どあほの可愛い子

春川信子

文字の大きさ
上 下
2 / 4

女の子は誰でも

しおりを挟む
「日和、ごめん。私はさ、仮にもファッションに関わってるから、お母さんのきもち分かる。」
聡子は真っ直ぐ、日和を見ながら言った。
「女って好きなものは好きなのよ。いくつになっても。」
「ありがとう。」
日和も分からないわけでは無かった。
「お母さん悪いことしてるんじゃないもの。好きな服を着ているだけ。」
聡子はついに吹き出した。
「なんか愛おしい。」
「あの格好で歩かれてる私ら夫婦の身にもなってよ。」
そう言いながら日和も笑っていた。
「アパレル儲からないし、今あんなに洋服愛して着てくれる人は稀よ。」
「確かにお母さん、大事に着てるよ。」
日和は聡子にクローゼットを見せた。
お母さんが使っているものだ。
「わぁ。」
水色、ピンク、黄色。
まるで色とりどりのお花が咲いているようだ。
フリルが風で揺れる。
2人ともしばらく無言で見ていた。
「これ、やっぱり、素敵。」
「ねー、小さいころ、こんなの着たかった。」
お母さんが、帰ってきた。
音を立てずに、こそこそしている。
「お母さん、どうしたの?」
パッとハンカチを取り出し顔を覆う。
「私人の道を外れたわ。」
消え入るような声でそう言って、お母さんは去っていった。
「お母さん?」
「そっとしておきな。」
聡子は日和を止めた。
「色々あったんだわ。」
聡子は嫌な予感が当たらない事を祈った。
しおりを挟む

処理中です...