愛していると言ってくれ

春川信子

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出会い2

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「あんたの本知ってるよ。」
「はい?」
「サイン寄越せ。」
「え?」
黒木はキョトンとした。
ガチファンの勢いに気圧され、結局蒼の名刺の裏に書いた。
「ありがとうございます。」
深くおじきされ、黒木はもう格好は付けられないと思った。
「いや、ご愛読ありがとうございます。じゃなくて、あんなマイナーな小説よく知ってるね。しかもSMものだよ。」
ちょっと意地悪がしたくなった。
くるくると髪を指に搦め、それだけで硬くなっている蒼にそっと「あんなこと、されたいの?」と聞く。
「う、うるさい。」
陶器のように白い肌にかぁっと血が上る。
「え?図星?」
黒木は、頭を無にするのに時間がかかった。
こんな綺麗なプライドの高い女に、ベッドで可愛く鳴かれたら理性は飛ぶだろう。
でも、こいつにもアレは付いている。
吹き飛びかけた理性をかき集める。
「いやー、君ならそりゃ男も寄ってくるね。痴漢とか合わないか心配。」
「あぁ?」 
蒼はすごんだ。
「痴漢から金とるけどな。」
「お金じゃないよ。警察に着き出せよ!」
「なんで、怒るの?」
蒼は分からない。
13の頃から女に身体を売ってきた。
家族を食べさせるために。愛しい愛梨を大学に行かせるために。
大学に行くには金がかかる。
だから自分の身なんて構わなかった。
そっと大きな手が頭を撫でる。
「やめろ!!」
「大丈夫。俺は蒼くんに変な感情もたないから。」
黒木はグラスを飲み干した。
「君の話をききたい。」
「あー、もうなんでもいいよ。」
「少し呑んだら?なんか緊張してるみたいだし。」
黒木はなるべく優しくいった。
蒼は、警戒して黒木をみる。
実は蒼はよく飲まされて、タダで持ち帰られていた。
ママの情夫ということもあって、蒼の飲み物は、ノンアルコールだ。
「なんか高いボトルいれようか?取材料だから。」
「酒はあんたの好きなの頼めよ。俺は飲めない。」
黒木は悪いやつではないらしい。
それに、ホストとしてではなく、ただの蒼という人間を覗きたいみたいだ。
銭が心底好きな蒼でも、ホストでない自分はただの人間であることは分かる。
「安くしとくぜ。失礼な態度、すみませんでした。黒木さんの方が、大人だろ。ちゃんと敬語使うよ。」
「いいこだね。」
黒木は20代ぐらいにしか見えない蒼がなんとなく好きになれそうな気がした。
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