は車に乗り、画材屋さんを目指した。
「俺は絵を描かないからなぁ。」
「できたら習ってみたいんだ。」
「おっ、いいね。」
黒木は蒼の恋人として、蒼を守らなくてはならない。
でも蒼の世界を広げてやりたい。
どこかに行く心配はもうなくなったが、未だにドキッとするほど美しいのは変わっていない。
「うーん。」
「まさ、どうした。」
「攫われないかな？変なやつに触らせるなよ。防犯ブザーを買うからね！！」
「相変わらず、過保護だねー。」
蒼は、のんびりといった。
心配された経験がない蒼にとって心配されるたび、少しこそばゆいような嬉しさが込み上げてくる。
信号待ちで2人はキスをした。