愛していると言ってくれ

春川信子

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出会い

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黒木は、キャバクラやホストには無関心だ。
たまにめちゃくちゃに酔いたい時は、家でしこたまアルコールとタバコ。
猫の梅ちゃんに配慮して、タバコは必ずベランダに出て吸っている。
ロッソは、そんな黒木には少々場違いだった。
煌びやかな内装に、アップライトピアノ。
VIPルームに通されても、儲かりまんなぁとしか思わない。
「初めてまして。蒼です。」
「え?」
思わず声が出るぐらい浮世離れした容姿の人物がそこにいた。
ジロジロ眺めまわしても商売道具の顔は決して崩さない。
ハラりと垂らした前髪は金の巻き毛で、憂いのある瞳は、妙にそそるものがある。
じっと、グリーンの瞳が黒木を見つめた。
目が合った女はヤレる。
黒木は、なぜかそんな事をおもった。
「お隣よろしいですか?先生。」
「あっ、はい。」
緊張して加えたタバコに、優雅に火をつけてくれる。
「君、ほんとに、男?」
「よく言われますよ。僕は、男性のお客さまもたまに会いに来てくださります。」
そっと、甘い匂いのする身体を近づけ、「先生も、いかがでしょう?」と囁いた。
勢いでキスしそうだ。
可愛い。
少し俯き加減な顔を上向かせ、強引にでも、キスがしたい。
「先生、なに考えてます?」
お見通しとばかり、ニタリと笑う。
「可愛い顔してんね。女の子だったら」
続きを言う前に桜色の唇で口を塞がれた。
「アンタ、さ、ヤリたいでしょ。」
蒼は軽く笑った。
「まぁ金積んでくれたらできるんだけどさ。男も案外いいもんだよ。」
そういう表情はなぜか苦しげに見えた。
「蒼ちゃんは、寂しいの?」
「はぁ?」
「いや、たまに下向く時、妙に…」
蒼は黒木を睨んだ。
なぜか、蒼の頭を掴んで髪をくしゃくしゃしていた。
「まぁ、職業がら、さ。楽な仕事じゃないと思うよ。はーい、ゆるゆるー。」
「触るな!」
シャーっと鳴く梅ちゃんみたいだなと黒木は思った。
蒼は泣きたかった。
なぜ?
なぜ、こんなやつに余裕のない態度を取らなきゃならない。
どんなになってもナンバーワンで居続けたのに。
正直、蒼は黒木の小説を知っていた。
いや、全巻集めていた。
作者近影なんて待ち受けにしているほどだ。
まさかくると言われていた作家が、自分が好きなエロ小説の作者とは。

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