どあほの可愛い子

春川信子

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「えー、お母さん、具合がわるい?」
旦那はのんびりいった。
「そりゃ、しばらく優しくしなきゃなー。駅前のケーキあるよ。」
私がこいつを好きなのは、このタイミングの良さだと思う。
「お前顔疲れてる。」
優しく、私の頭を撫でた。
「かずー。」
「ひーよちゃーん。」
なぜかルパンのモノマネで旦那は返す。
大きな腹に顔を埋め、私のルパンをみる。
「おーよーしよーし。」 
「めっちゃすき。」
「あいよ!」
付き合って5年目で結婚した。
なのに未だにラブラブなのはありがたい。
「お母さん、呼んでくる。」
「今夜は寝かさないぜー。」
「はいはい。」
かずはとても優しい。
「お母さーん。」
かずが呼んだ。
「寝てる?」
そっと襖をあけお母さんが出てきた。
「あなたたちに謝らなきゃ。」
暗い顔だ。
あまり聞きたくない気がした。
「どうしたの?」
「で、で、で、」
真っ赤になっている。
「デートをしたの。」
「いいじゃんかデート。」
かずと私は吹き出した。
「誰としたの?」
かずはさすがに真剣な表情になった。
騙されたら堪らない。
「美大に通われている方。名前は、青木さん。もう会わないわ。」
「うーん、お母さん、私たちも会わせてください。」
「青木、なんて人?」
「裕二さんよ。」
かずはFacebookを調べ始めた。
にこにこと狸の様なおじいちゃんが笑っている。
「まさか、この人?」
「そうよ。」
かずは頭を抱え、私はなんとなく、お母さんを応援したくなった。
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